米国の年次報告書(Form 10-K)には毎回、「Management’s Discussion and Analysis of Financial Condition and Results of Operations」という項目があり、そこで経営陣が考える会社の業績や財政状態について説明を行っています。
そのためには当然、経営者たるCEOがその会社をどういう方向に変えていくかという考え方を盛り込む必要があり、CEOがどんな経営哲学を持っているかを知るための最も良いコンテンツの一つと言えます。
そこで今回は、注目度の高いAmazon.comの同項目を見てみましょう。
ジェフ・ベゾスが一貫して言っていることがより具体的に、簡潔にまとめられています。
Amazonのアニュアルレポートはこちらにまとめられています。
それでは、順番にみていきましょう。
Amazonの主要な収益源は「多様な製品の販売」と「顧客に対するサービス料」の大きく2種類あります。
Amazon.comのサイト上にある商品には、Amazon自身が仕入れて販売する商品と、サードパーティ事業者によって提供されるもの、そしてAmazon自身が製造するデバイス製品などがあります。
なので、Amazonの総収益は概ね、Amazonの在庫から販売される製品の売上と、サードバーティ事業者が販売した売上の一部をサービス代として受け取る分の合計になります。
その他、Amazon Web Servicesや出版、フルフィルメント、コンテンツの購読、広告、協賛クレジットカードなどもあり、そちらもサービス収益に含まれます。
これは有名な話ですね。
フリーキャッシュフローの成長には、主に営業利益の増大と、運転資本や資本支出を効率的に管理することの二つが重要です。
営業利益の増大は、製品売上とサービス売上の拡大、そして営業費用を効率的に管理することが必要です。しかし、長期的な戦略次第で営業利益は投資に回され、相殺されることとなります。
製品・サービス売上を増加させるために、Amazonは「顧客体験をあらゆる側面で改善する」というシンプルなアプローチを取っています。
その中には、価格を安くすること、配送を早くすること、商品の選択肢を増やすこと、製品情報を増やすこと、そしてそれによって顧客の信頼を勝ち取ることが含まれます。
Amazonの変動費には、製品やコンテンツのコスト、決済やそれに関係する取引のコスト、梱包や配送、カスタマーサポートや広告費などが含まれます。
一方、固定費に含まれるのは、Amazonが有するテクノロジー・インフラを開発・運用するために必要な費用です。
変動費は売上の上限に応じてダイレクトに変わりますが、固定費は地理的な拡大や商品カテゴリーの増減など、より中長期的な要因に左右されます。
つまりAmazonにとって、一つの商品あたりの変動費を下げることと、固定費の増大をなるべく抑えることの二つが重要になります。
変動費を下げるために、Amazonはダイレクト・ソーシング、規模の経済による仕入れ単価の削減、取引にかかる無駄の削減を目指しています。そうすることで、Amazonは商品をより安く提供できます。
固定費の成長を抑えるためには、プロセスの効率性を追求し、リーンな組織文化を保つことが必要だとしています。
Amazonは早い在庫回転率を有しており、それがキャッシュフロー上の優位性につながっています。
平均すると、Amazonが消費者からお金を受け取るのは、Amazonがサプライヤーに支払う期日よりも先になっているそうです。
在庫回転率とサプライヤーへの支払い期日は多くの要因に左右されるため、ある程度の変動があるそうです。
コンピューター・サイエンティストや設計者、開発者などを拡大するに従い、Amazonはテクノロジーとコンテンツ領域への投資規模を拡大することを予定しています。
それにより、Amazonはより効率的に商品カテゴリーやサービスの拡大を行えると考えているからです。
また、テクノロジーへの投資によってオペレーションを迅速化し、ユーザーの体験を向上させることにもつながります。
ユーザー体験の向上が売上の拡大につながると考えていることはすでに述べた通りですね。
ファイナンスに関する話では、効率的に株式の希薄化を管理する一方、買収などの戦略的な目的においては柔軟に株式を発行していく、としています。まあこれは普通か。
決算報告に使用する通貨は米ドルであるため、ドル安になると、各国の事業成長以上に売上が増加することとなります。ドル高になると逆ですね。
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