6月にカンファレンスでLINE Payの手数料を一定期間無料にするなど大発表をした「LINE」の決算発表があったので、早速見ていきたいと思います。
まずは売上収益と営業利益の四半期推移を見てみましょう。
売上収益は初めて500億円を突破して506億円、前年同期から21%増加となっています。
一方で、営業利益は90億円、前年同期から37%減と大幅に減少しています。
LINEでの営業利益は売上収益の他に、その他の営業収益も関係しており、子会社の売却益など一時的に発生する収益がその他の営業収益に含まれています。
例えば、2017年2Qの営業利益には、カメラアプリケーション事業の譲渡による利益104億円が含まれています。
これらの一時的な利益を除いた営業利益を計算してみましょう。
2018年度は一時的な利益がかなり多く、1Q・2Qともに営業利益は赤字となっています。
2Qは4億円ほどの赤字と、収益性はかなり悪化しています。
2018年2Qの一時的な利益の内容ですが、LINE モバイルがソフトバンク傘下に入ったことで94億円の利益が発生しています。
売上収益の前年同期からの成長率を計算してみます。
売上収益の成長率はほぼ横ばいとなっており、20%近くの成長を続けています。
売上収益は成長を続けている一方で、事業による営業利益は赤字となっているLINEに何が起きているのでしょうか?
まずはLINEの月間アクティブユーザー数(MAU)の推移を見てみましょう。
日本、台湾、タイ、インドネシアの4各国の推移となっています。
全体のMAUは徐々に減少してきており、直近で1億6,400万人となっています。
日本が大きく増加しており1年で600万人増加、タイ、台湾も少しずつ増加しています。
インドネシアは減少の勢いが大きく、1年で1,200万人も減少しています。
MAUは減少していますが、DAU/MAUの比率は増加しており、直近では77%と徐々に増加しています。
日本だけのDAU/MAU比率は85%と国内は非常に高くなっていることがわかります。
続いて、売上収益を事業ごとに見てみたいと思います。
売上の半分ほどを占めているコア事業の広告が成長を牽引していることがわかります。
2018年2Qでは271億円と前年同期から41%も成長しています。
しかし、コア事業のゲームなどを含むコミュニケーション・コンテンツ・その他の売上は減少してきています。
コマースやLINE Payなどがある戦略事業の売上は2018年に入ってから横ばいとなっています。
「コア事業 広告」「コア事業 コミュニケーション・コンテンツ・その他」「戦略事業」のそれぞれ詳しく見てみましょう。
コア事業 広告
アカウント広告(有料の公式アカウントなど)が成長しており、売上は140億円となっています。
公式アカウント数は着々と増加しており、672件となっています。
また、タイムラインやニュースに表示されるディスプレイ広告の売上も増加しており、今期は92億円。
広告のインプレッション数を見てみると、この1年で40%増化して211億となっています。
MAUの減少から考えるとユーザーの使用頻度が上がってきているのではないかと考えられます。
コア事業 コミュニケーション・コンテンツ・その他
この事業ではLINEスタンプの販売やゲームアイテムの販売が売上となっています。
コミュニケーション(LINEスタンプの販売)とコンテンツともに売上が減少してきており、全体の売上は前年同期から4%の減少しています。
まだ全体の売上増加には繋がっていませんが、LINE マンガとLINE MUSICの決済高は成長しています。
前年同期からの成長率を見てみると、LINEマンガは24%、LINE MUSICは74%と大幅な成長をしています。
それぞれ競合も多いですが、今後の成長次第ではコア事業の売上を伸ばすコンテンツになるかもしれません。
戦略事業
キャラクター商品の販売やEコマースによる売上となっています。
また、2Qから連結子会社ではなくなったLINEモバイルの売上は戦略事業に含まれていました。
LINEモバイルの含まれていたその他の売上は減少していますが、Friends(キャラクターグッズのh販売)の売上が増加して全体では前期と同じぐらいとなっています。
コマースの取扱高も成長しており、前期と比べてLINEショッピングは14.8%増加、LINEデリマは7.4%増加となっています。
セグメントごとの損益を見てみましょう。
コア事業の利益は徐々に減少しており、直近で72億円。
戦略事業は大幅な赤字となっており、売上の拡大につれて赤字も大きくなっています。
戦略事業の赤字は-69億円とほぼコア事業の利益を食いつぶしています。
ここでコスト構造の変化を見てみましょう。
2017年4Qから大きくマーケティング費が増加しており、従業員報酬費用も年々増加しています。
また、少しずつですが販売手数料も増加しています。
つい最近、乃木坂46がLINE Payの10円ピンポンの広告をやっていましたね。(私もその戦略にまんまとハマってしまい、口座開設してピンポンしましたが…)
10円ピンポンの結果、個人間の送金数が8.5倍にも増えています。
また、ポイント還元のインセンティブも発表しており、LINE Payを利用すると最大で5%の還元となっています。
この状況から、現状は収益性を捨ててまでLINE Payの普及に力を入れているように見えます。
まずはLINE Payの決済高を見てみましょう。
2017年4Qは台湾の保険料納付シーズンとなったため一時的に高くなっていますが、着々と決済高は成長しています。
直近の決済高は1950億円あり、前年同期から83%と急激に成長しています。
また、福岡市のキャッシュレスプロジェクトにLINE Payが採択されていたり、台湾は税金納付のシーズンがあったりと今後も伸びる要素はあります。
LINE Payは2018年に決済対応箇所を100万箇所にすることを1つのKPIとしています。
現時点での決済対応箇所は9万4,000箇所ですが、QUICPayと連携することにより約72万箇所追加予定となっています。
また、LINEカンファレンスでも発表されていたLINE Payの店舗用アプリを使うことで、導入コスト0円、決済手数料3年間無料で導入することができます。
LINE Payを入り口にLINEは今後もフィンテック領域をどんどん拡充させていく戦略となっています。
LINEの収益性を悪化させてまで、つぎ込んでいるLINE Payが今後どうなっていくのか引き続き見ていきたいと思います。