ガイアックス卒業生が創業!サブスク移行を進めるデジタル素材マーケットプレイス「ピクスタ」

ピクスタ

写真などデジタル素材のマーケットプレイスを提供する「ピクスタ」について見ていきたいと思います。

創業者である古俣大介氏は1976年生まれ、埼玉県出身。

起業家だった両親の姿を見ていたことや、 ソフトバンクの孫社長の本を読んで感銘を受けたことから起業を意識していました。

起業するならインターネットを活用したビジネスと決めており、大学生時代にコーヒー豆を販売するECサイトや古着を販売する事業を始めました。

1999年後半にはネットバブルが起こり、ネットエイジの西川さんらが中心となっていた「ビットバレー」というムーブメントが勢いづいていました。

ある時、ガイアックス社長の上田氏が父の知人の知り合いであると聞き、会ってみたい衝動にかられたそうです。

上田氏に直接会って話を聞いたところ、自分もムーブメントを今すぐに体験しないとやばいと思いその場で入社をお願いしました。

1ヶ月ぐらいですぐに独立するつもりでしたが、結果として1年ほどガイアックスで働いていました。


EC事業の立ち上げからピクスタ創業まで

その後、EC事業を立ち上げて途中から参加した兄と二人三脚で会社を運営し、2年で年商1億円規模まで成長させました。

しかし、もともとはインターネットを通じて新しい価値を提供したいと考えていたため、次第に人が作った製品を売るだけでは満足できなくなりました。

もっとインターネットを活かせるサービスはないかと考えていた時に、アマチュアカメラマンの人たちが写真を投稿する掲示板に出会います。

この時、「アマチュアの人でもこんなに素晴らしい作品を撮れるのか」と衝撃を受けたそうです。

当時はカメラブームで一眼レフが流行っていましたが、写真愛好家の作品を活かせるサイトはほとんどありませんでした。

ECの会社を兄に譲って、2005年に一人でオンボード(現在のピクスタ)を設立。

最初はガイアックス社に間借りしていました。

2006年に古俣氏がゴールデンウィーク中に必死で覚えたHTMLとCSSで作った写真投稿・販売サイト『PIXTA』をスタート。

2007年にはイラスト素材の販売を開始します。

この年に来年の干支モデルとしてハムスターを社員として2名採用しており、奔放な彼らが脱走するたびに社員総出で捜索したそうです。

2010年には動画素材の販売開始、2013年には英語版サイトの開設など順調に事業を拡大していきました。

2015年、マザーズ市場へと上場。

それでは、売上の推移を見てみましょう。

2017/12期の売上は22億円と堅調に増加しています。

営業利益は増加傾向にありましたが、2018/3期は1,700万と大幅に減少しています。

素材のマーケットプレイスで着々と売上を伸ばしているピクスタについてまとめていきたいと思います。


定額制開始から3年で売上が5.2億円まで急成長

ピクスタでは3つのサイトを運営しています。



①PIXTA

社名にもなっている写真・イラストなどの素材を販売しているマーケットプレイスです。

PIXTA

PIXTAでは写真やイラストの他に、動画、音楽といった素材も扱っています。

素材の掲載点数は3,000万点を超えており、クリエイターの数も25万人を超えています。

料金はサイズ(S〜XL)によって異なり、Web用のSサイズの写真だと1点540円で購入できます。

また、単品購入以外に定額プランもあります。

PIXTA 料金プラン

30日で10点までダウンロード可能なプランだと年間7万5,168円、1日25点までなら年間で35万6,400円です。

定額プランでは画像サイズによる指定はないので、大きいサイズを使う人ほどお得になります。


また、PIXTAは海外向けにも展開しており、台湾・韓国・タイ向けに外国語版のサイトをオープンしています。

台湾向けPIXTA

海外のPIXTAでは日本特集として、富士山・京都・和菓子・温泉など日本文化にちなんだ画像素材を紹介しています。

ピクスタのビジネスモデルは次のようになっています。

決算説明資料

まず、クリエイターが素材をPIXTAに投稿します。

実際に素材が売れた際に販売価格とピクスタが定める「コミッション率」に応じた「獲得クレジット」をクリエイターに付与します。

クリエイターは、保有する「獲得クレジット」が最低支払基準額を超えた時点で、好きな金額を自由なタイミングで換金できます。


②Snapmart

2016年にオプトインキュベートから事業譲渡されました。

Snapmartはスマホで撮影した写真を素材として売買できるマーケットプレイスです。

Snapmart

スマホで撮影された自然な写真はSNS映えする写真が多いため、ソーシャルメディアの広告などで使われています。

料金体系はPIXTAと同じで、1枚324円からの単品購入と定額プランがあります。

Snapmart 料金プラン

素材はスマホ写真のみなので、PIXTAと比べて金額はかなり安くなっています。


③fotowa

fotowaは撮影してほしい人とフォトグラファーをつなぐ出張撮影マッチングサービスで、2016年からスタートしています。

fotowa

七五三、お宮参り、卒入学などのライフイベントにおいて、インターネット上で好みのフォトグラファーと時間、場所を指定して予約し、おしゃれな家族の記念写真を撮影することができます。

fotowa

料金は1時間あたり平日で2万1,384円、土日祝だと2万5,704円です。

この料金には指名料や出張料金が含まれています。

撮影件数は堅調に増加しており、2017/12期の1年間で4,772件も撮影しています。

登録フォトグラファーは2017年末時点で500人を超えており、サービス地域は全国で22都府県に拡大しています。

4Qに大幅に増加した理由は七五三により需要が増加したためです。


さて、PIXTA全体の売上を単品と定額プラン別に見てみましょう。

単品購入の方が比率は高く、全体の75%を占めています。

一方で定額制販売の成長率は高く、2017/12期では前年同期から64%も増加しています。

定額制の売上を四半期ごとに見てみると、開始してから堅調に積み上がっていっていることがわかります。

利益減少は広告費の拡大が理由

コスト構造を見てみましょう。

原価率は41.8%まで減少していますが、販管費率が57.3%まで増加しています。

原価の大部分はクリエイターに支払われている素材仕入となっています。

広告費が2.6ptも増加していますが、要因はWebでのプロモーション活動を行なったためです。

また、従業員増加により給料手当も1.7pt増加しています。

続いて、バランスシートを見てみましょう。

2018年6月末時点において、総資産18.3億円のうち現預金8.6億円と半分ほどを占めています。

自社コンテンツを含む無形固定資産は2.9億円です。

資産の源泉となる負債・純資産を見てみると、資本金と資本剰余金の合計が6.1億円あります。

借入金2.3億円、前受金3.1億円、利益剰余金は0.7億円とあまり積み上がっていません。

2017/12期の営業キャッシュフローは8,467万円ですが、固定資産取得による支出は9,830万円なのでフリーキャッシュフローはマイナスです。

株価は上場していから減少していましたが、2018年から増加して上場時の水準まで戻っています。

現在の時価総額は40.8億円、現預金と借入金を考慮した企業価値(EV)は35億円。

企業価値は営業キャッシュフローの約41年分です。


将来的には水平展開で写真以外にも才能とニーズを結びつける

ピクスタの長期計画を見てみましょう。

決算説明資料

今後20年間で飛躍的な成長を目標としており、内容を見てみると素材ジャンルの幅を広げる、地域を海外に広げるといった領域の拡大を行なっていきます。

PIXTAでは写真に関して才能とニーズをうまく結びつけるプラットフォームを提供していました。

決算説明資料

今後は写真に限らずマンガやアートなど様々な才能とニーズ結びつけるプラットフォームの多数展開を目指しています。

さすがに、ちょっと話が大き過ぎるので2018年の予測を見てみましょう。

決算説明資料

2018年の売上予想は16%増加の25.9億円です。

売上の内訳を見てみると、定額制の売上が7.6億円と46%の増加を目指しています。

上半期時点での進捗率を見てみましょう。

決算説明資料

売上は12億円で進捗率46.4%と順調な折り返しを迎えています。

また、定額制の売上は3.6億円で前年同期から63.6%と急成長を維持しています。

定額制の進捗率47.6%なので予想通りに定額制へのシフトが進んでいることがわかります。


・参考資料

情熱社長 ピクスタ株式会社 代表取締役 古俣大介

ガイアックスを巣立ったメンバー間に “共通言語”が存在している〜ピクスタ株式会社 古俣大介氏インタビュー〜