カドカワの決算資料から見るニコニコ動画の今後

niconico(く)発表

11月28日にニコニコ動画のバージョンアップに関する発表会が行われました。

発表会では新サービスであるniconico(く)のサービス概要について語られ、『ニコニコQ』と呼ばれるアンケート機能や、生放送時にオープニングを挿入できる機能を追加するなどを発表。

しかし、多くのユーザーが求めていた「画質の改善」や「動画再生の重さ(ストリーミングが止まったり動画が途切れたりする)」が解決されていなかったため、発表会放送後のアンケートでは「良くなかった」が87%となるなど、厳しい評価となりました。

niconico(く)のリリースは2018年2月28日を予定していますが、今後ニコニコ動画はどう展開していくのでしょうか。

11月9日に公表されたカドカワの2018年3月期2Q決算資料をもとに分析してみましょう。

決算資料より

カドカワにおけるWebサービス事業決算のデータを並べてみると、ここ数四半期は横ばいとなっています。

Webサービス事業はニコニコ動画のセグメントである「ポータル」、ニコニコ超会議、ニコニコ町会議などの「ライブ」、音楽配信サービスの「モバイル」と3つの分類がありますが、この中で「ライブ」は売上高、営業利益ともにYoY、QoQで前四半期比5%を達成しています。

これは、「ライブ」においてNHN PlayArtとの共同プロジェクトによるゲーム「#コンパス」がゲームアプリのセールスランキングで好調だったほか、4月に開催した「ニコニコ超会議2017」が過去最高の来場者数15万4,601人を記録するなどが寄与しています。

一方、「ポータル」は、niconico(く)の開発投資が先行したほかプレミアム会員数の減少が響き、YoYでは赤字化、QoQでは赤字継続となっています。

ニコニコ動画の有料会員数は2012年1月に150万人を突破、2013年6月に200万人を突破した後伸び悩んでいましたが、2016年12月の発表で初の減少に転じました。

これはYouTubeなどの動画サイトが高品質のライブ(生放送)サービスを提供していたことに加え、動画投稿の大きなジャンルであるゲーム実況において2014年8月にAmazonが買収したTwitch、サイバーエージェント子会社のCyberZが運営するOPENRECなど新サービスの台頭によりユーザーが移動したためと考えられます。

Twitch、OPENRECともに動画の品質は高く、配信におけるラグも少ないことから多少の設備投資ではニコニコ生放送が質の点で上回ることは難しそうです。

今後どうなっていくか

これまでの分析をまとめると、「ポータル」セグメントでは苦戦が続いているものの、Webサービス事業全体では横ばいとなっており、これは「ライブ」セグメントの好調のおかげだということがわかりました。

カドカワ自身も決算短信のなかで、「競合する動画配信サービスとの大きな差別化要因であるライブにおいては、」との述べており、YouTubeや他動画サービスに画質や軽さで凌駕していくのではなく、ライブ事業に注力したユーザーとのつながり、「初音ミク」をはじめとしたコンテンツを基にした収益事業を展開していくものと思われます。

ただし、ライブ事業のベースには動画の視聴者、投稿者のポータルであるニコニコ動画が不可欠であり、ニコニコ動画特有の「コメントを動画に流せる機能」を尊重しつつ、ユーザーが不快に感じない程度の画質や重さの改善を続けていくことになるでしょう。

実際に新サービス説明会の翌々日、カドカワ川上会長名義でniconicoサービスの基本機能の見直しと今後に関してと題した謝罪文を発表しました。今後は画質の改善に真っ先に取り組むほか、ユーザーの声を取り入れていく姿勢を打ち出しています。

変化の大きな動画プラットフォーム業界ですが、一時代を築いた国産サービスの雄として、今後の展開を注目していきたいと思います。