家庭向け電力の売上が3倍増!国内最大級のバイオマス発電所を持つ再生エネルギー企業「イーレックス」

今回はバイオマス発電を手がける再生エネルギー企業「イーレックス」について取り上げます。

公式HP

創業者である現会長・渡邉博氏は1931年生まれの87歳。

1955年に日本銀行へ入行し香港事務所長などを務めます。

その後、信託銀行やリース会社での勤務を経て、1992年に日本短資株式会社の代表取締役社長に就任。

短資会社とは、金融機関同士の金融取引仲介を行なう会社のこと。ビルブローカーとも呼ばれる)

渡邉氏は事業多角化に向けて、1999年にイーレックスの前身となる「日短エナジー」を設立しました。


2000年の電力自由化を受けて電力販売を開始。

まずは九州で、続いて関東、東北へと販売エリアを拡大していきます。

2013年にバイオマス発電所「土佐発電所」を建設し、再生エネルギー発電をスタート。

2014年にマザーズへ上場し、翌年に東証一部へ市場変更しました。

2016年には 国内最大級のバイオマス発電所「佐伯発電所」が稼働開始。

北陸地区での電力小売を2018年6月に開始し、電力販売エリアの日本全国カバーを果たしています。


業績推移を見てみましょう。

ここ数年で業績規模は大幅に拡大しています。

今四半期(2018年4月〜6月)の売上は125億円、18/3期の通期売上は469億円でした。

16/3期から売上成長率が急加速しており、18/3期は50.6%まで上昇しています。

18/3期の営業利益は48億円で、営業利益率は10.3%です。


発電から販売まで全プロセスをカバー

イーレックスが手がけるのは再生エネルギーの1つである「バイオマス発電」です。

一般的なバイオマス発電は燃料調達から、発電、販売というプロセスで構成されており、イーレックスはプロセス全体をカバーしています。

イーレックスの自社発電所は現在、高知県「土佐発電所」と大分県「佐伯発電所」の2基が稼働中。

土佐発電所は2013年6月から、佐伯発電所は2016年11月から稼働を開始し、出力能力は合計で70MWとなっています。

1世帯の一日あたり平均消費量はおよそ8.3kWhなので、イーレックスは20万世帯以上をまかなうだけの出力能力を備えている計算になります。

参考:鳥取県の全世帯数が約23.6万世帯

イーレックスのバイオマス発電では、燃料を燃やして発生した蒸気のパワーでタービンを回して発電します。

仕組み自体は火力発電と同じですが、異なるのは燃料の部分。

イーレックス バイオマス発電

彼らはPKS(Palm Kernel Shell)と呼ばれるパームの殻を使用しています。

PKSは化粧品などの原料となるパーム油搾取後のゴミを再利用したもので、化石燃料と比較して大気へのCO2増加インパクトを減らすことができます。

どういうことかというと、化石燃料の場合は地面からわざわざ掘り起こした「燃料」を燃やすため、大気中のCO2は増加してしまいます。

バイオマスの場合は、もとから地表に存在する物質を燃やすため、化石燃料に比べれば大気へのCO2増加影響は少ないというわけです。


さて、イーレックスは電力需要に応じて、自社発電以外に2つの方法で電力を調達しています。

自社発電所の次に大きな調達源となっているのは「他事業者からの買取」です。

石油会社やメーカーなどは自社工場などで発電設備を備えているケースが多く、イーレックスは必要以上に発電された余剰電力の買い取りを行なっています。


自社発電と他社の余剰電力でも電力需要に追いつかない場合は、卸売市場から電力を購入します。

(『JEPX』)

電力取引は日本卸電力取引所(JEPX)を介して行なわれます。

JEPXは2003年に設立された日本で唯一の卸売電力取引所で、主要市場として一日前市場(スポット市場)、その後の調整市場として当日市場(時間前市場)を開設しています。

一日前市場(スポット市場)とは「翌日に受渡する電気の取引」を行う市場のことで、一日を30分単位に区切った48商品の取引を行います。

不測の発電不調や需要急増などの理由で緊急調達が必要となった場合には当日市場(時間前市場)を利用します。


家庭向け電力の売上が前年から3倍以上増加

イーレックスが調達した電力の販売先は「卸売」と「小売」の2つに分かれます。

「卸売」は電力会社間取引のことで、イーレックスはJEPXに対して電力を販売します。

官公庁や一般家庭などに対する「小売」の販売戦略として、イーレックスは2010年から販売パートナーシップ制度を導入しました。

販売代理店網は全国各地1,300件以上に広がっています。

加えて、2016年からはLPガス会社との販売提携を開始。

健康器具メーカー「タニタ」やISP事業を行なう「ニフティ」、工具通販「モノタロウ」といった様々な業界の企業ともアライアンスパートナーシップを結んでいます。


小売販売というと家庭向けのイメージが強いですが、電力の小売販売は需要規模に応じて「特別高圧」「高圧」「低圧」の3種類に分かれています。

(イーレックス 電力自由化

契約電力が2,000kWを超える高層ビルなどは「特別高圧」に指定されます。

「高圧」は契約電力50kW以上2,000kW未満の電力供給で、工場やスーパーなどの大型施設が対象となります。

一般家庭への電力供給は「低圧」となります。 

「低圧」の電力販売が自由化されたのは2016年4月なので、イーレックスが家庭向けに電力販売を開始したのは意外と最近です。


種類別売上高を確認してみましょう。

売上が最も大きいのは高圧以上の小売で、290.9億円となっています。

低圧小売は118.5億円と前年から3倍以上増加しており、売上全体の約30%を占めています。

卸売が60.1億円まで増加した要因の1つは佐伯発電所の稼働開始です。


コスト構造と財政状態

イーレックスのコスト構造をチェックしてみましょう。

18/3期の売上原価率は80.0%で、電力完全自由化以前(〜16/3期)と比較して低下傾向にあります。

イーレックスは2014年から販売パートナーシップ制度を導入しましたが、販管費率は9.8%程度とそれほど増加していません。

なお、販管費のうち代理店報酬が占める割合は直近4年間で16.2%から24.0%まで上昇しています。


バランスシートも確認していきましょう。

総資産622.1億円のうち、現預金は118.4億円。

有形固定資産は資産全体の50%以上を占めています。

調達原資である負債・純資産を確認してみると、借入金が267.9億円で最も大きくなっています。

利益剰余金は86.6億円まで積み上がっています。


キャッシュフローも見ていきます。

18/3期は営業キャッシュフローが大幅に増加し、41.8億円となっています。

佐伯発電所の稼働開始によって減価償却費が増加したことなどが主な要因となっています。

借入による資金調達を継続に行なっており、財務キャッシュフローはプラスで推移しています。

フリーキャッシュフローもプラスに転じ、18/3期は22.6億円を稼ぎ出しています。


株価の推移を見てみましょう。

206年4月の電力完全自由化後に株価は上昇し、現在の時価総額は504.1億円となっています。

現金118.4億円と借入金267.9億円を考慮すると、実質的な企業価値(EV)は653.6億円。

年間のフリーキャッシュフロー22.6億円に対して28.9年分の評価を受けています。


バイオマスエネルギー市場規模は9,864億円に拡大

イーレックスは「日本を代表する再生エネルギーのリーディングカンパニー」となることを目指し、中期経営計画を発表しました。

決算説明資料

具体的な売上目標として、3年後に現在の2.5倍となる売上高1186.7億円を掲げています。

目標達成のために必要な年平均成長率(CAGR)は36%ほど。

イーレックスが引き続き高い成長を見込んでいるのは、再生可能エネルギーの市場規模が拡大を続けているから。

現在、日本における再生可能エネルギー発電の比率は8%程度。

これが2030年ごろには22〜24%まで高まると予測されています。

矢野経済研究所

矢野経済研究所の調査によると、バイオマスエネルギーの市場規模は現在の3,000億円から、2030年には3倍以上となる9,864億円まで拡大する見込みです。


イーレックスは成長の柱として自社のバイオマス発電所を据えており、新たに2基を建設中です。

さらに2基の増設を計画中で、2023年度は合計6基体制、出力能力は現在から5倍の350MWとなる予定です。

今後は中長期的な成長が見込める低圧小売に注力し、さらなる売上成長を目指します。

イーレックスは低圧小売の販売強化に向けて、今後も販売パートナー開拓に注力。

引越し時などに抱き合わせ販売が可能な「LPガス/石油事業者」は80社まで拡大する予定です。

また、不動産やドラッグストアなどとのアライアンスを模索しており、様々な業界にまたがった幅広い販売チャネルを構築する狙いがあるようです。


イーレックスが再生エネルギー市場のけん引役となれるか、今後の動向が非常に楽しみです。


・参考

日本卸電力取引所(JEPX)取引ガイド