売上債権保証かけ放題?BtoB向けにユニークなサービスを提供するラクーンの事業

ラクーンホールディングス

今回は、BtoBのEコマースに関するサービスを提供するラクーンについてまとめます。とてもユニークな事業を展開しています。

まずは会社の歴史をざっくりと把握します。

1993年に創業し、狛江のアパートで個人事業主として創業。

1998年には過剰在庫品を取扱う企業間取引(BtoB)サイト「オンライン激安問屋」をインターネット上に開設します。

2002年には新商品及び定番品を取り扱う企業間取引(BtoB)サイト「スーパーデリバリー」を開設。

2006年に東証マザーズ上場。

2009年には「スーパーデリバリー」への一本化を図ります。

2011年には企業間で取引できるBtoB後払い決済サービス「Paid(ペイド)」を開設。

2016年には東証一部に上場するとともに、中小企業向けネット完結型の売掛保証サービス「URIHO(ウリホ)」を開設。


現在は「EC事業」「Paid事業」「売掛保証事業」の3つからラクーンの事業が構成されており、全体業績は次のように推移しています。

売上は16億円から23億円へとゆるやかな成長ですが、経常利益率が8.3%から17.56%へと大きく改善しています。

それでは各事業の内容を一つずつみていきましょう。

EC事業

ラクーンのEC事業は、自社で商品を販売するわけではなく、「EC事業者に対してサービスを提供する」モデルになっています。

具体的には次の3つを展開。

1. アパレル・雑貨の仕入れサービス「スーパーデリバリー」

ファッション・雑貨業界のメーカーと小売店の継続的な取引を仲介する卸・仕入れサイトです。新たな取引機会を提供し、なおかつ代金はスーパーデリバリーが回収してまとめて支払うため、未回収リスクのない取引を実現。

会社ホームページより)

輸出販売を行いたいメーカーをサポートする「SD export」では、海外への販売も可能となっています。 

スーパーデリバリーの流通額と売上の推移です。

直近では流通額が26億円弱に対して売上が4億円ほど。成長は徐々にゆるやかになっています。

売上の内訳です。

システム利用料売上が積み上がり、その他の収益もストックされています。

2. 国内縫製工場とアパレルメーカーをつなぐ「SDファクトリー」

日本国内の縫製工場と、日本製製品を生産したいメーカーをマッチングするサービス。

縫製工場は工場の稼働率を向上させられます。工場はメーカーとの取引代金を弊社BtoB後払い決済「Paid」を活用することで、未回収リスクのない取引も可能。

会社ホームページより)

3. クラウド受発注システム「COREC(コレック)」

業種を問わず、すべての企業間取引における注文のやり取りをWeb上で一元管理できるサービスです。

企業間取引の受発注ではIT化が進んでいない環境が多くあります。そこで、誰でも簡単にWeb上での受発注を行えるようにしています。

売る側(サプライヤー)は取引先ごとに注文書を作成し受注を取ることができ、買う側(バイヤー)も発注を一つにまとめ管理や共有がスムーズになるという利点があります。

会社ページより)


Paid事業

続いて2つ目は、Paid事業です。手間とリスクを取り除いた「ストレスフリーなBtoB後払い」というのが特徴です。

一般に、中小企業の掛売り決済には代金回収の手間とリスクが存在します。そのため、特に新しい取引先に対しては難しい場合も少なくありません。

そこでラクーンのPaid事業では、両者の間に入って与信管理から代金回収までを代行し、未入金が発生した際もPaidが100%代金を支払うというサービスを提供しています。

(会社ページより)

Paid事業の取扱高は次のように推移しています。

Paid事業は前述の「EC事業」でも一部利用されているため、かつては内部取引も大きくありましたが、最近は外部取引の方が大きくなっており、四半期で28億円に達しています。

売上もみてみます。

売上は四半期で1億円ちょっとと、規模としては小さいものの、外部取引の比率が大きくなっていることがわかります。

売上債権保証事業

3つ目の事業は、売上債権の保証事業です。これは、先ほどのPaid事業ともかぶる部分がありますが、Paid事業の中でも「売上債権の保証」だけを切り取って提供する事業、ということができます。

会社ページより)

具体的なサービスとしては「T&G売掛保証サービス」「URIHO」「事業用家賃保証」の3つを展開。

中でも「URIHO」は年商5億円以下の企業を対象とし、月額制で保証かけ放題というユニークなサービスを提供。


売上債権保証事業の保証残高の推移は次の通り。


保証残高は外部取引だけで97億円を超えています。

続いて売上です。


外部取引の売上高は四半期で1.2億円を超えたところです。


セグメントごとの業績

最後に、セグメントごとの業績をまとめてみておきます。

まずは売上です。


EC事業の成長はゆるやかですが、売掛債権保証やPaidなどの事業が成長しています。

続いて、利益です。

EC事業により安定して収益を稼ぎながら、Paid事業に投資してきたことがわかります。2016年ごろからPaid事業でも利益が出はじめています。



いかがでしたでしょうか。メイン 事業であるEC事業の成長は鈍化していますが、中小企業向けの売掛債権保証や決済仲介サービス(Paid事業)はポテンシャルのとても大きな事業だと思います。

BtoB向けで、かつユニークな事業であるだけに、成長に時間がかかりそうではありますが、今後がとても楽しみな会社の一つだと思います。