民間ジェット機のパイオニア!世界最大の航空機メーカー「ボーイング」の歴史と現在の動向をチェック

今回は世界最大の航空宇宙機器メーカー「ボーイング」について取り上げたいと思います。

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ボーイングは1916年、シアトルのボートハウスで小規模のフロート水上機(水上にて離着水できる航空機)メーカーとして誕生しました。 

1917年に、当時第一次世界大戦(WW1)を戦っていた海軍のパイロット養成用に練習機モデルが採用され、航空機メーカーとしての地位を築きました。 

しかしWW1後の1919年から1920年の間、軍用機の需要が落ち込み深刻な経営難に陥りました。  

そこで郵便事業向けの航空機を製造し、世界初の国際航空郵便の輸送をスタート。

1933年には、当時画期的だった民間旅客機『ボーイング247』を開発、アメリカの多くの航空会社で導入されました。

1941年にはアメリカが第二次世界対戦(WW2)に参戦したことで軍用機の需要が急増し、大量の爆撃機を生産し売上を拡大。  

しかしWW2後には再び軍用機需要の縮小によって売上が落ち込み、大規模なレイオフを余儀なくされました。

1952年に、当時はプロペラ機が主流だった民間航空機においてジェット機の開発に巨額の投資を行いました。

文字通り「社運を賭けた」投資によって開発された『ボーイング707』が成功を収め、民間航空機業界におけるボーイングの優位を確立しました。 

その後もボーイングは数々のジェット機を開発し航空機業界において圧倒的な地位を築いています。

2017年度の売上高は933億ドルで営業利益は102億ドルです。 

売上高は直近は減少傾向にあるものの2003年以降増加しており、収益性も改善傾向にあるようです。

今回のエントリでは、ボーイングの事業内容や決算数値についてまとめていきたいと思います。

現在は「ジャンボジェット」は減少、小型機の生産が中心

ボーイングの事業内容は以下の4つの報告セグメントによって分類されます。


①民間航空機部門(Commercial Airplane)

ボーイングのメイン事業たるジェット旅客機の製造販売です。各航空会社がクライアントであり、アフターサポートもこの中に含まれます。

現在、ボーイングでは大きく分けて5種類のジェット機を製造・販売しています。

下のグラフは各機体の価格を表したものです。


全長33.6mと小型の『737』が1億ドルと最も安価で、全長70を超えるジャンボジェット『747』は4億ドルもの価格。

それぞれのジェット機の2017年度の納入数についても見てみましょう。

ボーイングは1年間で合計763機のジェット機を納入しており、そのうち小型ジェット機の『737』が529機とほとんどの割合を占めています。

1機1億ドルですから、737だけで529億ドル、ボーイング全体の半分以上の収益をあげていることになります。

1969年より飛行を開始したジャンボジェットの『747』は受注が減っており、生産終了の可能性が高いとされています。

「ジャンボジェット」はなぜ消える? 世界を狭くしたB747旅客機、生産終了への経緯

②防衛・宇宙・セキリティ部門(Defenses, Space&Security)

ボーイングの二つ目の事業は、軍用航空機、衛星システム、有人宇宙船などの設計・製造です。


③グローバルサービス部門(Global Services)

民間航空部門、防衛・宇宙・セキュリティ部門の顧客にサプライチェーンマネジメント、改修&メンテナンス、データ分析、トレーニングの4つを主に提供しています。

この部門は2017年度に民間航空部門と防衛・宇宙・サービス部門から独立して新たなセグメントになりました。

④金融部門(Boeing Capital)

歴史からわかるように、ボーイングの事業は時代による財政管理がとても重要なもの。

自社の金融リスクだけでなく、旅客機などを購入する顧客のリスクを軽減するためにリース取引などの金融サービスを提供しています。

セグメント別売上

ではセグメント別の売上の推移をみていきましょう

民間航空部門の売上は年々増加しており、全体の売上高のうち60%を占めており、ボーイングの主要事業は民間航空機の製造販売であることがわかります。

金融部門は売上が非常に小さく、補助的な部門であることもわかります。


セグメント別営業利益

次に報告セグメント別の営業利益をみていきます。

防衛・宇宙・セキュリティ部門では安定的に営業利益を獲得しています。

また2017年に独立したセグメントとなったグローバルサービス部門では高い営業利益をあげています。

一方で民間航空部門は営業利益の変動が激しく、特に2008年と2009年では大きく落ち込んでいます。

この原因としてボーイングは2017年度の有価証券報告書で以下の2つをあげています。

①航空機への需要は景気動向に左右されやすい

②価格固定契約のためコストの影響を受けやすい

ほとんど全ての航空機は航空会社が購入しており、航空会社は航空旅客数に応じて航空機の購入を決定します。

航空旅客数は景気の影響を受けやすく、したがって航空機に対する需要も景気の影響を受けるようです。

地域別売上

では次に地域別の売上の推移をみていきます。


全体の売上に占めるアメリカの割合は高いものの、売上高はほぼ横ばいで中東や中国の割合が増加傾向にあります。またヨーロッパ地域でも増加していることがわかります。


ボーイングは2017年12月期の有価証券報告書で、航空旅行客数は年間5%ずつ成長する見込みで、アジアとヨーロッバ地域がこの成長を牽引していると述べています。


財政状態

財務状況をみていきます。

資産内訳


資産の内訳をみると流動資産の割合が大きく、固定資産の割合は比較的小さくなっています。

現在製造中の製品を意味する棚卸資産(Inventories, net of advances and progress billings)の額が大きく、2017年度は443億ドルとなっています。

工場や設備といった固定資産は126億円と資産全体の約14%となっています。


負債・純資産内訳



負債と純資産の内訳の推移をみると自社株買い(Treasury stock, at cost)が巨大な額になっており、自己資本比率はほとんど0になっています。

次に負債の詳しい内訳を見てみます。


ボーイングは負債のうち借入金の割合が小さく、2017年の長期借入金(Long-term debt)残高は97億ドルで短期借入金の額は13億ドルとなっています。

負債のほとんどが買掛金(Accounts payable)や前受金(Advances and billing in excess of related costs)といった流動負債が占めています。

ボーイングはサプライヤーから仕入れた部品を組み立て大型の製品を製造しているため、流動資産や流動負債は大きいものの、固定資産や固定負債が小さくなっています。


キャッシュフローの内訳をみてみると、営業キャッシュフローは2008年を除いて安定してプラスです。

また投資キャッシュフローが小さく財務キャッシュフローが大きい額になっていることがわかります。


財務キャッシュフローの内訳をみても、自社株買い(Common shares repurchased)が92億ドルで、配当支払い(Dividends paid)の額が34億ドルとかなり大きく、株主への還元を積極的に行っていることがわかります。

積極的な自社株買いもあり、株価は右肩上がりの伸びを続けて居ます。

時価総額は2170億ドルで、フリーキャッシュフロー116億ドル(2017年)の18.7倍です。

潤沢なキャッシュフローと、積極的な自社株買いが企業価値の向上につながっているようです。


今後の展望:2036年まで民間航空機の成長を予測

ではボーイングの今後の展望についてみていきます。


今後の市場予測


ボーイングは世界中にある民間航空機部門の市場は2036年までに大きく成長すると予測しています。

ボーイングの予測によると、民間航空機の合計が現在は23480機であるのに対して、2036年には41030機にまで増加するとしています。


航空機市場の現状

上のグラフは2006年以降のジェット機納入数の推移です。

航空機市場はボーイングとヨーロッパ企業のエアバスがほとんどのシェアを占めています。

2017年の納入数はエアバスが718機でボーイングが763機とボーイングが少し上回っています。


ボーイングの戦略

ボーイングの今後の戦略について2017年度の有価証券報告書に記載がありました。

グローバルサービス部門を活用することで民間航空部門と防衛・宇宙・セキリティ部門のサービスの付加価値を向上させ、競合他社との差別化を図っていくようです。


以上のことからボーイングが2017年からGlobal Service事業を独立したセグメントとするようになった理由として、今後はこのセグメントにより一層注力しようとしている姿勢が読み取れます。


ボーイングが対象とする市場は今後も成長が見込まれています。

しかし強力な競合他社が存在するため、いかにして差別化を図っていくかが今後の成長のポイントとなってきそうです。