スマートフォンの実現を可能にしたテクノロジー企業、クアルコムとは

今回はアメリカのテクノロジー企業、クアルコムについて取り上げます。

クアルコムについては以前(現代ワイヤレス通信を支えるクアルコムの事業について調べる)取り上げたこともありましたが、今回は2000年頃の事業数値までさかのぼって見てみたいと思います。


クアルコムの歴史

まずは改めて、クアルコムという会社の歴史を整理します。

クアルコムは、1985年にサンディエゴにて7人の研究者たちによって創業されました。

同じ年に米国軍隊との契約を結ぶと、ワイヤレス通信技術「CDMA(Code Division Multiple Access)」に関するプロジェクトを開始。

KDDIの説明によるとCDMA(符号分割多元接続)とは、「無線方式の一つで、最大3つの基地局から最も状態の良い電波を選んで受信するため安定した通話品質を実現できる」という性質のものだそうです。

1989年にはCDMAを使った無線通信を通信業界の主要な50社に対してデモンストレーションし、歴史的な成功を収めます。

1991年にクアルコムはナスダックに上場。1993年にはCDMAが米国電気通信工業会において携帯電話の標準規格に認められます。

その後も3GやLTEなど、スマホに関わる技術の多くにクアルコムによる発明が関係しているようです。

クアルコムの発明が関係するテクノロジー

では、より具体的にクアルコムはどんな発明を行ってきたのでしょうか?

会社ホームページからめぼしいものをピックアップしてみます。



1. スマホカメラに関する高度な機能

手ブレ補正や機械学習による画像検索など

2. 動画ストリーミング

パケットロスを減らし、画質をスマートに圧縮するアルゴリズム

3. 位置情報サービス

位置情報サービスの信頼性と正確性を、複数の人工衛星からシグナルを受け取ることで向上

4. LTE

LTEはLong Term Evolutionの略で、いわゆる3Gと4Gの中間過渡期的な通信技術です。

3Gを「長期的進化・発展」させることで、スムーズに4Gに移行出来るようにする、いわば橋渡し (中継ぎ) 的な役割を期待されているとのこと。

3.9Gとも呼ばれますが、国際電気通信連合がLTEを4Gと呼んでも良いと認めたため、4Gとして呼ばれることもあるようです。

5. Wi-Fi

Wi-Fiに関する次世代技術の開発により、より高速な通信と長いバッテリー寿命を実現するとのこと。

6. モデム

LTEやWi-Fiなどによる通信を可能にするモデムを開発したおかげで、今まさにスマホで通信できるとのこと。

7. バッテリー寿命

モバイルバッテリーの電力使用を削減する技術を発明。スマホが自動で電力使用量を効率化するそうです。

8. 3D指紋認証

スマホをロックするための3D指紋認証技術を開発。

9. 音声認識

「Siri」をはじめとするモバイルの音声認識は彼らが開発したそうです。

そして、現在は次世代通信技術である「5G」の開発にも取り組んでいるとのこと。


ホームページが基本的にドヤり姿勢であることも特徴的で、それだけのインパクトを社会にもたらしているという自信を感じます。

収益の内訳

それでは、クアルコムの事業数値をさかのぼって見てみたいと思います。

まずは収益の内訳です。クアルコムの収益は次の3つに分類されます。

QCT(Qualcomm CDMA Technologies)

前述の「CDMA(符号分割多元接続)」に関する製品による収益。

QTL(Qualcomm Technology Licensing)

クアルコムが開発したテクノロジーのライセンス提供による収益。

QSI(Qualcomm Strategic Initiatives)

まだ確立されていない新しい技術開発に関する事業です。収益ゼロの年も多くあります。


また、2011年9月期まではQWI(QUALCOMM Wireless & Internet)という収益区分があり、無線インターネット通信に関する収益が含まれていました。 

それぞれの収益は次のようになっています。

QCTとQTLがそれぞれ160億ドル前後、70億ドル前後の収益をあげていますが、近年は成長が止まっています。

地域ごとの収益をみてみましょう。

2014年ごろまでの収益の伸びのうち、かなりの部分が中国への売上となっています。

ただ、中国への売上にはAppleの製造子会社に対する収益が含まれており、それに加えてOPPOやvivoなどの中華スマホメーカーへの売上がかなりの割合を占めているようです。

(2017年Form 10-Kより)

比率でもみてみましょう。

中国の比率が65%にまで上昇しています。韓国は16%ほど。

つまり、クアルコムの売上はApple、サムスン、そして中華スマホメーカーで8割くらいの割合を占めるという構造になっています。

営業利益率とコスト構造

続いて、クアルコムの営業利益率の推移です。

営業利益率は2004年9月期に40%超えという極めて高い水準になった後、徐々に減少し、10%台にまで低下しています。

これはどうしてでしょうか。コストの内訳を対売上比率でみてみます。

売上原価率が一時期30%前後だったのが、40%を超えるまで増大しています。

また、研究開発費は25%弱に達しており、もっとも低かった時期と比べると10%以上大きくなっています。

資産の内訳

今度はバランスシートから財政状態をチェックします。

まずは資産の内訳です。

総資産655億ドルに対し、現金同等物が350億ドルに達しています。現金同等物は前年と比べて大きく増加していますが、これはどうしてでしょうか。

キャッシュフロー計算書を見ると、「有価証券の売却による収入(Proceeds from sales and maturities of available-for-sale securities)」として417億ドル現金が増加したことが書かれています。

これにその他の要素が加わり、結果として投資キャッシュフローが184億ドルのプラスになっています。それによって現金同等物が大きく増加したようです。

続いて、負債と自己資本の内訳を見てみます。

利益剰余金(Retained earnings)が年々積み上がり、300億ドルを超えています。

また、長期借入金(Long-term debt)も2015年ごろから増え始め、194億ドルほどにまで増えています。


キャッシュフローの状況

最後に、クアルコムのキャッシュフローの状況です。


前述したように、「有価証券の現金化」によって2017年は投資キャッシュフローが大きくプラスになっています。

営業キャッシュフロー(赤いやつ)は概ね50億ドル前後の現金を稼ぎ出していることがわかります。



今回はスマートフォンを支える多くの技術を開発しているクアルコムについて調べました。

ハードコア・テクノロジー企業であるクアルコムについてまとめるのは難しい面もありますが、同社がスマートフォンの勃興と切っても切れない関係にあることはおわかりいただけたのではと思います。

今後もこの領域は変化が続いていくことと思いますので、これからも引き続き勉強していきたいと思います。