3年前の期限切れ材料問題から50%の増収!サラ・カサノバ氏のもと見事なV字回復を果たした「日本マクドナルド」

大手ハンバーガーチェーン「マクドナルド」を日本で展開する「日本マクドナルドホールディングス」の決算が好調です。

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早速、売上高の推移を確認してみましょう。

2013年から2015年にかけて売上は落ち込んでいましたが、見事にV字回復しています。

今四半期は659億円と、2Qにおいてここ5年で最も高くなっています。

前年同期からの変化率を計算してみましょう。

2015年2Qまでは減収が続いていましたが、2015年3Qから増加に転じました。

2016年からはおおむね10%以上の増収率を続けています。

営業利益についても同様で、2015年2Qには83億円の赤字でしたが、ここにいて44億円の利益を稼ぐまでに回復しています。

今回のエントリでは、マクドナルドがV時回復を実現した要因について整理してみたいと思います。


3年で店舗あたりの売上は1.5倍に

マクドナルドの売上は、ざっくりいうと「店舗数」「店舗あたりの売上」の掛け算によって決まります。

まずは、マクドナルドの店舗数の推移がどうなっているのか見てみましょう。

直営店とフランチャイズともに店舗数は減少し続けています。

1971年に創業し、国内3,000店近く日本中のいたるところに出店しているマクドナルドでは、これ以上店舗を増やす余地はほとんどないのかもしれません。

店舗数が増えていないとなると、残る要因は「店舗あたりの平均売上」の増大しかありません。

システムワイドセールス(直営店とFC店の合計売上)と店舗数から1店舗あたりの売上を計算してみましょう。

どうやら、これが直接的な要因のようです。

店舗あたりの売上は3年前には2,891万円まで落ち込みましたが、直近では4,355万円と3年で50%も増加しています。


リカバリープランの発表から業績回復までの道のり

当然といえば当然ですが、マクドナルド復活の要因は「店舗あたりの売上」が回復したことにあるようです。

そこで、売上減少から回復までの間にどんな施策を展開してきたのかをチェックしてみました。




当時の日本マクドナルドは敏腕社長として知られた原田泳幸氏のもと、震災以来の売上減から回復すべく奮闘していました。

原田氏の基本戦略は、「低価格メニューで客数を伸ばし、高価格メニューで収益化する」というものでしたが、そもそもの客数が落ち込んでいったことで業績は低迷します。

要因としては、「100円マックなどの低価格メニューを”バリューピックス”と名前を変更したことが、値上げの印象をもたらしてしまった」ことなどが挙げられています。

参考:マック“敏腕”原田元社長は、なぜ“退任”に追い込まれた?「業績不振はメディアのせい」


そんな中で、原田氏は退任し、カナダ人のサラ・カサノバ氏が2013年8月に「日本マクドナルド」のCEOに就任します。

(ホールディングスのCEOになったのは翌年3月)

カサノバ氏は2004年から2009年まで日本マクドナルドの執行役員も務めており、日本が初めてというわけではなかった様子。

日本ではなんと「えびフィレオ」「ビッグマック」などのヒット商品を生み出した人物だそうです。


しかし、2014年7月に消費期限切れ食材を使用していた問題が発生。

これは、中国の食品会社「上海福喜食品有限公司」が使用期限切れの鶏肉を混入して出荷したという問題で、その鶏肉を「チキンマックナゲット」に使用していたというもの。

参考:マクドナルド、期限切れの鶏肉混入の「チキンマックナゲット」販売中止へ

後に問題の鶏肉は輸入されていなかったという結論になるも、その後も売上減少は止まりません。

2015年の通期では300億円を超える赤字を計上。


そこで2015年4月にはリカバリープランを発表しました。

リカバリープランでは、「品質の見える化」や「不採算店舗の閉店」「店舗の内装リニューアル」などが含まれました。

中でも「デジタル施策の推進」は大きなポイントとして掲げられており、客の声をリアルタイムに集めるアンケートアプリ「KODO」を全国展開しました。

アンケートに答えると、コーヒーやソフトクリームなどの無料券がもらえます。

また、「モダンな店舗」へと改装することで、消費者の店に来たときのワクワク感を向上させるような施策も打ち出しています

確かに最近マクドナルドにいくと、以前と比べて「オシャレになったなー」と感じる方が多いのではないかと思います。

また、不採算店を131店舗も閉めるなど、戦略的退店も行いました。


この辺りから、日本マクドナルドの業績は回復に転じます。

母親たちによる生産現場の視察は、食品について厳しい目を持っているのは母親だ、との考えのもとでカサノバ氏直轄プロジェクトとして2015年7月に始動しました。

2016年2月には史上初「名前募集バーガー」を販売。

「なんかマクドナルド、迷走してんなー」と思っていた方も多いのではないでしょうか。


2017年6月末には東京都内でデリバリーサービス『UberEATS』を導入し、2018年3月には17時以降、プラス100円でパティが倍になる『夜マック』を開始しています。この辺りから記憶に新しいですね。

夜マック

他にも流行性の高い『Pokemon GO』とのコラボ、SNSでの拡散を狙った「マックなのか?マクドなのか?」イベントや「マックチョコポテト」の販売など数多くのマーケティングを仕掛けています。


マクドナルドではさらに利便性を高める仕掛けとして、「モバイルオーダー&ペイ」を一部の店舗で実験導入しています。

事前にアプリで注文と決済まで行なっておけば、店舗では待たずに商品を受け取れます。

オーダー&ペイ:海外

海外だと受け取り方はイートイン、持ち帰り、ドライブスルーの3種類を選ぶことができます。


このように、日本マクドナルドは品質の透明性アップとともに、さまざまなマーケティングキャンペーンを仕掛けてきました。

その結果、見事に客足を取り戻したというわけです。


企業価値はフリーキャッシュフローの約51年分と期待は高め

最後に、市場が日本マクドナルドの復活に対してどう見ているのかを軽くチェックしてみましょう。

その前に、同社の財政状態についてチェックしてみます。

利益剰余金が759億円と積み上がっていることがわかります。

また、マクドナルドは土地・店舗を多く保有しているため有形固定資産が半分ほどとなっています。

このあたりは本社と同じですね。

株価は2016年11月頃から上昇しており、その後は横ばいとなっています。

現在の時価総額は6,554億円なので、現預金や借入金を考慮すると企業価値は6,403億円

上半期のフリーキャッシュフローは63億円なので、年間だと126億円になります。

企業価値はフリーキャッシュフローの約51年分と、成長企業じゃないわりには市場からの期待はかなり高めです。


おまけ:米マクドナルドに株式を売られかけていた

米マクドナルドは子会社を通じて日本マクドナルドの株式を半分近く保有しています。

有価証券報告書

業績悪化を受けて、米マクドナルドは2016年1月に最大33%を売却する計画を発表しました。

しかし、業績が回復したことで株式売却の計画はいったん取りやめということになったようです。

参考:米マクドナルド、日本法人株の売却凍結 業績改善受け