18歳からクッションを研究!元祖「人をダメにするソファ」をアメリカで販売する「Lovesac」が新規上場

The Lovesac Company

2018年6月25日、アメリカで家具を販売する「Lovesac」がナスダックに新規上場しました。

Lovesacのティッカーシンボルは「LOVE」。もっとも美しいティッカーかもしれません。


1995年頃、世の中にあるクッションの大半は、袋の中に豆を詰めたものでした。

創業者のショーン・ネルソン(Shawn Nelson)はそのクッションの使い心地に不満を覚え、18歳の頃から実家の地下室でクッションの研究を始めます。

そして3年後の1998年にLovesacを設立。

ネルソン氏はユタ大学の授業で隣の席に座っていたデイヴ・アンダーウッド(Dave Underwood)をLovesacに誘い、最初のビジネスパートナーとします。

2001年、Lovesacは10代を対象とした衣料小売業者から1万2000点ものクッションを受注することに成功。

そして翌2002年にはミルウォーキーにショールームをオープンします。

2005年、シリコンバレーの起業家たちの間でLovesacのクッションが大流行。

さらに同年、ShawnはFox TVのリアリティショー「The Rebel Billionaire」で優勝。

The Rebel Billionaire

審査員であるヴァージン・グループの会長リチャード・ブランソンから100万ドルを獲得します。

2008年にはLovesacのクッションがアメリカの映画館で導入され始めました。

そして2018年6月25日にナスダックに新規上場。

Lovesacは現在、アメリカ国内で72ものショールームを展開しています。

それではLovesacの売上を見てみましょう。

2016年1月期の売上は7,415万ドル(85億円)ほどだったのに対し、2018年1月期の売上は1.01億ドル(145億円)ほどまで拡大。

今期は上半期時点で売上56%成長と、成長が加速していることがわかります。

続いて営業利益です。

一方で営業損益はマイナスで、2019年1月期の上半期にはマイナス幅が拡大しています。

売上に対して20%ほどの営業損失を出していることになります。


ネルソン氏がクッションを作り始めてからすでに20年が経過しており、そういう意味では「老舗」とも言えるLovesac。

創業20年にして売上成長を加速させている家具メーカー「Lovesac」とは一体どのような会社なのか、調べてみたいと思います。


最大4人を収容できるクッション

Lovesacが展開する製品は「サクショナルズ」「サック」「その他」の大きく三つのカテゴリーからなります。


①サクショナルズ

一つ目は、主力製品であるサクショナルズです。

サクショナルズは、部品を組み合わせることでいかようにも変形することができるソファーです。

サクショナルズの部品は、大きく「シート(Seat)」と「サイド(Side)」の二つから成り立っています。

これらの組み合わせ次第でいろんな形に変えることができるというわけです。

Sactionals

パズルみたいですね。

このソファーは洗濯可能となっており、飲み物をこぼしても心配ないとのこと。

基本的な利用ケースに備えたセット販売をベースとしており、価格は1,600ドル(18万円)から5,656ドル(64万円)。

けっこうお高いですがそれもそのはずで、サクショナルズのターゲット層は年収10万ドル以上の(比較的)若い年齢層です。

年齢にして24歳から45歳までをターゲットにしているとのこと


②サック

二つ目の看板製品は「サック」です。

サックは巨大なクッションで、どのような形にも変形することができ、「世界一快適なクッション」を標榜しています。

Sacs

日本でも「人をダメにするソファ」が色々なメーカーから出ていますが、その元祖とも言えるのがLovesacのサックです。

大きなサックは最大4人を収容することができ、こちらも洗濯することができます。

価格は520ドル(6万円)から1,040ドル(11万円)ほど。

サックは元のボリュームの8分の1のサイズにまで縮小することが可能となっており、収納スペースの節約にも繋がります。 


その他(アクセサリーなど)

Lovesacはソファーに関連したアクセサリーの販売も行なっています。


その他の製品としては、ソファーの脇に設置するドリンクホルダーなどがあります。


製品別の売上をみてみましょう。

主力製品であるサクショナルズの売上は7,256万ドル(83億円)ほどあり、全体の売上の71%ほどを占めています。

サックの売上は2,685万ドル(30億円)ほどあり、全体の26%ほど。


顧客単価は1,236ドル(14万円)ほど。

2018年1月期の売上がちょうど1億ドルくらいなので、ざっくり年間で8万人くらいが購入していることになります。


ショールームは屈指の収益性

Lovesacが取り扱っている「製品」について把握できたところで、今度は「販売方法」についてチェックしてみましょう。

彼らは、「ショールーム」「インターネット」「その他」という三つの販売チャネルを持っています。


① ショールーム

一つ目は、リアル店舗で実際に商品を見ることができる「ショールーム」です。

Lovesacはアメリカ国内29州にショールームを展開しており、2019年2Qまでに72店舗ほどに拡大しています。

2018年1月期には年間で6店舗を増やしていたのに対し、今期(2019年1月期)は上半期だけですでに6店舗を増やしています。

上場前後に店舗展開を加速しているようです。


Lovesacは、店舗面積あたりの売上が大きいことが特徴です。

1平方フィート(フット?)=900㎠あたりの売上は1,262ドル(14万円)。

コストコ・ホールセールなどの大手スーパーや、高級ブランド「コーチ」「マイケル・コース」よりも面積当たりの売上が大きいことが分かります。

(Appleすごい)


②インターネット

Lovesacにとって二つ目の販売チャネルは「インターネット」です。

サクショナルズやサックは分解・縮小することができるため、輸送することが簡単となっています。


その他(Shop-in-Shop)

その他の販売チャネルとしては、Shop-in-Shopがあげられます。

Shop-in-shopでは、コストコなどの大型ショッピングモールのスペースを借り、一時的にLovesacのイベントを開催しています。

コストコHP

shop-in-shopの展示スペースでは1日につき平均3,800ドルの売上(43万円)があるとのこと。


それでは販売チャネルごとの売上を見ていきましょう。

2018年、Lovesacはショールームの売上が7,784万ドル(89億円)ほどあり、全体の売上の78%ほどとなっています。 

それに対し、インターネットでの売上は1,886万ドル(21億円)となっており、全体の売上の19%ほどを占めています。


コスト構造と財政状態

成長を続けているLovesacのコスト構造がどのようになっているか売上に対する内訳を見てみましょう。

売上原価率はわずかですが年々減少傾向にあり、2018年は43%にまで下がっています。

販促費率も減少傾向にあるものの、61%とかなり高いですね。

商品のブランド力によって粗利率は57%と非常に高いものの、積極的な広告戦略によって赤字になっているのではないかと思われます。(内訳は非公開)


続いてLovesacの財政状態についてバランスシートからチェックしていきましょう。

総資産9,508万ドル(108億円)のうち、現預金は4,821万ドル(55億円)ほどとなっています。 

負債・純資産を見てみると買掛金が1,529万ドル(17億円)ほどあります。

キャッシュフローも見てみましょう。


Lovesacはまだ赤字企業ですから、営業キャッシュフローはまだマイナスです。

しかし、2016年1月の営業キャッシュフローがマイナス887万ドル(10億円)だったのに対し、2018年1月にはマイナス274万ドル(3億円)まで改善しています。

足りないキャッシュは財務キャッシュフローとして市場から調達しています。


時価総額は3億1,287万ドルということで、アメリカの上場企業としては小規模な会社です。

 Lovesacの2018年の売上が1.01億ドル(114億円)ほどなので、企業価値は売上の約3倍ほどです。


市場規模が1275億ドルに拡大

まだまだ赤字なので、市場からの評価が低いのは仕方がありません。

今後の成長についてどのような展望が描けるでしょうか?


最後にLovesacの決算資料説明書から今後の展望について見てみましょう。

まず、家具市場の動向について。

アメリカにおける家具の市場規模1031億ドルのうち、カウチ(ソファー)を含めた椅子製品は30%を占め、金額にして309億ドル。

Lovesacの売上は1億ドルほどですから、市場全体からみれば豆粒ほどにすぎません。

アメリカの家具市場は2021年まで年平均で3.4%ずつ伸びていくことが予想され、中でもオンライン販売市場は2017年の360億ドルから2021年の624億ドルに伸びると言われています。


オンライン販売を伸ばしてきているLovesacにとって、市場環境は決して悪くありません。

その中でLovesacは、「製品のユニークさ」と「技術志向」という二つの軸によって自社の強みを定義しています。

カテゴリー的には「Tesla(電気自動車)」や「Uber(配車サービス)」「airbnb(民泊)」などと同一だそうです。


具体的には、「見る」「触る」「買う」という三つのステップを軸にした販売戦略を展開しています。

ソーシャルメディアやブランド広告でのマーケティングと、ショールームなどでのリアルな体験を経てから購入するという形。

ショールームが強いのは前述した通り。

マーケティング(=見る)の中でも重視しているのが、デジタルマーケティングへの投資です。

Facebook広告やインスタグラムなどのソーシャル広告に投資して、徐々に粗利益を高めていくという戦略を掲げています。

楽天のアフィリエイトネットワークの名前もあります。

実際に、物販で粗利率が57%というのはかなり高いですね。

2019年1月期1Qにおける実績では、Facebookのライク数は前年から66%の増加。

Instagramのフォロワー数は152%の増加となっています。

Youtubeとも相性が良さそうです。


「人をダメにするソファ」もそうですが、Lovesacのユニークな製品はソーシャルネットワークで拡散しやすいことが大きな強みとなっています。


・参考

SEC Filing Details:S−1

Lovesac HP:About us

Lovesac決算説明資料

Entrepreneur Asia PACIFIC

Deseret News

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