変化する小売業界の中でウォルマートはどう戦っていくのか

Amazonがホールフーズ・マーケットを買収し、いよいよAmazonが小売業界を飲み込むのではないかと言われている。しかし、現時点での事業規模でいうとAmazonの売上高が1359億ドル、ホールフーズ・マーケットが157億ドルに対してウォルマートは4858億ドルもの売上があり、規模としては圧倒的に大きい。

だがウォルマート側の立場から言えば、今後Amazonにどんどん売上を「食われる」のではという危機感は当然あるはずで、その中でどんな戦いをしていくつもりなのであろうか。今回はウォルマート側の経営戦略を探るため、直近のアニュアルレポートを紐解いてみたい。

ウォルマートが最も重視しているのは何か

これは2017年2月期のアニュアルレポートの表紙である。

表紙にでっかく「Moving with SPEED(矢印)」と書いてある。これこそがウォルマートが戦略上もっとも重視しているポイントだと思われる。表紙に書いてあるからには、かなり重視しているとみて間違いない。

さらに次のページを見ると、

「未来の小売業界で勝つために、迅速に動く」のがDNAだと言っている。多忙な家族のために毎日を過ごしやすくし、お客さんの時間とお金を節約しているとのこと。

次のページには、こうも書いてある。

「Our strategy to serve customers through e-commerce and our stores in a seamless way is gaining traction. The momentum we’re seeing is real and I’m excited about what the future holds.(eコマースと店舗を通じてシームレスに顧客にサービスするという我々の戦略は手応えを得ている。我々が見ているモメンタムは本物であり、これから先どうなるかワクワクだ)」

ウォルマートもeコマースの利便性を理解しており、既存の店舗小売とeコマースをシームレスにつなぐことで付加価値を生み出すという戦略のようだ。

社長さんもテクノロジーを強調している。

ウォルマートの4つの戦略

それでは、より具体的にはどんな戦略をとっていくのだろう。アニュアルレポートでは「Our plan to win」として4つの項目を挙げている。

1. 忙しい家庭の毎日を過ごしやすくする

ウォルマートは顧客に対して買い物の体験をいかにスムーズに、素早く済ませてもらえるか、というのを重視している。そのために、店舗、モバイル、ピックアップ、デリバリーなどの形式を提供。その中で、Walmart.comでは35ドル以上の買い物で無料の二日配送(2 day shipping)を提供したり、サムズ・クラブでは全米でスキャン&ゴーのサービスを提供。

また、Jet、ShoeBuy、MooseJaw、ModClothの買収や、中国のJD.comとの提携などにより、さらなる利便性向上を図っている。

2. 社員の働き方を変える

よりデジタルな企業になることを志向しており、それにより内部の手続きを効率化し、高度な分析によってリアルタイムな情報共有を行い、生産性の向上を図る。

そのために、社員にはアプリやタブレットなど、必要なツールを提供しているが、その究極的な目標はやはり「スピードの向上」と、それによってお客さんに提供する価値を増大することだという。

3. 規律のある営業を行い、結果をだす

「毎日安く」という哲学でウォルマートは設立されたが、新しい方法を見つけることこそがさらに安いコストを実現するのに役立つと考えているそうだ。

資本をどう分配・投資するかに工夫をこらし、長期的な株主価値を最大化するという。今後はeコマースと既存店舗での売上向上に注力し、米国内での新店舗展開はあまり重視しないとのこと。

4. 最も信頼される小売企業となる

消費者はかつてないほど生活に密接する形で小売事業者を選ぶようになったが、ウォルマートはスタッフの正しい取り組みにより信頼を獲得する。

ウォルマートは価格の安さを志向しているが、それはコストを切り詰めるのではなく、競合よりも効率的な方法で商品を届けることで実現され、お客さんのお金だけでなく時間も節約するために革新を続けていく。


ウォルマートの目的はシンプルで、「お客さんのお金を節約し、よりよく生きられるようにすること」だとしている。このメッセージはロゴのキャッチコピーにも書かれている。


まとめ

・ウォルマートの事業目的は客の時間とお金を節約し、よりよい人生を送ってもらうこと

・そのためにスピードを最重視しており、それによって小売業界を生きのびる戦略

・スピードには客へのサービスの利便性と、ウォルマート側の事業スピードの二つが含まれる

・店舗、EC、ピックアップ、デリバリーなどをシームレスに提供

・安さを重視するが、それはサプライチェーンの革新・効率化によって実現


正直、「アマゾンとかめっちゃスピードあるけど勝てるのか?」とか「サプライチェーンの革新とは具体的にはなんなのか?」という疑問が残った。既存のお客さんを大切にする、以上のことを言っていないような気もする。

おまけ

最後に、ウォルマートに関わる数字について。

・この5年間で390億ドル売上を増やし、580億ドルが株主に還元された

・2017年期の総売上高は4859億ドル、営業キャッシュフローは315億ドル

・44年連続で年間配当を増加

・1週間に2.6億人の客にサービスを提供

・28カ国で1万1695店舗を営業し、11カ国でeコマースを提供


これらの数字が、今後5年10年、あるいはそれ以上の時間の中でどう変化していくかを引き続きワッチしていきたい。