Netflixはいつ動画ストリーミング企業に変わったのか

最近ハマっているのが「この企業の事業進捗を図るKPIを一つ選ぶとしたら何か」を考えることだ。Facebookなら月間アクティブユーザー数(MAU)になるだろうし、Alibabaであれば総取扱高(GMV)だと思う。一般的に。


大抵の場合、そういった指標は年次報告書で目立つ表にしてあるので、比較的見つけやすい。しかし、事業の変化にしたがってKPI自体が変わったり、呼び名が変わることもある。そういう場合は重複する数字を探すか、別の数字を拾うほかない。


Netflixの場合はなんだろうと考えると、事業のフェーズで分けて考える必要があることに気づいた。周知のようにNetflixはDVDの通信レンタル企業から世界的な動画配信企業に大きな変貌を遂げた。


Netflixの年次報告書(Form 10-K)をひもとくと、「streaming」の文字がはじめて現れたのは2008年12月期の報告書だった。

しかし、Netflixはそのタイミングで動画ストリーミング企業に変わったわけではない。その時はまだバリバリDVDを送るのがメインだったはず。


それでは、いつ動画ストリーミングがメインになったのだろう、と2009年2010年と報告書を読みすすめていくと、2010年12月期の年次報告書にこんな文章を見つけた。

青く選択した部分を簡単に訳すと、「2010年に我々はストリーミングの視聴者がDVDの視聴者数を上回るという重要なマイルストーンを通過した。これから先は、我々の主要な事業はストリーミングであり、DVDは追加機能となる。我々はエンタメ動画をインターネットで配信することはとても巨大で国際的な市場機会となること、そしてその市場に集中すること - 消費者が支払い、企業側はお金を払わない、テレビや映画のストリーミング課金 - により、素早く収益性高く成長を続けることができると信じている。」

2010年にNetflixは晴れて動画ストリーミング企業への進化を遂げ、公に宣言したのだと言える。


KPIの変化

事業の主要なKPIがどう変化したのかを見てみよう。

面白いことに、Netflixの主要KPIの項目名はだんだん変わってきている。

2002年:Number of subscribers at end of period

2003-2010年:Total subscribers at end of period

2011-2012年:Total consolidated unique subscribers at end of period

2013年:Total consolidated streaming members

2014年:Total global streaming members

2015-2016年:Global streaming memberships

実際に意味する数字は被っていることも多いが、特に「subscribers」から「streaming members」への言葉の変化が、事業の変化を表している。

こういった「項目名の変化」も無理やり詰め込んだのが以下のグラフだ。

「Total consolidated unique subscribers」と「Global streaming memberships」は微妙にズレている部分があるが、これが報告書の誤りなのか、実際にビジネス上違う数字だったのかは正直よくわからない。多分後者だろう。

しかし、2008年に動画ストリーミング機能を付与し、2010年にストリーミングがDVDによる視聴数を上回り、一気にそちら側へと舵を切った様子がこのグラフを見るとよくわかるのではないかと思う。


Netflixはいつからストリーミングを計画していたのか?

前述のように、Netflixの年次報告書に「streaming」の文字が出たのは2008年12月期の報告書以降である。

オンライン視聴機能自体は2007年1月に開始され、実際2007年12月期の報告書にはこうある。

「我々の中心戦略は、巨大なDVD購読ビジネスを育てることと、市場の拡大とともにインターネットでのコンテンツ配布にも参入することだ。我々はDVDが近い将来において、ブルーレイを含む高解像度の後継規格とともに、家庭でコンテンツを視聴する際の主要な媒体であり続けること、そして巨大なDVD購読ビジネスを育てることで、購読者たちがインターネットによるコンテンツ配布に移行する際にも良いポジションを持つことができると信じている。2007年1月、私たちはパソコンでインスタントに視聴できる機能を導入した。時間をかけて、このインスタント視聴機能の配布先を他のプラットフォームやパートナーたちに広げていくつもりだ。2008年1月、我々はLGエレクトロニクスとの開発協定を発表した。この協定はまだ最終決定には至っていないが、LGエレクトロニクスや他の電機メーカーと一緒に、購読者たちのテレビで直接インスタント視聴機能を利用できるような箱型デバイスか何かを開発すると予想している。」

なんなら、当時のコア事業だったDVDレンタル自体も、将来くるであろう動画ストリーミング事業の準備ですよ、という感を醸し出している。


それでは動画配信事業自体はいつから考えていたのだろうか

また年次報告書をさかのぼってみたところ、2003年12月期には「2004年の新しい取り組み」としてすでにこう言っていた。

「Second, we are working on developing solutions for downloading movies to consumers. Our core strategy has been and remains to grow a large DVD subscription business; however, as technology and infrastructure develop to allow effective and convenient delivery of movies over the Internet, we intend to offer our subscribers the choice under one subscription of receiving their movies on DVD or by downloading, whichever they prefer. Although 2004 will be early for downloading and we expect only modest consumer interest initially, we believe it will grow steadily over the next ten years.」


訳:「二つ目、我々は消費者たちが動画をダウンロードできるソリューションの開発に取り組んでいる。中心戦略はこれまで同様、巨大なDVD購読ビジネスを育てることだ。しかしながら、技術やインフラの発展により、インターネットを通じた便利で効率的な映画の配信が可能になるとき、私たちは購読者たちに、映画をDVDで受け取るか、ダウンロードするかを一つのサブスクリプションのもとで選択できるようにしたいと考えている。2004年はダウンロードにはまだ早いだろうし、はじめは消費者の興味も少しだけだろうが、次の10年で確実に成長すると信じている。」


2002年12月期の報告書にはさすがにインターネット配信に関する記載は見当たらなかった。代わりに、VHSからDVDへの移行と、ホテルなどでのVOD(Video on Demand)の注目が高まったことなどについて触れられていた。この辺りが「DVDの次は何か」という思考を巡らせるきっかけになったのかもしれない。