16年12月のISM製造業景況感指数から見る米国製造業のマインドの大きな変化

1月3日に米供給管理協会(ISM)が発表した12月の製造業景況感指数は54.7と、先月の53.2から1.5%ポイント上昇した。

2014年末以来の高さとなり、米製造業は先行きに対して楽観していることを示す内容となったわけだが、今回の結果において、重要なのは数字の高さではない。

米国製造業の景況感は大幅に改善

大統領選後の影響を明確に反映したのが12月の数値になるが、選挙後のマーケットの動きと同様に、製造業の景況感も強い内容となっている。選挙前の市場における不安とは打って変って、上昇相場になった背景には、トランプ次期大統領の打ち出す減税や財政出動といった政策期待があるわけだが、この期待が市場の動きのみならず製造業のマインドも大きく変えたことは、米国経済が新たなフェーズに移行しつつあることを示唆してくれる。  

次のグラフを見てみよう。

このグラフはISM製造業景況感指数と、ドルの実効為替レートを並べて表示してある。左軸がISM指数で水色、右軸がドル指数でオレンジ色になっている。水色の線が上を向けば米製造業の景況感は上向いていることを示し、一方オレンジ色の線が下を向けばドル高を意味する。

これまではドル高=景況感の悪化

2014年以降、米国製造業の景況感は概ねドル高に連れて動いていた。これはドル高による輸出関連企業の競争力低下や、金利上昇による資本コストの上昇を反映した動きと指摘できよう。他にも原油を始めとする資源安や、15年半ば以降のチャイナショックなど外部要因も存在するが、ここ数年の米国製造業景況感の低下は、ドル高によってもたらされている部分が大きいだろう。大統領選でも当然、ドルの水準について議論がなされていた。製造業に支持を求めるとするならば、ドル安を訴える政策が効からだ。

これからはドル高≠景況感の悪化

しかし2016年11月以降、これまでの流れに大きな変化が起きた。 ドル高が進んだにもかかわらず、米国製造業の景況感は上向いたのだ。これは過去2年間の傾向とは全く異なる。米国の製造業は、ドル高という苦境を前にして尚、先行きに自信が持てるほどに今後の政策に期待していることが伺える。

今後ドル高が進んだ場合でも、減税や財政出動を始めとするトランプ政権の政策によっては、米国企業はドル高を受け入れ、適応していくつもりだということだ。ドル高が進んだ場合でも、米国経済にはメリットはある。この新しい環境下に製造業が前向きに適応していくのならば、経済成長はまだまだ続くのではないか。

景況感の改善とともに、設備投資が活発化すれば、米国の景気サイクルのピークは、まだ当分先になりそうだ。