かねてよりワッチしている「靴」を中心としたオンライン通販企業、「ロコンド」の決算が出たのでまとめておきたいと思います。
ロコンドはいつからか、社長である田中裕輔氏のTwitterでの発言が目立ちますが、そうした面での良し悪しはおいておいて、「事業の状況」について数字ベースで考えてみたいと思います。
今回の決算説明資料は、次のようなスライドから始まっています。
「トップライン」は一般的には「売上」のこと。ロコンドは今四半期、売上13億7,100万円と前年から53.6%の増収を実現しています。
「ボトムライン」は一般的には「純利益」のことで、2倍と書いてありますが実際には1億2,700万円の赤字です(前年同期は4,700万円の黒字)。
これは一体どういうことでしょうか?
「全力二階建て」上で話題にもなった「広告費用前営業利益」のことのようです。
「広告費を除いた利益」という概念自体はマネーフォワードやGunosyなどの会社が過去に決算説明資料で使用しており、決して突飛な発想というわけではありません。
さて、ロコンドの件の利益は、前年の1億6,600万円から3億6,700万円に倍増しています。
「ボトムライン」と呼べるかは微妙なところですが、実際に事業が進捗していることは事実のようです。
ただ、ロコンドは今まさに急拡大のための投資を行なっているフェーズです。
前年比ではなく、四半期ごとの数字がみたいところ。
ロコンドが四半期ごとに発表している「データシート」から、営業利益と広告変動費の推移をグラフにしてみました。
2016年1Qに営業黒字化を果たしてから、(右肩上がりではないものの)利益を拡大してきました。
それが、今四半期には6億円弱の広告関連費を費やしたことにより、2億円強の営業赤字となっていることが分かります。
計算上は、営業利益に広告関連費用(変動+固定)を足し戻せば、ロコンドの言う「広告費用前営業利益」が出てくるはずです。
それをグラフにしてみましょう。
確かに広告費用前営業利益は着実に拡大しています。
また、先ほどのグラフにあったように、ロコンドはテレビCMに投下した広告費を「固定費」として分類しています。
何にせよ、広告費用前営業利益(彼らの言う「ボトムライン」)が拡大しているというのは、ロコンドにとっては良い兆候です。
それでは、「トップライン」についてはどうでしょうか?
冒頭で見たように、売上は前年から1.5倍に拡大しています。
グラフで見てみると、売上の伸び率自体も加速しているように見えます。
目の錯覚かもしれないので、前年変化率を計算してみます。
これまでも売上成長率は40%前後と高い水準にありました。
今四半期の売上成長率53.7%というのは、今までと比べても高い成長率であることが分かります。
売上の構成要素についてもチェックしていきましょう。
ロコンドは、靴を中心としたマーケットプレイス「LOCONDO.jp」を中心事業とし、その他にいくつかの周辺事業を展開しています。
ここでは、「LOCONDO.jp」と「それ以外」に分けて取扱高(返品後)の推移を見てみましょう。
LOCONDO.jpを除いた周辺事業は、あまり変化がありません。
Platform事業の取扱高は5億円前後で、ピーク時の7億円と比べるとむしろ減少しています。
ヤフーや楽天への出店である「LOCOMALL」も4.5億円前後で横ばいです。
成長を牽引しているのは主力事業の「LOCONDO.jp」であり、四半期の取扱高が20億円を超えています。前年+50%増。
前四半期(4Q'17)と比べると、3億円のテレビCMを投下して5億円強ほど取扱高が増えたという計算になります。
興味深い点としては、「CM放映地域での成長率が70%を超えている」というところ。
なおかつ、CM効果は続けることに高まっているということが主張されています。
もう一つ、興味深い点として「返品率の縮小」が挙げられます。
面白いことに、LOCONDO.jpの返品率は27%にまで縮小しています。
かつては40%前後あったわけですから、このことがコスト上与えるインパクトはかなりでかそうです。
会員数の推移を見てみると、CM効果で会員数全体は131万人にまで拡大しています。
アクティブな会員数は直近で33万人(前年同期比+29.2%)ほどという水準。
新規ユーザーが増えたことで、ユーザーあたりの年間購入金額は少し減少していますが、それでも過去と比べると高い水準にあります。
以上の項目についてまとめると、次の三つが「LONCONDO.jp」の成長要因となっています。
① アクティブ会員数が33万人に拡大(前年比29%増)
② 受注額(返品前取扱高)が27.5億円に拡大(前年比43.8%増)
③ 返品率が27%に縮小(前年同期は30%)
返品率低下の理由は、サイト上の情報を充実させることで、ユーザーが買い物の判断を行いやすくしたことが寄与しているようです。
最後に、株価の動向についても軽く考えてみます。
決算を受けて5.5%株価が上昇しているものの、時価総額は119億円と、ここ一年は横ばいとなっています。
総資産は53億円あり、そのうち25億円が現預金。
借入金などはないため、企業価値(いわゆるEV)は94億円ほどと評価されていることとなります。
四半期のキャッシュフローは公開されていませんが、前年の営業キャッシュフローが通期で3億3,554万円だったこと、今期すでに2億円の営業赤字となっていることから、営業キャッシュフローはマイナス数億円といったところでしょうか。
(実際に現金は4億円ほど減っています)
今の時点だけを見ていれば、時価総額100億円前後というのも妥当な水準と言えそうですが、重要なのは「今後の成長目標を達成することができるか」という点です。
ロコンドは、2020年度までに取扱高300億円を目指すとしています。
ここのところ数値としては横ばいの「LOCOMALL」「BOEM」などの周辺事業は、見放したのかと思えばそうではなく、今後も伸ばす予定のようです。
そして、2020年度には営業利益を30億円まで伸ばすというのが計画の骨子です。
2017年3月、ロコンドがマザーズ上場することが決まった頃のインタビューでは、「2020年度に売上高(取扱高ベース)1000億円、営業利益率10%、企業価値1000億円」を掲げていました。
そこから考えるとトーンダウンした目標ではありますが、それだけ現実的になったと言えるのかもしれません。
毎回の決算で話題を提供してくれるロコンドがどこまで伸びていくのか、今後もチェックしていきたいと思います。
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