通期で初の黒字化を達成!ネット運送『ハコベル』の成長も加速する「ラクスル」2018年度決算

印刷通販「ラクスル」の2018年7月期決算が発表されました。

決算説明資料リンク

それではさっそく、通期の業績推移をチェックしていきます。

売上規模は大きく拡大し、今年度の売上は111.7億円となりました。

増収率は45.6%と、引き続き高い成長を維持しています。

これまでは営業損失が続いていましたが、今年度は通期で初めて黒字化を達成しました。


今回は急速な成長を続けているラクスルの最新決算数値を整理していきたいと思います。


『ハコベル』の売上成長率は200%超

最初にラクスルの事業をおさらいしておきましょう。

ラクスルは「印刷」と「運送」に関する2つのプラットフォームを提供しています。


印刷プラットフォーム『ラクスル』

『ラクスル』はWebから印刷物の発注ができる印刷ECサービスです。

『ラクスル』

チラシや名刺といった一般的な印刷物からTシャツのオリジナルプリントまで、さまざまな印刷物を取り扱っています。

ユーザーは作成済みデータを入稿するか、『ラクスル』が提供するオンラインデザイン機能を利用して印刷物を発注します。

『ラクスル』の特徴は、自社で印刷工場を持たない「ファブレス」であること。

ラクスルはネットで受け付けた注文の印刷と配送を全国の印刷会社に委託します。

安く印刷したいユーザーと工場の稼働率を上げたい印刷会社を結び付けるプラットフォームとしての役割を担っています。


またラクスルは、印刷プラットフォームを活用した集客支援サービスも提供しています。



印刷物を利用した集客戦略を支援するもので、チラシやダイレクトメール(DM)などのデザインから印刷、送付先リストへの配布実施までワンストップのサービスとなっています。

そのほか、印刷とは関係ないような気もしますがテレビCM制作も行なっています。

ラクスル テレビCM作成事例

ラクスルは自社のマーケティング活動で広告代理店を起用しておらず、広告戦略の企画から効果検証まですべて内製化しています。

これまで培ってきたマーケティングのノウハウを活かし、社内にいるマーケティングのプロたちが顧客のテレビCM制作をサポートするサービスとなっています。

テレビCM制作は発注から完成まで最短1か月で、1週間放映のプランは50万円、1か月放映の認知最大化プランは200万円〜350万円となっています。


運送プラットフォーム『ハコベル』

ラクスルは荷物を送りたい人と運送会社をつなぐ『ハコベル』も展開しています。

『ハコベル』

ユーザーはWebやモバイルアプリから荷物の配送を予約します。

『ハコベル』は荷物の個数や距離に応じ、対応可能なドライバーへ配送を委託します。

サービスモデルは『ラクスル』と同様で、『ハコベル』は荷物を送りたいユーザーとドライバーをマッチングするプラットフォームとなっています。

2015年12月にサービスを開始し、関東/関西/九州の一部に絞って荷物を預かっていましたが、2018年7月23日から集荷対象エリアを全47都道府県に拡大しました。


印刷EC、集客支援サービス、運送事業『ハコベル』それぞれの売上高を確認してみましょう。

売上が最も大きいのは印刷ECサービスで、86億円と売上全体の77%を占めています。

DM配布やテレビCM制作などの集客支援サービスは15億円ほどの売上。

『ハコベル』も着々と売上を伸ばしており、今年度は5億円を突破しました。

セグメントごとの売上成長率を比較してみると、『ハコベル』の成長率が200%を超えています。

集客支援サービスも62.8%という高い水準で、印刷EC以外のサービスが急速に成長していることがわかります。


『ラクスル』は法人ユーザー売上が80%

ここからは『ラクスル』と『ハコベル』の事業KPIをチェックしていきたいと思います。

まずは『ラクスル』の登録ユーザー数を見ていきましょう。

登録ユーザー数は累計で66.2万人に達しており、前年度末から46.1%の増加。

グラフを見てみると、個人ユーザーの比率が法人よりも高いようです。


ラクスルは「年間購入者数」、1ユーザーあたり「平均注文回数」、注文1回あたりの「平均注文単価」を発表しています。

年間購入者数は全体で36%増加しており、個人ユーザーの増加率が法人を上回っています。

一方、注文回数と単価については法人ユーザーがいずれも上昇。

法人ユーザーの単価上昇によって『ラクスル』全体の顧客単価は前年よりも上昇しています。


各指標をかけ合わせることで顧客別売上高を算出してみます。

法人ユーザーの年間売上は84.9億円となっており、前年から46.2%増収となっています。

印刷ECと集客支援を合わせた『ラクスル』全体の売上101億円に対し、法人ユーザーの売上が80%を占めています。

『ラクスル』の成長は法人ユーザーによって支えられていることがわかります。


続いて『ハコベル』の事業KPIについても確認していきます。

最新の登録ユーザー数は公表されていませんが、2018年1月末時点で1.2万人以上のユーザーを獲得しており、法人の利用企業数は1,500社を超えたとのこと。

四半期ごとの注文数も右肩上がりで、年間の累計注文件数は5万354件となっています。

4Q(5月〜7月)の注文単価は1万673円と、3Q(2月〜4月)から2.8%低下。

引越しなどの繁忙期が終わり、一般貨物の比率が減少したことが要因です。


広告宣伝費が大幅に改善

ラクスル全体のコスト構造をチェックしていきたいと思います。


売上原価率は75.3%となっており、少しずつ低下しています。

売上原価のほとんどは印刷会社に支払う「仕入代金」となっています。

ラクスルは提携する印刷会社と原材料を共同購買し、中小規模の印刷会社でも大手企業と同等の紙を仕入れることができるようにサポートしているとのことす。

参考

販管費率は大幅な改善が続いており、今年度は23.9%となりました。


販管費の内訳を確認してみましょう。

16/7期に24.4%だった広告宣伝費率は、18/7期に7.7%まで低下しています。

特に2018年4QはテレビCMを放映しなかったため、広告宣伝費が大きく減少しました。

そのほか、人件費は6.6%、決済手数料は1.9%、その他費用が7.6%となっています。


ラクスルは広告宣伝費率の大幅な改善によって黒字化を達成できたということがわかります。


営業キャッシュフローがプラスに

最後にラクスルのバランスシートを確認してみましょう。

総資産87.9億円に対し、キャッシュが63.7億円と資産全体の72%を占めています。

調達元を見てみると、株主資本が66.7億円で最も大きく、株式による資金調達が中心となっています。

2018年5月末の上場後に株主構成比が大幅に変動しており、VCの保有割合が大幅に低下。

海外も含めた機関投資家の保有割合は80.1%に上昇しています。


キャッシュフローもチェックしていきます。

今年度は営業キャッシュフローがプラスに転じています。

財務キャッシュフローは上場によって大幅にプラスとなりました。

フリーキャッシュフローもプラスとなり、9,554万円を稼ぎ出しています。


株価の推移を見てみましょう。

2018年5月末の上場から約20%上昇しており、現在の時価総額は771.6億円となっています。

キャッシュ63.7億円と借入金5.1億円を加味した企業価値(EV)はおよそ713億円。

年間売上高111.7億円に対して6.4年分という期待をかけられています。


ラクスルは2019/7期の業績予想について、あまり具体的な数値は掲げていません。

売上高は30.2%増加の145.5億円を見込んでいるものの、営業利益の水準については非開示となっています。

印刷ECは利益創出フェーズに入った一方で、集客支援サービスや『ハコベル』は立ち上がり期という位置付け。

事業規模拡大に向けて積極的にリソースを投下していくようです。


上場による資金調達に加えて黒字化も達成したラクスルがどのような一手を打ってくるのか、今後の動向が非常に楽しみです。