今回は、イタリアの超高級車メーカー「Ferrari N.V(フェラーリ)」についてまとめます。
フェラーリが自動車製造会社として創業されたのは1947年。
創業者のエンツォ・フェラーリ氏は、元々レーシングドライバーで、引退後にモータースポーツに参戦しようと、自らレーシングカーを開発したのが起源です。
フェラーリは2015年にニューヨーク証券取引所に上場、その後も業績を伸ばし続けています。
2017年12月期の売上高は34億1689万ユーロ(4521億円)、営業利益は7億7984万ユーロ(1031億円)。
営業利益は20%以上と、収益性も向上しています。
今回のエントリでは、フェラーリの歴史から近年の決算数値などについてまとめていきたいと思います。
フェラーリの創業
フェラーリが創業されたのは1947年。
創業者のエンツォ・フェラーリ氏は、もともとはレーシングドライバーでした。
エンツォは引退後に、モータースポーツに参戦すべく、レーシングカーを開発する会社を立ち上げ、「1500cc・8気筒エンジン」の自動車を製造しました。
しかし第二次世界大戦のためにモータースポーツが禁止され、戦時中は車ではなく、機械の製造を行うことになります。
フェラーリは戦後にようやくレーシングカー「120S」(1500cc・12気筒エンジン)を製造します。120Sはのちにローマグランプリで優勝。
この時期、モータースポーツにさらなる投資をするために始めたのが、スポーツカーの販売事業です。
1950年代には、レーシング部門で輝かしい成績を残し世界的に有名なチームとなります。この結果、1950年からの10年間でスポーツカーの売上は3倍になります。
フェラーリは1960年に株式会社になりました。
フィアット社傘下での50年
しかし、エンツォは市販車の販売に関心がなく、レースへの投資を拡大、財務状態が悪化します。その結果、フィアット社との連携が進み、1969年には傘下に入ることになりました。
また、1988年には創業者のエンツォが死去。これに合わせ、フィアット社はフェラーリの90%の株式を取得します。
フェラーリは未だ財政的に厳しい状態にありましたが、新しく社長になったモンテゼーモロ氏が、レース事業・市販車事業の両方で改革を行い、売上・利益をともに大幅に改善します。
再び軌道に乗ったフェラーリは、ブランドを活かしたグッズ事業や、親会社フィアットの買収した「マセラティ」の再建に取り組み、成功します。
2008年におきた世界的な大不況のもとでも、フェラーリは堅調に成長を続けました。
NYSEに上場、そして独立
2010年ごろからFCA(旧フィアット)がフェラーリを手放すのではないかと噂され始めます。
2015年、ニューヨーク証券取引所に上場。FCAは10%の株式を売りに出します。
2016年1月には残りの80%の株式がFCAの既存株主に売却され、47年間続いたフィアット社との資本関係がなくなりました。
ただし、フェラーリの現CEOマルキオーネ氏は、FCAのCEOも務めているなど、フェラーリが完全な独立を果たしたとは言えなさそうです。
フェラーリの事業といえば当然、自動車の製造・販売ですが、その周辺の事業を含めて以下の4つがあります。
①自動車の製造・販売 (Car and spare parts)
主に7種類の自動車とその部品の製造・販売。
②エンジン製造 (Engines)
「マセラティ」(フィアット社傘下)のエンジンの受注生産。
また、「フォーミュラ1(F1)」での他チームへのエンジンの貸与。
③スポンサー・ブランド (Sponsorship, commercial and brand)
「F1」に参戦して得た賞金・スポンサー料。
また、自動車以外の商品へのライセンス供与のロイヤリティ。
④その他
主に、自社製品のローンやリース事業を行う「Ferrari Financial Services」など。
事業ごとの収益は次のようになっています。
全体収益は34億ユーロほどで、そのうち70%以上に当たる24億5600万ユーロ(3250億円)が自動車や部品の販売からとなっています。
スポンサーシップなどによる収益も4億9400万ユーロ(654億円)と大きいですね。
エンジン売上は3億7300万ユーロ(493億円)。
地域ごとの出荷台数です。
2017年の出荷台数は8,398台。台数も伸び続けています。
単純計算で、1台あたりの売上高はなんと約30万ユーロという計算になります。
世界の自動車市場は9000万台以上ですから、その中では0.01% にも満たないということになります。
一方、超高級車市場に限れば30000台程度なので、シェアの25%ほどを占めていることになります。
意外にも、中国や中東諸国の占める割合は2014年をピークに減少傾向で、その他の東アジアや東南アジアで特に伸びているようです。
フェラーリは、伝統的に少数生産で希少性を確保し、ブランドイメージを守ってきました。
ですが、現CEOの新方針のもと、約7000台で推移していた生産台数は伸び続け、来期には9000台以上を見込んでいます。
また2017年には新モデルを発表するなど、モデル数・生産台数ともに伸ばしていく方針のようです。
売上目標はフラットですが、調整後EBITDA(利益の一つ)で11億ユーロと、5.7%の成長を見込んでいます。
また、負債の残高も減らすなど、収益性と財務健全性の向上がテーマになっています。
最後に、フェラーリの財政状態を確認します。
総資産は約41億ユーロで、そのうち現金は約6億5千万ユーロあります。
有形資産も無形資産もわずかですが増加傾向にあります。
負債の内訳は、半分以上が借入金で18億ユーロあります。
2015年には自己資本がマイナスのいわゆる「債務超過」になっていますが、現在は回復しているようです。
自己資本比率は18.9%で、自動車業界の中では少し低い水準にある印象です。
営業キャッシュフローは6億6280万ユーロでした。たな卸資産の増加や営業債権の減少等で昨年からは減少していますが、高い水準で推移しています。
毎年、投資や借入金の返済が安定して行われているようです。