賃貸物件管理SaaSを提供!法律事務向け「MyCase」も買収、特定分野SaaSの拡大を狙う「AppFolio」

スモールビジネス向けに資産管理ツールを提供する「AppFolio」についてまとめたいと思います。

AppFolioが提供するのは、アパートなどの賃貸物件をはじめとする、不動産の管理ツール。

2006年に設立され、2015年にナスダックに上場しています。

売上は伸び続け、2017年には1億4380万ドルに。黒字化も果たしています。

売上成長率も36%と、高い水準をキープ。


「不動産物件の管理ツール」という、ある種、用途が極めて限定されたツールを提供するAppFolioとはどのような会社なのでしょうか。

自分でもそう言っています

発表されている決算資料などをもとに、情報を整理していきたいと思います。


AppFolioが提供する不動産管理ツールとは

前述の通り、AppFolioは2006年に創業された企業です。

2008年には最初の製品である「AppFolio Property Manager(APM)」を不動産事業者向けに公開。

2009年には追加機能として「Value+」サービスを提供開始しています。


実際の利用シーンを見てみましょう。

不動産オーナーの日常業務には、財務管理や空き部屋の掲載、応募者の選考、賃貸料の収集、物件のメンテナンスなど、数多くのタスクが含まれています。

それら全てのオペレーションを一つのアプリケーションで行えるようにしているのが、「AppFolio Property Manager」です。

① Real Time Vacancy Dashboard

まずは物件管理。「Real Time Vacancy Dashboard」と呼ばれる機能により、全ての空室情報を一つのダッシュボードで管理することができます。

② Easy Vacancy Posting

空室情報を公開したくなったら、「Easy Vacancy Posting」と呼ばれる機能によって、数百ものウェブサイトに一括で投稿することができます。

チラシとして印刷できるフォーマットに出力することもできるため、AppFolio上で情報を一元管理しておけば、色んな方法で空室をアピールすることが可能。

賃料をいくらにするか迷ったら、似た条件の元で他物件の相場と比較してくれます。

③ AppFolio Websites

入力した情報を元に、モバイルフレンドリーなオリジナルウェブサイトを作れる機能も搭載。

ウェブサイトはAppFolio Portfilio Managerとシームレスに連携しているため、利用者はウェブサイト上から簡単に賃貸を申し込むことができます。

物件のメンテナンスもウェブサイトから簡単に申し込み、決済まで済ませることができます。

④ Prospect Tracking

集客のための機能(Prospect Tracking)も充実しています。

物件に問い合わせてきたり、見学に来たゲストの情報を一元管理することが可能。

ゲストがどこからやって来たかなどを含め、情報を詳細に保存しておけば、その後の選考やマーケティング活動にも役立てることができるというわけです。

⑤ Online Rental Applications

前述しましたが、AppFolioを使っていれば、お客さんはウェブサイト経由で賃貸の申し込みを行うことができます。

アパートやマンションの部屋をご自分で借りたことのある方なら、これがあるだけで貸す側・借りる側ともに大幅に手間を減らせることは容易に想像できるのではないでしょうか。

クレジットカードを登録しておけば、賃貸料もAppFolio上で支払い可能。

⑥ Start Page Statistics

利用者の状況を分析するための機能も充実しています。

ゲストや問い合わせ状況や、オンライン申し込み数などをグラフィカルなダッシュボードで管理可能。

物件が多くなるほどにありがたい機能です。

⑦ Customizable Online Leases

賃貸契約もオンライン上で行うことができます。

契約書の内容はテンプレートを元に、契約相手によってカスタマイズすることも可能。

Faxを使う必要もなければ、契約書を二通用意するために二回サインする、みたいなこともやらなくて済みます。

⑧ Tenant Screening Services

応募者をスクリーニングするための機能も充実。

過去の賃貸における支払い履歴も残されるため、優良な借り手を迅速に捕まえることができます。

⑨ Accounting Software Solution

会計管理ソフトとしての機能も含まれています。

「不動産管理」という特定目的に最適化しているため、通常の会計ソフトと比べてもスムーズに利用することが可能。

電気料金の支払いや、領収書の管理まで全てを行うことができます。


色々な機能がありますが、上記の他にも、賃貸契約にまつわる保険、借り手とのテキスト・メッセージング機能、24時間体制のサポートシステムなど、「賃貸管理」という目的を端から端までカバーする唯一無二の存在となっているようです。

価格体系は、賃貸物件の部屋数ごとの従量課金がベース。オフィス物件の管理にも対応しています。

顧客数の推移を見てみましょう。

2013年の3,993顧客から、2017年には11,708と3倍近くに増えています。

部屋数ごとの課金なので、AppFolioが管理している部屋数もチェックします。

2017年末には325万部屋。

部屋あたりの月単価を1.2ドルとすると、これだけで年間4680万ドルの売上となります。


法律家向けサービス

また、AppFolioは「スモールビジネスの成長を助ける」というビジョンのもと、一貫して「バーティカルな」市場に参入することを創業以来、狙い続けています。

2012年には「MyCase」の買収によって法律分野にも参入。

MyCaseのサービス内容は、文字通り「AppFolio Portfolio Manager」の法律家むけバージョンといった感じで、法律家の業務に特有の雑務を巻き取ってくれるソフトウェアとして設計されています。

クライアントからのオンライン決済にも対応。訴訟社会として知られるアメリカですから、ポテンシャルは大きそうです。

顧客数はすでに9,349に達しています。

こちらはユーザーごとに39ドルという月額課金モデル。

顧客の平均単価は公開されていませんが、仮に120ドルとすると年間で1346万ドルの売上ということになります。

しかし、現時点ではMyCaseの売上は全体の10%を切っているとのことなので、実際にはもう少し単価は低いかもしれません。



さて、AppFolio全体の売上を収益種別ごとに見てみます。

この中には、AppFolioとMyCaseの売上がごっちゃになっているようですが、前述の通り90%以上はAppFolio Portfolio Managerによるもの。

見ると、月額課金によるベーシックな売上(Core solutions)が5713万ドル、追加機能による売上(Value+ services)が8085万ドルとなっており、追加機能の売上がベース課金による売上を上回っています。

AppFolioの多様な機能のうち、「Value+ services」に含まれるのはウェブサイト作成機能、応募スクリーニング、保険、24時間体制のカスタマーサポート機能など。

安価なベース料金は、ユーザーを広く集めるためのものであり、実質的には「Value+」サービスで文字通りバリューアップすることが前提のビジネスモデルとなっているようです。

ウェブサイトは月50ドル。保険は物件ごとに9.5ドル、24時間サポートは部屋あたり1ドル(最低200部屋以上)という形。ベース料金よりもかなり高価ですね。


その他の事業数値

AppFolioがどのようにお金を稼いでいるかが見えてきたと思うので、最後にその他の事業数値をざっくりと追っておきます。

資産の内訳

総資産1.1億ドルのうち、現金同等物は1611万ドル。

投資有価証券が全体で5220万ドルとかなり大きくなっています。

負債と自己資本

資本剰余金(Additional paid-in capital )が1億5253万ドル、そのうち6725万ドルを累計損失(Accumulated deficit)として溶かしています。

アメリカのスタートアップ企業、株式による調達をガッツリ行い、それを燃やしながら成長していくという形です。上場前は転換優先株(Convertible preferred stock)をかなり使っていたことも分かります。

キャッシュフロー

営業キャッシュフローは2016年からプラスになり、2017年には2937万ドルに達しています。

2015年には上場により、市場から6000万ドル以上を調達。

2015年には投資キャッシュフローも大きくなっていますが、この多くは有価証券などの購入です。

フリーキャッシュフロー は2017年よりプラスに転じています。

結果が出始めていることは市場からの評価にもつながっています。

株価が最も安かった頃と比べると、4倍以上に上昇しています。


時価総額15億ドルに対してフリーキャッシュフロー が3000万ドルですから、EV/FCF倍率はちょうど50倍ほど。

SaaS企業は高い評価をされることが多いので、それほど馬鹿高い水準ということはないかと思います。

AppFolioに加えてMyCaseの売上寄与が増えてくれば、市場からの評価はさらに高まりそうな気もしますね。

2018年にAppFolio社がどのような成長を見せてくれるのか、楽しみにチェックしていきたいと思います。