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タオバオやTik Tokも利用!中国スマホの90%をカバーするデータ分析企業「オーロラ・モバイル」

IPO
  • 膨大なデータでタオバオ、Tik Tokにもサービスを提供
  • オーロラ・モバイルが有する4つの強み
  • 売上構成の変化とともにコスト構造も変化
  • 優先株で成長資金を潤沢に確保
  • 拡大を続ける中国のスマホによるネット利用、データを活かし成長を続けるか

ビッグデータ分析・開発者向けサービスなどを提供する中国の极光 (オーロラ・モバイル)が、NASDAQに上場申請書を提出しました。

調達金額は2億ドルが予定されています。

(企業サイトより)

2011年の設立から7年で上場

会社名の「极光」は「オーロラ」という意味があります。

深圳に本拠地を構えながら、北京・上海・広州などにもオフィスを開いています。


現CEOの羅偉東(英語名:Weidong Luo)氏と陳菲(英語名:Fei Chen)氏が共同創業者として創業。


羅偉東氏は中国人民大学を卒業後、2003年に香港理工大学から全額給付の奨学金をもらい同修士課程へと進みました。

しかし当時の香港はSARS流行の真っ最中で大変な社会状況にありました。

感染を防ぐために大学の食堂でも1人1人黙って食事をとり、テレビをつければ感染への注意を促す内容ばかりが流れている始末でした。

追いうちをかけるように、彼の好きだった香港人歌手レスリーチャンが自殺してしまい、羅偉東氏はますます陰鬱な気分になってしまったそうです。

そんな人々の対面での交流が減る状況の中、羅偉東氏は自らエンジニアコミュニティサイトを作っています。これが羅偉東氏の1回目の起業です。


一方、もう一人の共同創業者である陳菲氏は清華大学を卒業後、シカゴ大学のMBAも取得しているエリートです。Citibankのマネージングディレクターを務めた経験なども持ちます。


そして2011年に、陳菲氏がエンジェル投資家として投資するとともに、共同創業者として羅偉東氏と极光を創業するに至ります。

(企業ブログ、Xtecherインタビューより)

創業時の中心メンバーは主にテンセント、モルガンスタンレー出身者などで、ITやファイナンスのプロが集まっています。


2012年に開発者向けプッシュ通知ツール「J Push」をローンチ。

2014年には、IDGなどから400万ドルの資金調達に成功。

その後アップデートを重ねながら、2016年にはデータ分析サービスを開始しています。


それでは、このような歴史を辿ってきた极光の直近2年間の売上を見てみましょう。

2017年の売上は2億8470万元(約47億9606万円)と、2016年の7032万元(約11億8461万円)から4倍ほどの増加を見せています。

今回のエントリでは、极光が手掛ける事業がどのようなものであるかを見ていきたいと思います。

膨大なデータでタオバオ、Tik Tokにもサービスを提供

极光のビジネスモデルは、スマホアプリ開発者向けにツールを提供し、その中で集めた行動データを利用して、最適なマーケティング戦略を提供するという三つの流れからできています。

顧客が実際に利用する2つのサービスについて確認していきましょう。



① 開発者向けサービス

极光の元祖といえるのが開発者向けツールの提供です。

プッシュ通知やインスタントメッセージ、分析、SMSなど、モバイルアプリの開発で必要なツールキットを提供しています。

こうしたツールは中国だけでなく世界中に多く存在しますが、開発者にとっての手間を削減する非常に重要なサービスです。

② データソリューション

開発者向けツールを提供することで、オーロラ・モバイルには大量のビッグデータが集まってきます。

これを活用しているのがデータソリューション事業であり、収集・処理しておいたデータを使ってデータ分析サービスを提供しています。


そして、その中でも中核事業となっているのが「ターゲット・マーケティング」と言われるサービスです。

機械学習を使ったデータマイニングにより、質・量やクライアントのターゲット層といった観点から、一番合った広告在庫を見つけるというサービスです。

具体的なケースとして、テンセントのニュース配信アプリで非アクティブ会員を再び活性化させるための広告戦略を担ったものがあります。

ディープラーニングを活用して非アクティブ会員をタイプ別に分け、異なる内容とスタイルの広告を配信しました。

この取り組みにより、1か月で1000万人のユーザーが再びアクティブになったそうです。


ターゲット・マーケティングサービスは、アリババの『タオバオ』や最近は日本でも知名度が上がってきた『Tik Tok』など、巨大なモンスターアプリが数多く導入しています。


また、全体に占める売上高は少ないものの金融リスクの管理サービスも金融機関向けに提供しています。

具体的には、「ブラックリスト作成」「位置情報認証」などの機能があります。

・ブラックリスト作成:債務者の非行歴や公開されている情報を収集し、AIによる分析で債務不履行に陥る行動特性を導き出すことで、精度の高いブラックリストを作成

・位置情報認証:借入申請を行った人が提出した情報と、スマホの位置情報を確認することで分かることに矛盾が生じていないかを調べられる


過去の行動から現在の位置情報まで全てが筒抜けになってしまうというのは、消費者にとっては少し怖いことですが、金融機関にとっては利便性の高いサービスといえます。


1顧客あたりの売上

サービス料金が公開されていないので、2017年の顧客数から1顧客あたりの売上をざっくり計算してみましょう。

開発者向けサービス顧客数:1118人→約3万5000元(約59万円)/1顧客

データソリューション顧客数:1145人→約21万5000元(約360万円)/1顧客


オーロラ・モバイルが有する4つの強み

このように、「開発者向けツール」と、集めたデータを活用する「データソリューション」の二軸で有益を挙げているのがオーロラ・モバイルの事業モデルです。

そして彼らは、自社の強みを「データプロセシング(処理)」という工程にあるとしており、大きく4つの(V)を強みとして掲げています。

一つ目は、『Volume(ボリューム)』です。

2017年12月時点で、月間で中国内の約90%にあたる8億6400万台のモバイル端末からデータを生成しており、2018年には9億2500万台に達しています。 

この圧倒的な規模の大きさこそが、他には真似のできない強みです。 


二つ目は、『Variety(多様性)』です。

メディア、エンターテイメント、ゲーム、金融サービス、観光、Eコマース、教育、ヘルスケアなど多岐に渡るアプリでの行動データ(インストールや位置情報など)を持っています。

三つ目は、『Velocity (鮮度の高いデータ)』。

開発者向けサービスで提供しているソフトウェア開発キットから月間15億のデータと、月間1625億の位置情報データを収集しています。 

加えて、更新スピードを更に上げるべく技術とインフラのアップグレードも常に行っています。


そして四つ目は『Veracity (正確性の高いデータ)』で、データの整形を行うことで異常値などが紛れ込まないようになっているとのこと。


売上構成の変化とともにコスト構造も変化

さて、さきほども表でみたように、オーロラ・モバイルの収益の大部分は「データソリューション事業」であげられています。

全体売上は2億8470万元(48億円)ありますが、そのうち2億4591万元(41億円)がデータソリューション事業。

そして、さらにそのうち2億2115万元(37億円)はターゲット・マーケティング事業です。


売上構成の変化は、オーロラ・モバイルのコスト構造にも変化を与えています。

売上高に占めるコスト比率は全体として小さくなっていますが、売上原価率だけが増えています。

この理由は、「ターゲット・マーケティング」事業の売上が大幅に増加したためです。


この事業には、「広告在庫の仕入れ」というプロセスが存在します。

仕入れた広告在庫にマージンを乗せて販売するという一般的なアドテク事業のモデルであり、オーロラ・モバイルのほかの事業と比べると売上原価が高くなっています。

このように、原価率の高い事業の比率が増加したことで、全体の売上原価率は68%から75%へと拡大。

その他の費用は売上急増によって小さな割合に収まっていますが、まだ営業赤字率は20%以上となっており、このコスト構造がこれからどのように改善してくか注目です。


優先株で成長資金を潤沢に確保

次に、オーロラ・モバイルの財務状況について見ていきます。

まずは資産の内訳を見てみましょう。

2017年時点での総資産3億5945万元(約60億4080万円)の50%以上が現預金で、2億816万元(約34億9800万円)となっています。

この数字は、2016年の1億317万元(約17億3380万円)から2倍になっています。

とてもキャッシュが多いですが、これは一体どこから来たのでしょうか。


資産の源泉である負債と純資産の項目を見てみましょう。

優先株(mezzanine equity)が資金の源泉のほとんどを占めています。

成長企業らしく積極的に優先株による資金調達をしてきたことが分かります。


次にキャッシュフローも見ていきましょう。

成長企業としてはよくある形ですが、営業CFのマイナスを優先株発行などの財務活動でカバーしています。


優先株などで資金調達を積極的に行うことで成長に向けた資金を確保していることが分かります。


またアリババ・テンセントなどがスタートアップに投資を行うことで代理戦争が起きることがありますが、オーロラ・モバイルについてはそれは当てはまらないようです。

IPO後も株式の30.7%を保有し議決権の80%以上を持つKK Mobileは、极光のCEOである羅偉東氏が保有する会社です。

他の主要株主もVCなどが占めています。 

拡大を続ける中国のスマホによるネット利用、データを活かし成長を続けるか

中国のインターネット人口は拡大を続けており、中でもスマホの割合がとても高くなっています。

(CINICより)

2007年には24%ほどであったインターネット利用者のモバイル比率は年々上昇を続け、2017年には97.5%に達しています。


これほどまでに伸びている中国でのモバイルインターネットにおいて90%以上の端末を押さえているというのは大きな強みです。

ただ、ビッグデータ分析を行う企業はTalkingDataなど中国国内に他にも存在し、しのぎを削っています。

モバイル端末自体も変化が激しい領域ですので、現在の端末シェアを今後も維持し続けることは容易なことではなさそう。


オーロラ・モバイルは営業利益の改善に向けて次の二つを掲げています。

①データソリューションのターゲット・マーケティング事業への依存からの脱却

②規模の経済によるコストダウン


今後は周辺事業によるマネタイズを進めていくことで、利益率を高めることを狙っています。

また、顧客数をさらに増やしていくことでスケール・メリットを享受できる可能性もあるとのこと。


オーロラ・モバイルは、中国スマホの9割を握っているというわりには売上はまだ50億円弱と、あまり大きな事業規模には至っていないというのが現実です。

「90%以上の端末データ」を今後、どのように収益化につなげていくかという点に注目したいと思います。

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