アマゾンくれば大爆発?2016年米株IPOで大成功のImpinj(インピンジ)

わずか半年で株価2.5倍のIPO、インピンジ

アメリカでは2016に105件のIPOがありましたが、その内の一つ、Impinj (PI)は、7月に上場し、わずか半年で公募価格から152.4%上昇する大成功銘柄となりました。騰落率ランキングでは2016年IPO銘柄の中で2番目の高さでした。ちなみに1位はAcacia Communications (ACIA) で、騰落率は5月の上場から168.5%となっています。ちなみにImpinjは「インピンジ」と発音するそうです。

わずか半年で株価が2.5倍になったImpinjという会社は、RFID(Radio Frequency Indentifier、無線周波数識別技術)と呼ばれる技術を取り扱う企業です。RFIDとは、ID情報を埋め込んだRFタグから、電波を用いた近距離の無線通信によって情報をやり取りするもののことで、例えばSUICAや社員証、セキュリティーロックといったICカード等にも使用されている技術です。タグを様々なモノに取り付け、それらの位置や動きをリアルタイムで把握することが可能となります。

Impinjは二人の研究者、Carver MeadとChris Diorioによって2000年にアメリカ・シアトルで設立されたRFIDメーカーです。

・小売企業向けに在庫管理やオペレーション改善

・医療業界向けに医療器具や設備の品質管理や患者データの整理

・運輸・流通業界向けに荷物や在庫の情報管理や最適化

これらソリューションのコアとなるのがRFIDで、商品や在庫、備品などにRFタグを取り付けることで、一つ一つの情報を管理することが可能となるわけです。このタグを構成するチップ、リーダー、アンテナ、ソフトウェアなどの開発、製造、販売を行っています。

ざっくりとしたイメージでは、バーコードの進化版といったところでしょうか。より多くの情報をより多くの製品に付与することが可能になる技術なわけです。

ただし、このRFID自体には様々な形や応用方法があるようで、Impinjが提供するのはUHF帯RFIDと呼ばれるものです。RAINと称するグローバルアライアンスを組み、UHF帯RFIDの世界標準規格を策定しているようです。この分野ではトップクラスのシェアのようです(同社ホームページより)。日本では日鉄住金物産株式会社が正規輸入代理店として製品の販売を行ってます。

積極投資で事業拡大中のインピンジ

さて、財務状況を見ていきましょう。

売上は着実に伸びており、過去4年間は平均16%増収となっています。また直近の16Q3では売上は四半期で$30mlnを売上げ、前年同期比で50%増の伸びとなっています。

一方営業利益は、2012年の8百万ドル弱の赤字から黒字には転じていますが、伸び悩んでいる状況にあります。粗利は5割をキープしていますが、残りの利益のほとんどを販管費や研究費用に充てているため、営業利益はほとんど出ないような状況になっています。直近の16Q3でも同様の傾向となっています。まずは先行投資で事業拡大を図っているようです。

2016年11月初めに開催された16Q3の決算説明会では、16Q4の純利益(non-GAAP)は750千ドル~2550千ドルになるとのこと。チャートは中間値をとって1500千ドルで表示しました。また16Q1の純利益(non-GAAA)は見つからなかったので、Q2~Q3の値から推定しています。

かなり割高な株価

さて、non-GAAPから計算される2016年のEPSは会社予想から$0.10~$0.18となります。2017年1月16日時点の株価は$33.53なので、PERは183倍~309倍ということになります。しかもnon-GAAPによる調整後EPSなので、実際のEPSは恐らくマイナスで必ずしも実態を反映しているわけではありません。

通常の企業ならPERが100倍を超えると異常と言えるわけですが、ここまで上昇した背景は何だったのでしょうか。

急成長するRFID市場で高い競争力を持つインピンジ

100倍を超えるPERを正当化するには、今後数年で10倍以上に成長しなければなりません。売上でいえば8億ドル、純利益は3000万ドル規模です。

IDTechEx Researchによれば、インピンジが参入しているRFIDの市場規模は現在62億ドルと言われており、今後10年間で3倍の186億ドルまで成長するといわれています。年間44%の成長になります。市場が拡大する過程で、シェアを維持するだけでも、今後数年間は高成長を続けることが可能です。

また生産に係るコストや研究費の比率も低下していくことが見込まれるため、利益率の改善によりEPSが上昇することは期待できます。ただ、現在のPERを正当化するほどの成長を見せるかどうかは、市場規模の拡大という外部要因だけでは難しそうです。

事業拡大の可能性

現在、インピンジは自動車業界や小売り業界、医療業界でソリューションを提供しています。特筆することがあるとすれば、大手百貨店のメイシーズの存在です。同社はインピンジの大口顧客の一つで、今年初めに2017年中に全商品にRFタグを導入すると発表しました。大手百貨店によるRFIDへの投資は、インピンジの成長を加速させるドライバーになるでしょう。

また昨年末に日本で開催されたRAINグローバルアライアンスのカンファレンスでは、アマゾンの他、レノボやモトローラといった小売りや製造業などのグローバル企業がパネルディスカッションに参加し、関心を寄せていたそうです。

仮に上記の企業がインピンジの製品を採用した場合、特にアマゾンが導入するとなれば、そのインパクトは非常に大きく、業績が急速に伸びる可能性はあります。

IoTが進む中、商品への情報付与はますます重要になってきます。この分野でインピンジがどれほど成長できるか、要注目です。