国内最大のゲーム攻略メディアを運営する「GameWith」の2018年5月期決算についてまとめたいと思います。
(決算説明資料)
まずは全体の結果を見てみます。
売上高は26億7700万円(前年+69.3%)に達し、経常利益は11億6,800万円(前年+77.8%)に。
経常利益率は43.63%と、相変わらず鬼のような利益率です。
これだけの急成長なので、もう少し粒度の細かい情報を知りたいところ。
四半期ごとの業績推移を見てみましょう。
直近の数字をみると、四半期ごとの売上高は7億2500万円、営業利益は2億4600万円となっています。
売上は過去最高となっているものの、利益に関してはQ1から少し減少傾向のようにも見えます。
売上成長率を計算してみると、Q1に前年比で2.5倍となったものの、その後は60%から40%程度に落ち着いています。
どうしてQ1の売上が突出して増加したかというと、一時的なプロモーション特需があったからとのこと。
(決算説明資料)
その時の営業利益率は51.8%と非常に高い水準になっています。
その後は「海外展開」「新規事業への投資」などを行なったことで、営業利益率は低下したと説明しています。
GameWithの事業では、「数億PVという巨大なゲーム攻略メディアに掲載する広告」が主な収益源となっています。
今期はいったい何が売上の増加要因となったのでしょうか?
(決算説明資料)
GameWithの主な広告収益は、「PV数」「PVあたりの広告単価」の掛け合わせで計算することができます。
上のスライドを見るとわかるように「PV数」は減少気味。
直近では月間7.2億PVとなっており、ピーク時の8.9億PVと比べると19%ほど減少しています。
それでも売上が増加した理由は、「PVあたりの広告単価」が前年の2倍近くに拡大しているからです。
GameWithは、2017年1月に広告運用体制を構築し、そこから2倍以上の単価に引き上げることに成功しています。
しかし、このことはGameWithにとって今後の成長抑制要因となる可能性もあります。
GameWithは現時点ですでにゲームメディアとして国内トップの訪問数をほこり、国内のWebサイト全体としてもトップ30位というモンスターWebサイトです。
PV数が伸び止まっている状況を考慮すると、PV単価をどこまで高められるかというのが大きなポイントとなります。
逆に言うと、PV単価の上限がきてしまったとすると、(このままのPV推移では)GameWithの売上成長は止まってしまうということになります。
しかし当然、そんなことはGameWithの経営陣が一番わかっていることでしょう。
彼らは、今後も持続的な成長を行うために種まきを続けています。
その中で、すでに収益貢献をはじめているものに「動画」に関する取り組みがあります。
(決算説明資料)
GameWithでは、所属タレントがYouTubeに動画チャンネルを作成し、動画を配信することで、「テキストから動画への攻略コンテンツ需要の変化」を逃さないようにしています。
合計チャンネル登録数は342万人に達しています。
GameWithの売上の内訳を見てみると、動画に関する広告売上が四半期で6,300万円に達しています。
動画広告の売上は前の四半期と比べて1.5倍に伸びており、今後の拡大が期待されます。
企業とのタイアップ広告も伸びており、四半期で1億8700万円と全体の4分の1をすでに占めています。
創業事業である「ゲーム攻略サイト」自体のPV増加はすでに止まっていますが、動画広告やタイアップ広告に注力することで、今後もしばらくは売上成長を実現することができそうです。
そしてGameWithは、より中長期的な成長を目指すためにまったく新しい領域への参入も行なっています。
その一つは、「海外展開」です。
国内で培ったゲーム攻略メディアの運営ノウハウを活用し、すでに台湾版メディアをスタートしています。(「順調」とのこと)
2018年5月には東南アジア向けメディア「GCUBE」社に投資も行なっています。
また、今後は英語圏に本格参入することで、海外展開をさらに進めていくとのこと。
そして、より面白そうなのが「新規事業」です。
重点領域として「ブロックチェーンとゲームの組み合わせ」「eスポーツ」「ゲーム x 資金調達」の三つを掲げています。
ゲーム開発にブロックチェーン技術を組み合わせることで、ゲーム内の活動を通じてお金を稼ぐような仕組みが作れるとのこと。
GameWithでは、これをまったく新しいゲーム市場として「ゲームの開発」「プラットフォームの開発」「ゲームの開発支援」の三つに取り組んで行くそうです。
二つ目の重点領域は、「eスポーツ」です。
eスポーツとは、そのままですが「ゲームのプロリーグ」のようなもの。
世界のeスポーツ市場は急成長を続けており、2021年には16.5億ドルに達すると言われています。
「ゲームでお金を稼ぐ」スタープレイヤーは世界で数多く生まれており、先ほどの「ゲームxブロックチェーン」の文脈とも決して無縁ではありません。
三つ目は、「ゲーム」と「資金調達」の組み合わせです。
ゲームに特化したクラウドファンディングのようなプラットフォームを構想しているようです。
以上のように、今は「ゲーム攻略サイト」を中核事業とするGameWithですが、今後は「世界のゲームインフラになる」という大きなビジョンを掲げています。
世界的に見ても、ゲーム市場というものはとても大きな市場ですから、この中で彼らがどこまで伸びていけるか見ものです。
今後数年の目標としては、2021年5月期(3期後)に売上55億円、営業利益20億円を目標としています。
それに先立って来期は3億円ほど戦略投資に費やし、営業利益率は下がる計画です(それでも29%)。
今後3年で売上・利益をともに倍増させるという計画となっています。
最後に、GameWithの状況や戦略について、市場がどう評価しているかをチェックしておきましょう。
株式時価総額は217億円。
22.5%の減益を計画する今回の決算発表を受けて、株価は8.5%も低下しています。
(決算短信)
ここで、現在の財政状態について確認しておきましょう。
総資産は32億円弱で、そのうち現預金が24億円に達しています。
バチボコのキャッシュリッチであり、借入金はありません。
つまり、市場はGameWithの企業価値を193億円(217 - 24)と評価していることになります。
GameWithが2018年5月期に稼いだ営業キャッシュフローは9億5,119万円。
固定資産への投資額を考慮すると、一年で9億円ほどのフリーキャッシュフローを稼いでいることになります。
それに対して193億円の企業価値ですから、割り算すると22年ほどで元が取れることになります。
これだけの成長企業にしては比較的、市場から評価されていない方です。
もちろんそれには、来期に減益となる事業計画が関係しているわけですが、「ゲーム」という巨大市場で世界進出に成功すれば、この評価は大きく払拭されるかもしれません。
GameWithは、3年後に海外事業と新規事業でそれぞれ8.25億円ずつ(55億円の15%)の売上をあげることを目指しています。
新たな種まきが実を結ぶにはまだ時間がかかりそうですが、まずは新しい一年でどのような経過を見せてくれるのか、チェックしていきたいところです。