我らが「Twitter」の2018年2Q決算についてまとめたいと思います。
Twitter社は昨年3Qに営業黒字化を果たし、ツイッタラー達を歓喜の渦に巻き込みましたが、その後の進捗はどうなっているのでしょうか。
まず、SNSにおいて最重要指標の一つである「MAU(月間アクティブユーザー数)」の推移について見てみましょう。
アメリカ以外(International)のMAUは2億6,700万人で横ばいですが、アメリカ国内が6,800万人と、前の四半期から100万人ほど減少しています。
あまりよろしくないように見えますが、MAUが減少した大きな理由として「スパムアカウントの大量削除」があるとのこと。
CFOのNed Segal氏によれば、こうした理由によってTwitterのMAUは300万人以上押し下げられたとのこと。
もしそれが本当なら、実質的には今四半期には200万人ほど増加していることになります。
また、ソーシャルプラットフォームにおいてMAU以上に重要なDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)は前年同期比で11%も増加しています。
このことから、MAU自体はあまり増えていないものの、Twitterというプラットフォームにおけるユーザーのエンゲージメントは向上しているようです。
Twitterにおいて、DAUがMAUに占める比率は50%を大きく下まわるとのこと。
SNSの王者・Facebookではこの比率が66%にも達します。
Facebookまでの水準に達することは難しいと思われますが、DAU向上の余地はまだまだあると見て良さそう。
売上高についてはどうでしょうか。
全体の売上は7億1,054万ドルと、これまでと比較して悪い水準ではありません。
メインの広告売上は6億ドルと、ユーザー数の減少にもめげずに前の四半期から増加しています。
また、特筆すべきは「その他売上(Data Licensing & Other)」の増収です。
Twitter社の中では末端事業にすぎなかった(?)データのライセンスなどの売上が1億ドルを突破。
ここまでくると事業規模としてはかなりのものです。
売上増収率(前年同期比)を計算してみると、「その他」事業の売上は前年比で29%の増収。
ただ、広告売上も前年比23%と、成長率で見る限りは決して悪くありません。
Twitter社の増収に貢献しているのは、アメリカではなく海外での売上です。
アメリカ国内での売上は2015年Q4以降、横ばいもしくは減少傾向です。
その一方、海外売上は伸び続けているため、次の四半期には海外売上とアメリカでの売上が逆転しそうな勢い。
前年からの増加率を計算して見ると、海外売上は43.8%という非常に高い数字となっています。
利益についてはどうでしょうか?
まだまだ右肩上がりの増収とはいきませんが、なんとか7,962万ドルの営業黒字を稼いでいます。
営業利益率は2017年Q4の15%から4ポイントほど下がって11%に。
ただ、Twitter社の営業利益には、経営陣などへの株式報酬(Stock-based compensation)や減価償却費(Depreciation and Amortization)がふんだんに含まれています。
その数字を足し戻した事業利益(Adjusted EBITDA)の方が、Twitter社の状況をよく表しているといえます。
調整後EBITDAは2.6億ドルで、売上高の37%に相当する金額です。
また、グラフの黄色部分を見ればお分かりの通り、Twitter社は2016年以来、株式報酬の金額を削減してきたことが分かります。
ピーク時には1.7億ドルも支払っていたのが、直近では7947万ドルと、半分以下にまで抑えられています。
財政状態についても軽く確認しておきましょう。
総資産は89億ドル弱。
そのうち現金同等物と投資資産は合計で56.6億ドルと、資産の大部分を占めています。
そのうち、転換社債(Convertible notes)が25.6億ドルとかなり大きくなっており、利益剰余金は25億円のマイナスです(Accumulated deficit)。
フリーキャッシュフロー(事業で稼ぎ出す現金)は1億2,738万ドルと、右肩上がりとはいきませんが安定しています。
このままいけば2018年だけで5億ドル以上のキャッシュフローを稼ぐことはできそう。
市場は、Twitter社の決算をうけて20%もの暴落。
時価総額は264億ドルとなっており、年間フリーキャッシュフロー5億ドルの53年分といったところ。
今回の決算によって株価を大きく下げてしまった理由としておそらく最も大きいのは、CFOのNed Segal氏による次のような発言です。
「As we look ahead and we just did the math on MAU, it was clear that our health initiatives were going to lead MAU to be down in the mid-single digit millions from what we can tell today.」
ざっくり訳すと、「Twitterの健全性を高める取り組みによって、MAUは500万人ほど減少することとなる」という内容。
ただでさえMAUが伸び悩んでいるのに、今後はさらに減少するという見通しが発表されたことで、投資家達を失望させてしまったのかもしれません。
しかし、Twitter社の取り組みは極めて合理的なものです。
TwitterにはFacebookなど他のSNSと比べてスパムアカウントが多いことは明白です。
ソーシャル・ネットワークにおいて参加者の「質」は存続可能性を決める決定的な要素であり、コアユーザーの居心地をよくするためにスパムを削除するというのは正しい選択と言えます。
そして、一連の取り組みにより、TwitterのDAUが前年比フタ桁パーセントで増え続けているというのは特筆すべきことです。
それにより、Twitterの広告エンゲージメント(左上)は前年比で81%も改善し、エンゲージメントあたりのコストは32%も減少しています。
これはすなわちTwitter上の広告効率が向上しているということであり、このことの方がMAUの増大より何倍も価値があるのは間違いありません。
Twitter社は、健全化の取り組みの中で、「Smyte」という会社を2018年6月に買収しています。
(Smyte)
Smyteは2014年に設立されたスタートアップで、「trust and safety as a service.」をキャッチコピーとしていました。
創業メンバーはGoogleやInstagramのエンジニアたち。SNS上のスパム活動やハラスメントなどを抑制するためのツールを提供していました。
今回の発表通り、Twitter社のMAUの伸びはしばらく鈍化し続けることになったとしても、DAUが増加を続ける限り、広告主から見た広告媒体としての魅力は向上するはず。
そして、プラットフォームの健全化によってTwitterの利用をより快適に感じるユーザーが増えれば、MAUも増加に転じる可能性は十分にありますし、それこそが健全な成長と言えます。
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