7年間で営業利益率4倍!年間1億冊のキャンパスノートを販売するオフィス用品・家具メーカー「コクヨ」

今回は「キャンパスノート」でおなじみのオフィス用品メーカー「コクヨ」について取り上げたいとおもいます。

1905年、帳簿の表紙屋として「コクヨ」は大阪市内に誕生しました。

当時、創業者の黒田善太郎氏は弱冠26歳で、当初は「黒田表紙店」という店名で、和製帳簿の表紙だけを製造していました。

(当時発売されていた記帳)

「コクヨ」の企業理念に「カスの商売」というものがあります。

どんなに利益が上がらないカスのような仕事であっても、人の役に立ち続けていれば、いつかは必ず商売になるというもので、創業者の黒田氏が提唱したものです。


1913年には、洋式帳簿をはじめ、伝票、仕切表、複写簿、便箋といった製品も作り始め、紙製品メーカーとしての地位を確立します。

そして1917年には、社名を「国誉」に変更しています。

(当時のロゴ)

1960年、創業者の黒田善太郎氏は息子である黒田暲之助氏を社長に任命します。

そして同じ年に新たにスチール業界に参入します。

1961年、「コクヨ」に社名を変更します。スチール業界での成功を皮切りにオフィス用品業界にも進出します。

1965年には今でも売れ続けている「キャンパスノート」を発売。

当初はあまりヒットしなかったものの、試行錯誤を重ね、今では知らない人はいないほどの大ヒット製品となりました。


(初代キャンパスノート)

このように、長年「帳簿の老舗」として知られてきたコクヨは、これらの事業拡大を経て、「総合オフィスメーカー」へと変化を遂げたのでした。

それではこの歴史ある「コクヨ」の近年の業績をみてみましょう。

売上高は2618億円(2010年)から3156億円(2017年)へと、ゆるやかに拡大しています。

そして、驚くべきは営業利益率の変化です。2010年の1.25%から、2017年には5.57%へと4倍以上に改善しています。


オフィス用品の老舗「コクヨ」に一体なにが起きているのか、事業内容についておさらいした上で近況について確認していきたいと思います。


「コクヨ」の意外な収益構造

まずはコクヨのセグメント情報からみていきましょう。

2011年以降、「ステーショナリー関連」「ファニチャー関連」「通販・小売関連」の3セグメントが報告されています。

意外なことに、文房具などを扱う「ステーショナリー関連」の売上は最も少なく、796億円となっています。

最も大きいのは「ファニチャー関連」で1287億円。

そして、「通販・小売」が1072億円の売上をあげています。


それでは、コクヨがどのような製品を提供しているのかみてみましょう。

①ステーショナリー事業

ステーショナリー事業は、帳簿から始まったコクヨの歴史を支える紙製品の製造販売を中心に、文房具やPC関連用品を提供しています。

なじみ深い「キャンパスノート」の年間販売数は1億冊。

単純計算で毎年、国民ほぼ全員が1冊のキャンパスノートを購入していることになります。 

当然、国内シェアはNo.1ですが、前述した通り全体売上の25%しか占めておらず、コクヨの事業の中では一番少ない割合となっています。 

 中国・タイ・インド・ベトナムにも事業展開しています。

②ファニチャー(家具)事業

コクヨの家具事業は、オフィス家具、公共家具などの製造販売およびオフィス、公共施設、商業施設等さまざまな空間の構築を行なっています。

オフィス空間を中心に、ホテル・商業空間・病院・文化施設など年間1000件を越える空間構築を請け負っており、使いやすさと美しさを両立するオフィス家具の提供をしています。

国内シェアはNo.2ですが、売上全体の40%を占めています。

特にこの部門は中国進出に力を入れています。

現地でのオフィス家具のマーケティング・企画開発から販売・納品まで、全ての業務を「国誉家具商貿(上海)有限公司」に集約し、体制を強化しています。

③通販・小売部門

オフィス通販事業は、オフィス用品の通信販売『カウネット』を軸に、個人向け通信販売、卸販売、電子購買システム、情報提供サイトの運営など多角的に事業を展開し、「モノ」、「システム」、そして「情報」の提供をしています。

中国においては、オフィス通販『易優百(Easybuy)』を展開し、上海地区、北京地区で多くの地元企業にサービスを提供しています。また、小売関連事業ではインテリアショップ「アクタス」を運営しています。

安定した財務状況

続いて、「コクヨ」の財務状態をみてみましょう。まずは資産の内訳から。

資産

総資産は3000億円ほどあり、そのうち現預金は589億円ほど。ここ数年でかなり増えています。

その他、土地を317億円、投資有価証券を526億円計上。

負債・純資産

次に、これらの資産の源泉をみてみましょう。

2011年には1200億円ほどだった利益剰余金が毎年積み上がり、2017年には1616億円ほどまで増加しています。

長年にわたって利益を生み出し続けてきたことがわかります。

その一方で有利子負債は222億円から137億円へと減少。


キャッシュフロー

続いてキャッシュフローをみていきましょう。

営業キャッシュフローはとても安定しており、毎年100億円以上の現金を稼ぎ出しています。

2017年に財務キャッシュフローが大きくマイナスになっているのは、長期借り入れ金の支払いと配当金の支払いにあります。

投資キャッシュフローと財務キャッシュフローはマイナスの年が多く、事業で稼いだキャッシュで設備投資し、株主還元や借入返済に費やすという理想的な形です。


フリーキャッシュフロー

FCF(フリーキャッシュフロー)はおよそ120億円ほどあり、こちらも毎年安定してプラスです。

ここ2年は急増して、年間120億円以上のFCFを稼ぎ出しています。

株価推移をみると、一時期低迷していた株価が再び上昇しています。

時価総額は2490億円ほど。

現預金が589億円、有利子負債が137億円あることを考慮すると、実質的には2,038億円ほどの評価額と計算できます。

コクヨが今後も毎年120億円のFCFを生み出すことができれば、17年で元が取れる金額。


好調を維持するファニチャー事業

それでは、「コクヨ」のこれからの展望はどう考えられるでしょうか。

まず、2018年Q1の状況を見てみます。

ステーショナリー事業は前年比売上の-4.7%を計上しています。

これは海外事業が堅調に推移した一方、国内事業が定番品の減少、新製品の不振等の影響。

ファニチャー部門の売上高は、オフィス家具販売が好調に推移し、一部ストア事業の譲渡による減少を補い、前年並みの397億円を計上しました。

通販・小売事業の売上高は、前年同期比1.6%減の303億円を計上。

理由としては、カウネットが新規顧客獲得の不振により顧客数が減少したこと、アクタスが一部店舗において改装のための閉店期間があったこととしています。


また、ここ7年を切り取ると増収・増益を続けているコクヨですが、もっと長い歴史で見ると売上規模は伸び悩み、低成長が普通のことになっています。

第一次中期経営計画

2016年2月に発表された中期経営計画では、企業価値の持続的拡大のために「低成長からの脱却」をかかげています。

2018年の目標は、売上3180億円と修正され、営業利益の目標は180億円となっています。

そして、今年終わる第一次中期経営計画に止まらず、今後も第二次、第三次と経営計画を策定し、業績を伸ばしていくとのこと。

ステーショナリー事業は国内だけではほとんど伸び代はなさそうです。

現在はインド・中国に力を入れており、インドではすでに文房具のシェア3位を達成。今は中国に力を注力していくようです。

コクヨの海外売上はまだ10%にも満たない水準ですが、海外展開に成功すれば、もしかすると「持続的な成長」も不可能ではないのかもしれません。