今回は、中国インターネット企業の「58.com」について調べてみます。
最近、中国ばかり調べているのは、「この中に今年のマルチバガーがあるかもしれない」と思うからです。(上がるとは言いませんが)
さて、58.comは中国最大の「ローカルな中小企業向けのオンラインマーケットプレイス」を提供する会社です。
そのトップページを見ると、民泊のCtoCを提供するAirbnbにかなり似ています。
業績推移を見てみましょう。
売上高は10.9億ドルにまで成長しています。
利益はまだ安定して出ていない58.comですが、中国のローカル向けマーケットプレイスというビジネスは興味を引くジャンルだと思います。
本エントリでは、58.comの事業内容をもう少し掘り下げた上で、決算数値についても一通りチェックしていきたいと思います。
冒頭で触れた通り、58.comの事業は「中国のローカルなスモールビジネスのためのマーケットプレイス」です。
ただ、これだけではアリババグループと言ってることがあまり変わりません。具体的にどんな事業を展開しているのでしょうか?
58.comのオンライン・マーケットプレイスでは、およそ380都市において、信頼できる最新のローカル情報を提供しています。
その中には住居、求職、中古品、自動車、ペット、チケット、イエローページなどの様々なローカル情報が含まれます。
あくまでも「ローカルな情報を、その地域の人同士で共有する」という地域掲示板的な機能がメインの提供価値のようです。
「北京」を選択すると、次のようなページが現れます。
北京にある不動産や求人、中古品、そのほかローカルなサービスに関する情報が掲載されています。
こちらは不動産のページです。月家賃2200元(3.8万円ほど)の部屋が掲載されています。安いですね。
さて、このように地域の情報を載せているのが58.comということですが、彼らはどうやってお金を稼いでいるのでしょうか。
売上の内訳を見てみます。
「メンバーシップ(Membership)」「マーケティング(Online marketing services)」の2つが大きいことがわかります。
それぞれ2016年には4.2億ドル、6.3億ドルの売上をあげています。
メンバーシップ収益は、「事業者の認証」「プラットフォームへの掲載」などを提供する最も基本的な売上。ローカルビジネスが58.comに情報掲載するための基本使用料です。
マーケティング収益は、58.comに参加する事業者が、プラットフォーム上に広告を掲載するサービスによる売上です。広告には「時間単価」「成果報酬」の2つがあります。
また、2015年からEコマースによる売上が2400万ドルほど発生しています。
これはローカルな不動産デベロッパーのための販促事業で、彼らの不動産物件に対して割引クーポンを発行し、プラットフォーム上に掲載。
ユーザーがその割引クーポンを利用して物件を購入すると、売上が58.com側に支払われるという仕組みのようです。
コスト構造も確認してみます。
販促費(Sales and marketing expenses)が売上に対して65%以上と、かなり大きな部分を占めています。
58.comは自社の事業の強みについて、次のように説明しています。
8つの競争優位性
・マーケットを牽引するポジショニング
・強いネットワーク効果
・信頼性のあるマーケットプレイス
・モバイルシフトへの適応
・広くて深いマーチャント(事業者)のネットワーク
・強いブランド認知
・巨大なマネタイズのポテンシャル
・強力な製品開発とエンジニアリング体制
なぜ消費者が58.comを選択するか
・ローカルレベルでの情報の深さ
・コンテンツカテゴリーの広さ
・最新で信頼できる情報
・使いやすさ
・離れられないモバイル体験
なぜマーチャントが58.comを利用するか
・広い消費者へのリーチ
・手に届く価格帯で、効果的なマーケティングチャネル
・消費者に対してターゲッティングできること
・強力なカスタマーサービス
・よく認知されたブランド
ソース:企業ページ
続いて、58.comの財政状態をみてみます。まずは資産の内訳です。
総資産36億ドルに対してのれん(Goodwill)が23億ドルとかなり巨額になっています。
続いて、資産の源泉である負債と自己資本です。
資産のほとんどが30億ドルもの「資本剰余金(Additional paid-in capital)」に由来していることがわかります。
事業はずっと赤字なので、4.4億ドルほどの累計損失(Accumulated deficit)があります。
借入金は合計で2.87億ドルほど。
続いてキャッシュフローです。
財務活動で調達したキャッシュ(Cash flows from financing activities)を投資に回してきたことがわかります。
事業で生み出したキャッシュフロー(Cash flows from operating activities)は2.7億ドルに達しています。
ここで、58.comの企業価値(EV: Enterprise Value)を計算してみます。
株式時価総額は111.52億ドル。
それに対して借入金が2.87億ドル、現金同等物(+ 定期預金など)が4.63億ドルあるので、ネット有利子負債は-1.76億ドル。
以上から、EV(企業価値)は109.76億ドルということになります。
2016年のフリーキャッシュフローは2.4億ドルなので、EV/FCF倍率は45.7倍。
一般的には決して安いとは言えない水準です。
今期3Qまでの業績も軽く見てみると、売上は11億ドル、営業利益は1.78億ドルに達しています。
純利益も3Qまでで1.4億ドルと、大きく業績が改善。
58.comは2017年の初めに買っていれば余裕でマルチバガー(2倍株)だったわけですが(たられば)、事業自体はとても魅力的です。
今後もどうなっていくか事業内容含めてチェックしていきたいと思います。
平日、毎朝届く無料のビジネスニュース。
Strainerのニュースレターで、ライバルに差をつけよう。