チーズ入りハンバーグなどを作る「包あん機」で国内シェア9割!海外売上比率56%の「レオン自動機」

レオン自動機

今日は、食品機械を製造するレオン自動機(6272)を紹介したいと思います。

レオン自動機がつくった饅頭

栃木県に本社を置くレオン自動機は、1963年に設立され、自動包あん機の製造・販売を開始しました。 

5年後の1968年には輸出を開始し、翌1969年にはドイツに「レオン研究所」を設立、1970年にはアメリカに駐在員事務所を開設しました。  

1987年に東証二部、1989年には東証一部に上場。 

なお、社名「レオン」は、レオロジー(流動学)に由来します。 

レオロジーとは、粘性や弾性の流動を解明する科学であり、レオロジカル ・エンジニアリング(RE)とは、食品の口当たりや香りを秘めたデリケートな天然の「おいしさ」の源、「粘性」と「弾性」の条件を巧みに位置転換して成形する食品の応用工学です。 

レオン自動機は、食品の応用工学に研鑽を重ねることで、世界の民族食生産の自動化に成功し、食品機械の国際企業としての地位を築いています。


2001/3期から18年間の業績推移を見てみます。

2013/3期までは売上158億円から186億円の間でほとんど横ばいで推移していましたが、2014/3期から売上が増え始め、2018/3期には279億円もの売上をあげています。

収益性も高まっており、直近の営業利益率は12.9%に。


設立から55年という歴史ある企業でありながら、突然成長に転じたレオン自動機とは一体どんな会社なのでしょうか。

レオン自動機のマシンが饅頭を作っているのを見ると、圧巻です。

今回のエントリでは、レオン自動機の事業内容と決算数値について掘り下げてみたいと思います。


事業セグメント

レオン自動機の事業は、「食品加工機械の製造販売」と「食品の製造販売」と大きく二つがあります。

① 食品加工機械の製造販売

レオン自動機の食品製造機械で作ることができるのは、パンやクロワッサン、ナン、ハンバーグ、クッキー、焼売、コロッケ、つくねなど多岐に渡ります。

中にあん(具)の入った食べ物をつくる『包あん機』が主力製品で、カレーパンやごまだんご、田舎風がんもどき、明太子入りかまぼこなどのトリッキーな食品も作ることができます。

『包あん機』の国内シェアは90%にのぼり、レオン自動機が作った食品を口にしていない人はいない、とも言われます。

日本のほかに北米・南米、ヨーロッパ、アジアにて業務を展開しており、食品加工機械(食品成型機や製パンライン等)の開発・製造を日本で行い、全世界の拠点にて販売・アフターサービス等を行っています。

② 食品の製造販売

レオン自動機の食品機械を使ったモデル工場を北米・南米で展開しています。

国内では天然酵母パン種の開発、製造、販売も。


二つのセグメント別の売上高も見てみましょう。

メインの食品加工機械の売上は193億円ほど。一方、食品販売の売上も86億円弱と、かなり大きいことが分かります。

セグメント利益も見てみましょう。

セグメント毎の利益をみると、食品加工機械が47億円弱と、利益の大半を稼いでいます。

食品販売は6億円ほどの利益。


食品加工機械の詳細

続いて、各セグメントの地域ごとの数値をさらに見てみます。

食品加工機械による売上193億円のうち、日本が112億円と、58%ほどを占めています。

海外ではアジアが33億円と大きく、ヨーロッパが29億円北米・南米が20億円と続いています。


地域毎の利益も見てみましょう。

利益のほとんどは日本(33億円)とアジア(10億円)で稼いでいます。それぞれ利益率としては20%、30%前後ほどあり、かなり収益性が高いですね。


食品販売事業

次に、食品の製造販売事業です。

こちらは北米・南米地域での売上が80億円と、かなりの割合を占めています。

利益も見てみましょう。

北米・南米地域での利益は4億円から8億円ほど。

レオン自動機全体の利益から見ると決して大きいとは言えないものの、アメリカ大陸でのモデル工場はかなりの規模で稼働していることが分かります。


財政状態

続いて、レオン自動機の財政状態について見てみます。

総資産は315億円あり、そのうち現預金は64億円。

有形固定資産が118億円と大きく、そのうち47億円は「土地」となっています。


資産の源泉である負債・純資産の内訳を見てみます。

資本金と資本剰余金の合計が144億円と非常に大きくなっています。これは少し以外ですが、レオン自動機は株式発行による資金調達をかなり積極的に行ってきたようです。

借入金は、2011年3月時点では66億円近くありましたが、2018年3月には19億円まで減少。

その一方、利益剰余金が144億円と大きく積み上がっています。


フリーキャッシュフローの状況も見てみます。

営業キャッシュフローがこの8年で大きく拡大し、40億円に達しています。

事業で稼いだキャッシュフローを設備投資や配当金にあてるという、極めて健全なキャッシュフローと言えます。

営業キャッシュフローから設備投資の金額を引いたFCF(フリーキャッシュフロー)を計算すると、直近では29億円弱にまで拡大。

これだけの優良企業ですから、当然ながら株価は上昇傾向を続けています。

直近の時価総額は653億円。借入金19億円、現預金64億円を考慮すると、実質的な評価額(EV )は608億円と計算できます。

それに対して29億円のFCFを稼いでいることから、FCF/EV利回りは4.8%ほど。


まとめ

レオン自動機は、中期経営計画は公表していません。

しかし、事業の状況を見る限り、2010年代に入ってから事業規模・収益性ともに大きく拡大しています。

2017年6月に公表された「コーポレート・ガバナンス報告書」によれば、中期経営計画はないが、中期ビジョンにしたがって経営しているとのこと。


レオン自動機は「存在理由のある企業たらん」を経営の基本理念に掲げ、食品加工技術の開発により業務展開を行っています。

その中で、開発提案型企業として継続的に事業が成長していくことと、「自己資本利益率(ROE)」5%以上の達成を経営の目標としているとのこと。(有価証券報告書より)

ROEを計算すると、すでに12%と目標値を大きく超えています。

レオン自動機は経営数値を目標にするというよりは、コア・コンピタンスを大事にした経営を行い、得られる事業機会を広げていった結果として、現在のポジションを確立したと言えそうです。

『包あん機』の市場自体は決してものすごく大きいわけではないと思いますが、逆に強力な競合はほとんどいないようです。

レオンを真似する競合が海外に出てきても、結局はアフターフォローなどのサービス面まで真似することは難しいとのこと。

地方の豪族企業(8) レオン自動機(宇都宮市) ――顧客包め、うまい提案、 包あん機シェア9割


独自のポジションで世界展開を続ける「レオン自動機」がどこまで拡大していくのか、今後もチェックしていきたいと思います。