日本の証券取引所はどのように発展したのか?1878年に発祥、紆余曲折の末に2013年に設立された「日本取引所グループ」

今回は「日本取引所グループ」についてまとめてみたいと思います。


Stockclipでは上場企業を多く扱っていますが、彼らを上場させる主体となっているのが日本取引所グループです。

子会社として東京証券取引所や大阪取引所、日本取引所自主規制法人、日本証券クリアリング機構などを抱えています。

全体業績の推移を見てみると、営業収益は1100億円前後、経常利益は600億円前後という水準になっています。さすがの高収益ですね。

今回の記事では、日本取引所グループの歴史をさかのぼってまとめた上で、同社の直近の決算数値について紐解いてみたいと思います。



日本取引所グループの歴史

1878年〜:「東株」としての始まり

日本の証券取引所は、1878年に「東京株式取引所(東株)」が創立したのが始まりです。

その際には渋沢栄一(日本資本主義の父)や益田孝(日経新聞の祖)など、三井組を中心とした財界人が発起人となり、大蔵卿の大隈重信から免許を受けて設立。当時の取引の中心は東株自身の株式でした。

取引の方法も、取引所と株式仲買店との注文連絡に着物姿の小僧さんが走って行うという形式でした。

立会時間も、長い縄に火をつけて開始され、その火が消えたときが相場の終決とされていました(「火縄相場」)。

1894年、日清戦争により株式相場は暴落しますが、戦勝による高揚などが原因で株式投機熱が高まります。

1897年には全国の取引所数が137ヶ所まで急増しますが、実際の需給がなく差金決済だけを目的とした投機的取引が増えたため、その後59ヶ所まで減らされることになりました。

終戦後:「東証」への移行

1943年、戦時統制下で全国の11あった株式取引所が統合され、日本証券取引所としますが、戦局の悪化により1945年には停止。終戦後の1947年には解散。

財閥解体により凍結された大量の株式が一般に再配分され、株式所有の大衆化が急速に進展しました。証券知識の普及のため、全国的な証券民主化運動が行われたそうです。

そして1949年、「東京証券取引所」が設立され、取引が再開。

1961年には市場二部が開設されるも、経済不況や投資信託の不振から、戦後最大の証券不況となります。1968年に証券会社は免許制となります。

1985年に新立会場がオープンすると、それまで人手だけで行われていた発注や付け合わせなどの業務にコンピュータを導入。一定以下の小口注文はオンラインによる発注が可能となり、その後の証券事務のシステム化が加速します。

1999年には新興市場「マザーズ」を開設。


大阪証券取引所との統合

現在の法人「日本取引所グループ」が設立されたのは2013年と、かなり最近のことで、その時に大阪証券取引所を東証に統合しています。

しかし、大阪取引所の起源はさらに古く、江戸時代の承應・寛文年間(1652~1673年)の米穀取引にさかのぼります。

当時の大阪は経済の中心であり、全国の諸藩は大阪に蔵屋敷をもち、年貢米を送って商人に売っていました。

その中で有力だった「淀屋」が盛んに売買を行ったことで、次第に他の商人たちも集まり市場を形成。

市場は1697年に堂島にうつされ、1730年に幕府から「堂島米会所」として公許されます。

当時は帳簿上の差金授受によった先物取引が主で、世界初の組織化された先物取引所でもあったそうです。


大阪証券取引所自体は1949年、東証とともに設立されています。

その時、日本証券業協会において「店頭売買承認銘柄制度」も創設されており、それが後のジャスダックとなります。

ジャスダックは2008年に大阪証券取引所によるTOBによって子会社化され、そして2013年に丸ごと統合されたという経緯です。

冒頭の業績推移のグラフをもう一度見てみましょう。

2013/3期以降、急速に業績が拡大しているように見えますが、これは「日本取引所グループ」への合併存続会社が「大阪証券取引所」であるためです。

合併により、日本最大の市場である東証の業績がプラスされたことで、事業規模が5倍になったように見えています。

日本取引所グループの事業内容

歴史の部分が長くなりましたが、ここで日本取引所グループの事業内容についてまとめてみましょう。

メイン事業は市場一部、市場二部、マザーズ、JASDAQの運営です。

これらの市場における時価総額合計は世界で3番目に大きく、アジアでは最大です。

上場会社の資金調達額をみると、ここ2年は1兆円前後。2014/3期と比べると大きく減少しています。

続いて、営業収益の内訳を見てみます。

日本取引所グループの収益は「取引関連」「生産関連」「上場関連」「情報関連」の大きく4つがあり、それぞれ2017/3期には457億円、214億円、129億円、181億円の収益をあげています。

取引関連収益

取引関連収益は、現物の売買やデリバティブの取引高に応じた「取引料」、参加者の取引資格に応じた「基本料」、注文件数に応じた「アクセス料」、売買システム施設の利用料などがあります。

2017/3期をみると、現物取引の取引料が年間261億円の収益をあげています。

デリバティブは103億円。

全体収益は1100億円ですから、日本取引所にとって取引手数料は全体収益の3分の1ほどに相当することになります。

年間の取引総額の内訳です。

全体の取引高は1000兆円前後あり、そのうち東証一部と二部だけで630兆円とかなりの割合を占めています。

日経225mini先物も大きく、210兆円の取引が行われています。マザーズは30兆円。

取引収益を年間取引額で割ることで、テイクレートを算出してみました。

デリバティブの方が2倍ほど高いですが、どちらも0.01%以下となっています。かなり良心的(?)ですね。

取引関連以外の収益

続いて、取引関連収益以外の収益について整理してみます。

清算関連収益

まず清算関連収益についてですが、日本証券クリアリング機構が受け取る清算手数料が主なものになっています。

各証券取引所で個別に行われていた証券取引の清算を一元的に行なっており、清算関連業務だけで214億円もの収益をあげています。

清算とは、市場取引において、約定した取引について発生するポジションの管理・値洗い・最終決済・証拠金の管理などの業務。

実際の決済を売買の相手方と直接行うのは極めて非効率であるため、清算機関を相手とした関係に置き換え、決済履行を保証する機能を担っています。


続いて、上場関連収益です。

上場関連収益は、新株発行の際に受領する「新規・追加上場」および、時価総額に応じて受領する「年間上場料」があります。

それぞれ2017/3期には43億円、86億円ほどの収益となっています。


最後に情報関連収益ですが、その中には情報ベンダーなどへの相場情報の提供や、指数ビジネスに関する収益や、コーポレートアクション情報などの提供に関する収益が含まれます。こちらも181億円と、小さくない収益をあげています。


取引所のバランスシートとは?

続いて、バランスシートの内訳を見てみます。取引所のバランスシートはどういう構成になっているのでしょうか?

まずは資産の内訳を見てみます。

総資産は41兆円もあり、そのうち「清算引受資産」が37.5兆円とほとんどを占めています。

「清算参加者預託金特定資産」も3.3兆円。それ以外の資産項目が小さく見えてしまいます。

有価証券報告書の説明をチェックしてみましょう。

「清算関連収益」のところでご説明したように、清算とは「市場取引において、参加者の取引の間に入り決済履行を保証する」もの。

市場参加者が行なった取引の債務を負担し、取引の当事者になることによって、それに関する資産や負債を計上、決済の履行を保証しています。

上の二つがデカすぎて埋もれるので、それ以外も見てみます。

現金同等物が755億円ほど、のれんが673億円ほどあります。

続いて、負債と純資産も見てみます。

こちらも「清算引受負債」が37.5兆円あります。当然ですが、「清算引受資産」と「清算引受負債」はピッタリちょうど同じ金額になります。

「清算参加者預託金特定資産」と「清算参加者預託金」も3.7兆円でピッタリ同じ金額です。

この二つがデカすぎて埋もれるので、それ以外の項目も見てみます。

利益剰余金が1886億円とかなり積み上がっています。

借入金は合計で524億円ほど。

それに対して、現金同等物が755億円あるので、ネット有利子負債は-231億円ほどとなります。

株式時価総額は1.12兆円。めちゃ高いですね。ネット有利子負債と合算すると、企業価値(EV)は1.1兆円ということになります。


キャッシュフローもみてみます。

営業キャッシュフローは毎年400億円から620億円ほど。

設備投資などの資本支出は毎年100億円ちょっとあるので、フリーキャッシュフローは200億円から500億円程度になっています。

過去3年の平均は347億円なので、日本取引所グループのEV(企業価値)はキャッシュフローの31.7倍ということになります。高いと思いましたが、意外と妥当な水準でした。

一般企業であれば市場からの評価が高すぎる気もしますが、日本取引所グループが潰れる可能性はほとんどありません。リスクが少ない分、市場からの評価が上がっていると言えます。

いかがでしたでしょうか。

暗号通貨取引所が話題となっている昨今なので、日本の証券取引所の歴史を作ってきた日本取引所グループについてまとめてみました。

昔に規制やら投機やら色々な起こった上で、現在の証券取引所があるということがお分りいただけたのではないでしょうか。