更地活用から賃貸管理まで一貫してお任せ!賃貸不動産仲介の最大手「大東建託」のビジネスモデル

今回は、「いい部屋ネットで探そう」のCMでおなじみ、大東建託についてまとめてみたいと思います。

大東建託は1974年に名古屋市で「大東産業株式会社」として設立されました。

名古屋証券取引所を経て、1992年に東京証券取引所第一部に株式上場。数度の社名変更を経たのちに、本社を東京に移します。

「いい部屋ネット」ブランドが誕生したのは2004年。2016年にできた「DK SELECT」も大東建託のブランドです。

同年、日本サッカー協会とサポーティングカンパニー契約を締結。

2017年には管理戸数が100万戸を超えています。

現在、大東建託は賃貸住宅の供給戸数・仲介件数・管理戸数で国内1位。


まずは業績の推移を見てみます。

売上高はきれいな右肩上がり。

過去7年で、ほぼ1.5倍に増加し、1.5兆円にタッチしようかというところです。


経常お利益率に着目すると2016年までは7%前後で横ばいだったものの、2017年には8%越えと大きく改善しているのがわかります。

絶対額で見ても、3年連続で1,000億円を超えてきています。


この好調な売上の背景と、それを取り巻く環境を詳しく見ていきたいと思います。


「土地の有効活用」をオーナーに一括で提供

「大東建託」の名前は知っていても、常日頃から「大東建託を利用している」という方はそう多くはないと思います。

一体何をしている会社なのでしょうか?数値と共に見ていきます。


大東建託の事業の目的を一言で言うと、「土地の有効活用」です。

具体的には、建設事業と不動産事業という大きく二つの事業を展開しています。

①建設事業

「土地を持っているけど、特に活用はしていない」という土地オーナーに賃貸住宅の建設を提案し、施工も手がけます。

②不動産事業

さらに、その完成した賃貸住宅を引き渡して終わるのではなく、その賃貸住宅を大東建託がオーナーから借り上げます。

そして入居者募集から、家賃の回収や建物メンテナンスまでを一貫して請け負います。(これが不動産事業)


つまり土地オーナーは、更地に住宅を建てて家賃収入を得るまでをまとめて大東建託に「おまかせ」できるということです。

また、賃貸経営にとって空室や家賃相場の変動による賃料減少は大きなリスクです。大東建託が提供する「35年一括借上」サービスでは、そのリスクをある程度、吸収してくれます。


以上の説明をまとめてくれているのが下図です。

ホームページ

ちなみに、土地オーナーが土地を活用する目的は、「税対策」が47.5%だそうです。

積極的な資産運用や不労所得を得るためというのは少数派なようで、実際に大東建託のホームページでも、資産の「運用」ではなく、「承継」といった表現がされています。


ここからは、上述の「建設事業」「不動産事業」およびその他の事業が、それぞれどれだけ売上に貢献しているか、その数値を見ていきます。

2017/3期を見ると、建設事業が6,239億円、不動産事業が8,246億円と、合わせて実に売上高全体の約97%を占めています。

やや不動産事業のほうが売上高が多い状況も過去7年変わらずです。


一方、金融事業は単独の事業セグメントとして記載されていますが、存在感は薄いです。

具体的には、住宅向けの保険や家賃のクレジットカード決済サービス、土地オーナーが金融機関から融資を受けるまでのつなぎ融資などが金融事業に含まれます。


財務状況

バランスシートを見てみます。


2017/3期の総資産7,814億円のうち、流動資産が半分以上を占めています。

さらにその半分が現金預金で、全体としても現金預金が大きな割合を占めています。


それに比べて固定資産、特に「建物・構築物」と「土地」の少なさが目立ちます。

自社で不動産を保有し、そこから賃貸収入を得るということもしているようですが、不動産事業においては、あくまで「仲介」がメインだということでしょうか。


資産の源泉である負債と純資産の項目も見てみます。

注目すべきは、利益剰余金と長期借入金の推移。


利益剰余金が積み重なるのと反比例するように、借入金が減っています。

年を追うごとに、資金繰りに余裕が出ている様子がわかります。


詳しく有利子負債の残高をチェックしてみると、

2017/3期を示す当期末の有利子負債残高は554億円です。

営業利益が1,201億円だったので、半年あれば有利子負債をすべて返せるくらいのイメージです。


では、その営業利益はちゃんと現金で手元に入ってきているのでしょうか?


キャッシュフローの状況を見てみます。


キャッシュフローの状況


営業キャッシュフローは500億円以上で安定して推移しています。2017/3期に至っては、1,000億円を優に超えています。

冒頭で見たPL上の利益は、キャッシュによる裏付けのある質の高い利益だと言えます。

そして、その潤沢な営業キャッシュフローから、継続的に借入金の返済と自己株式の取得を行なっているようです。


基本的に投資活動も営業キャッシュフローに収まる範囲内で行なっているようですが、2016/3期に投資による大きな支出があるのが気になります。

確認してみます。

定期預金でした.....

将来に向けた事業投資というわけではないようです。


続いてフリーキャッシュフローを見てみます。

2015/3期に凹みはありますが、だいたい毎年500億円以上のキャッシュが自由に使える状況が続いています。



フリーキャッシュフローの数値と時価総額を利用して企業価値(EV)を計算します。

2018年4月6日時点の大東建託の時価総額は1.46兆円。ここに2017/3期の数値で計算したネット有利子負債(有利子負債 - 現金預金)を足します。


1.46兆円 + (554億円 - 2,481億円) = 約1.27兆円


約1.27兆円あれば、今の大東建託をまるごと買うことができるということで、これがマーケットから見た大東建託の企業価値(EV)になります。

これをフリーキャッシュフローで割ると、大東建託をまるごと買った時、収益力の現状維持を前提として、何年で元本回収できるかがわかります。


1.27兆円 / 940億円 =13.5年


13.5年で回収できる計算です。逆に言えば、マーケットでは13.5年分の価値が付いているということになります。

これを高いと見るか、安いと見るかはこれからの大東建託の成長次第。


では、大東建託はどんな未来を描いているのか?

最後に、大東建託の事業を取り巻く環境と、その中で勝ち抜くための戦略を、各種統計を交えながら見てみたいと思います。

大東建託の経営環境と経営方針

大東建託は、2017/3期を初年度とする、5ヶ年 (2021/3期まで)の中期経営計画を策定しています。

まずはその計画の数値目標を頭に入れておきます。

2017/3期時点で売上高 1兆4,971億円、営業利益 1,201億円、営業利益率 8.0%、ROE 31.2%という状況。

営業利益率とROEはすでに目標クリアしており、これを維持できるかがポイントとなります。


次に、事業セグメント別の経営計画を見ていこうと思ったのですが、詳しくまとめられたスライドが見当たらなかったので、有価証券報告書から読み取れるものを簡単にまとめてみます。


建設事業

「営業要因の増強」

併せて「資産活用・資産承継を切り口としたコンサルティング営業」


不動産事業

「新たな入居者斡旋体制」

「SNSの活用や、女子プロゴルフツアーの開催等による、ファン層の拡大とブランド知名度向上」


また、海外事業を含めた「新コア事業」の積極的拡大にも取り組んでいくようです。


目標までの道のりの説明は割とふわっとした印象です。

もう少し視野を広げて、マクロ環境の数値から建設・不動産業界を俯瞰してみます。


もはや常識かもしれませんが、日本の人口はすでに減少トレンド。

世帯数はやや遅れて、2019年にピークアウトする予想です。ただ、単身世帯数は2030年頃まで増加するという予想もあるようです。


前半で見てきた通り、ここ数年の業績は好調ですが、中長期的にはあまり楽観視することはできません。


また、別の視点からの不安要素として、労働者不足による労務費の上昇があります。

2013年から労務単価が急激に上昇に転じています。労務単価とは、8時間当たりの賃金の単価。要は、人件費の目安になる数値です。

この人件費上昇の背景には、オリンピックに向けた建設需要と、都心の再開の活性化があります。渋谷駅周辺なんかもここ数年ずっと工事していますよね。あれです。あれに労働者が取られて、業界全体で深刻な人手不足だそうです。


一方、業界に追い風となるような要素もあります。

金融緩和政策による、低金利傾向です。

超低金利時代と言われて久しいですが、改めてグラフを見るとインパクトがあります。

長期金利が下がると、土地オーナーは低い金利で住宅ローンが組めるので、建設業界にとっては好要素。


さらに、2015年に施行された相続税法は、節税対策としての賃貸住宅経営にプラスに働いています。


ここまで、視野を狭めたり、広げたりしながら、大東建託の未来を考えてきました。

多くの業界に言えることですが、国内事業は前途洋々ではありません。大東建託の属する業界も例外ではないと思います。

いま大東建託は、利益剰余金とほぼ同等額ものキャッシュを有し、また既存事業は毎年潤沢なキャッシュを生んでいます。そしてその大部分を事業投資に回せる状況が整っています。つまり、大きく賭ける準備と体力は万端と言えます。


次の1歩をどこに踏み出すのか、注目していきたいと思います。