今回取り上げるには、リハビリ型デイサービス事業などを展開する「インターネットインフィニティ」です。
創業者の別宮圭一氏は1972年生まれ。
2001年にインターネットソフト開発を目的として設立したのがインターネットインフィニティです。
当初はソフトウェアの受託を手がけており、ある時に在宅介護会社のシステム開発を受託。
別宮氏は、そこで初めて介護の現場を目の当たりにしました。
当時の介護現場はIT化が非常に遅れており、働いている方々のITリテラシーが低いことに驚いたそうです。
その現場にビジネスチャンスを見出した別宮氏は介護士の資格を取り、2002年に訪問介護事業に着手します。
その後2017年にマザーズ市場に上場します。
業績推移を見ていきましょう。
2013/3期の売上高は14.5億円でしたが、2018/3期には32.8億円に増加しています。
2014年の経常利益率は-9.4%でしたが、2018/3期は8.5%と、3年で18ptほど経常利益率が改善しています。
ソフトウェアの受託から介護事業に転身したインターネットインフィニティの成長ドライバーは一体なんなのでしょうか。
インターネットインフィニティの事業内容は「ヘルスケアソリューション事業」「在宅サービス事業」の大きく2つに分かれます。
介護支援を行う在宅サービス事業の売上は2015年からほぼ横ばいで、2018年/3期の売上は13億円ほど。
一方、ヘルスケアソリューション事業の売上は右肩上がりで2018年3月期の売上は19.8億円に達しています。
2016年3月期までは在宅サービス事業の方が大きかったのが、ヘルスケアソリューション事業の成長が追い抜いていったことが分かります。
それではそれぞれの事業内容を見ていきましょう。
①ヘルスケアソリューション事業
ヘルスケアソリューション事業は大きく3つの事業で構成されます。
1つ目のレコードブック事業は、機能訓練を中心とした3時間のリハビリ型デイサービスで、2011年に事業が始まりました。
機能訓練とは事故によるケガや病気、加齢などにより運動機能が低下した方に対し、体の動きの向上を図る訓練を指します。
2つ目のwebソリューション事業では、ケアマネージャー向けの「ケアマネジメント・オンライン」というwebサイトを2005年から運営しています。
ケアマネージャーとは、介護を必要とする方が介護保険サービスを受けられるように、サービス計画書の作成やサービス事業者との調整を行う、介護保険のスペシャリストです。
ケアマネジメントオンラインでは、介護に関する最新情報や業務ツールをケアマネージャーに提供しています。
ヘルスケアソリューション事業では、「レコードブック」「ケアマネジメントオンライン」の二つ以外に、その他に福祉用具の販売なども行なっています。
②在宅サービス事業
在宅サービス事業では、高齢者の方々に在宅介護サービスを提供しています。
ケアマネージャーが利用者やその家族の要望を聞き、必要な介護サービスの種類・内容を織り込んだ介護支援計画(ケアプラン)を作成。
訪問介護や運営施設で、入浴・排せつ・食事等の介護など、日常生活上のお世話もしています。
2018/3期の事業所数は19ヶ所あります。
前述したように、インターネットインフィニティの成長を牽引しているのは「ヘルスケアソリューション事業」の方です。
具体的な事業は「レコードブック」「ケアマネジメントオンライン」の二つですが、それぞれどのくらいの売上があるのでしょうか?
インターネットインフィニティの売上32.8億円のうち、ヘルスケアソリューション事業の売上は19.8億円。
そのうち大きいのは「レコードブック」事業で、売上は14.5億円に達しています。
2年で売上が6.5億円ほど増えており、ヘルスケアの中でもレコードブックが成長ドライバーであることがわかります。
「ケアマネジメントオンライン」を展開するWebソリューション事業も3.3億円と、ここ2年で2倍近くに成長しています。
二つの事業はどのようにして売上を増やしているのでしょうか?
① レコードブック:FC店舗の増大
レコードブックは事故によるケガや病気、加齢などにより運動機能が低下した方に対して、体の動きの向上を図る訓練を提供する、リハビリ型デイサービスです。
「本格的な運動指導サービス」を「介護を感じさせない空間」で受けられることが特徴で、スポーツクラブ経験者による指導を受けたスタッフが対応します。
(レコードブック)
要するに「フィットネスジムのようなデイサービスセンター」というわけです。これは良さそう。
レコードブックの店舗数は、この4年で大きく増えています。
2018年3月期には100店舗に到達し、そのうちフランチャイズ店舗が73店舗。
前年のフランチャイズ店舗は28店舗でしたから、1年で2.6倍になったことになります。
(レコードブック)
レコードブックの法人向けフランチャイズは5年契約で、初期費用におよそ1000万円と、月額費用で約5.5万円かかります。
また、ロイヤリティとして売上の6%を納める必要があります。
レコードブックのフランチャイズ店舗を急激に増やしていることが、インターネットインフィニティの最大の増収要因になっていることが分かります。
② ケアマネジメント・オンライン
続いて、もう一つの成長要因であるWebソリューション事業。
マネジメントオンラインは、ケアマネージャー向けの業務支援ポータルサイトです。
ケアマネジメントオンラインには、2018/3期時点で約8.9万人のケアマネジャーが会員として登録しており、これは全体の約60%にあたります。
日本有数のケアマネージャーネットワークを活用し、企業向けにマーケティングの支援サービスを提供しています。
具体的には、ケアマネージャーを通じてアンケート等による定性・定量調査や要介護高齢者へのサンプリング等を行うことで、顧客企業のマーケティングリサーチやプロモーション支援を手がけています。
高齢化が進む日本社会において、高齢者世帯230万にリーチできるマーケティング調査プラットフォームというわけです。
あらためて、インターネットインフィニティのセグメント毎の業績を確認してみましょう。
今度はセグメント利益の比較です。
2017年3月期まで、在宅サービス事業の利益が大きく、彼らにとっての稼ぎがしだでした。
ヘルスケアソリューション事業は2015年3月期時点では赤字であり、そこから3年で大きく利益を伸ばしています。
インターネットインフィニティは売上成長とともに、利益率が大きく改善しています。
2014年3月期には経常利益率は-9.4%まで落ち込みましたが、2018年3月期は8.47%にまで改善。
どのような変化があったのか、今度はコスト構造の面からチェックしてみましょう。
2018/3期の売上原価率は67.8%、販管費率は24.8%。
この3年間で売上原価率が9.1ptも改善していることが分かります。
売上原価率のさらに内訳をチェックしてみましょう。
売上原価の内訳を見ると、労務費率が42%と最も高いものの、この4年間で11.7ptも改善しています。
その他のコストは横ばいもしくは増大していますから、労務費の比率が低下しているのが利益率の向上に貢献していることが分かります。
前述した通り、インターネットインフィニティの中で最も伸びているのが「レコードブック」事業におけるフランチャイズ店舗の拡大です。
フランチャイズの場合、自社で労働力を抱えるわけではありませんから、売上の拡大とともに労務費の比率が下がっています。
次にバランスシートも見ていきます。
総資産は17.3億円あります。
そのうち現預金は4億円、売掛金は5.5億円あります。
資産の原資となる負債・純資産の部を見てみると、有利子負債が4.9億円あります。
利益剰余金は2.6億円ほどです。
キャッシュフロー推移も見ていきましょう。
2015/3期はマイナスだった営業キャッシュフローが改善傾向にあり、2018/3期は3.2億円となっています。
フリーキャシュフロー推移も見ていきます。
2016年以降、フリーキャッシュフローもプラスとなっています。
企業価値(EV)を計算していきます。
2018年10月5日時点の時価総額は66.8億円です。
現預金4億円と、有利子負債4.9億円を加味すると企業価値(EV)は67.7億円となります。
FCFが1億円ですので、67.7年分の評価を得ていることになります。
最後に、インターネットインフィニティの今後の展望についてチェックしてみましょう。
大きな戦略として掲げているのは三つ。
「レコードブックの店舗拡大」「ターゲット層の拡大」「WEBソリューション事業の強化」が大きく3つの柱です。
①レコードブックの店舗拡大
成長戦略の一つ目は、リハビリ型デイサービス事業「レコードブック」の店舗拡大です。
首都圏や関西、名古屋など主要都市に集中して店舗を出していく「ドミナント戦略」を掲げています。
「名古屋鉄道」など地域の大手パートナー企業とも提携し、組織ぐるみでフランチャイズ店舗を拡大。
②ターゲット層の拡大
成長戦略の二つ目は、ターゲット層の拡大です。
具体的には、元気なシニア層である「アクティブシニア」をターゲットとして狙っています。
2020年には、60歳以上の人口が3500万人を超えると言われており、そのうち82.6%がアクティブシニア。
つまり、およそ3,000万人ものアクティブシニア層が生まれることになります。
インターネットインフィニティは、アクティブシニアが今後もアクティブでいられるよう「健康寿命の延伸」というニーズが拡大すると考えています。
経済産業省の「フィットネスクラブ会員数の年齢別構成比の推移」によると、フィットネスクラブ会員の60歳以上の会員比率は年々高まっており、2026年には30.3%になると言われています。
(スマートタイムズ)
高齢者のフィットネス需要を見越して2016年にリリースされたのが「スマートタイムズ」です。
レコードブックで培ったノウハウを活かし、エクササイズ15分とトレーニングを15分、計30分のフィットネスを提供しています。
③WEBソリューション事業の強化
三つ目は、「ケアマネジメントオンライン」の強化です。
ケアマネジメントに登録するケアマネージャーは8.7万人。
ケアマネージャーは1名で約26名の高齢者を担当しているため、インターネットインフィニティは約230万の高齢者世帯と繋がっていることになります。
このケアマネジメントを通じたネットワークを駆使したマーケティング案件を新規獲得し、事業拡大していきます。
このような成長戦略を掲げているインターネットインフィニティですが、2019年3月期には14%の増収を計画しています。
2019年の通期予測は37.5億円と、前年同期比の+14%を予測しています。
実際の進捗はどうなのか、四半期毎の業績推移を見てみます。
1Q17(2017年3月期1Q)から1Q18にかけては20.5%の増収となっていましたが、1Q19は1Q18と比べてわずか0.6%の増収にとどまっています。
全体として売上成長が鈍化しているようにも見えます。
営業損益にいたっては赤字に転落。
せっかく利益率が上がったのに、何が起こっているのでしょうか。
減益の要因を見ると、多岐にわたっています。
一番大きいのは、「直営店譲渡に伴うレコードブックの減収」。しかし、これは利益率としてはむしろ上昇要因になるはず。
一番の問題は、人件費や採用費などが増えているにも関わらず、売上があまり増えていないことです。
Webソリューション事業にいたっては売上が減少しています。
前年同四半期にはあった大型案件がなくなったことが、減収につながっているとのこと。
主力の「レコードブック」は引き続き増収ですが、7.6%の増加にとどまっています。
上の表にはありませんが、在宅サービスの売上も1.8%の減益。あまり調子が良くはなさそうです。
参考資料
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