New York Timesはいかにして定期課金モデルへの転換に成功したか?
今回取り上げるのは、米国の大手新聞社「ニューヨークタイムズ」のデジタル戦略だ。
新聞やテレビなど旧来型のマスメディアは、インターネット産業の成長とともに地位を失ってきた。2019年には世界でデジタル広告が既存の広告を上回っている。
新たに確立した市場は、二つの巨大企業が牛耳った。GoogleとFacebookだ。一番美味しいところを二社が持っていくため、かつての収益性は望むべくもない。
Appleの「iOS 14.5」アップデートなど、デジタル広告全般への逆風も本格化しつつある。辛うじてデジタル化を進めつつある旧来型メディアには追い討ちといっていい。
ニューヨークタイムズは、1851年に創業した老舗の地方新聞社。それにも関わらずデジタル化に成功し、世界的なメディア企業の一つとなった。
土台にあるのは、長く展開してきたデジタル戦略だ。彼らはいかにしてデジタル化、果てはサブスクリプションモデルへの転換を推進してきたのか。そのルーツから近年の戦略までを紐解こう。
ニューヨークタイムズは1851年、いわゆる「ペニー紙」として始まった。当時の米国では大衆紙が増え始めた頃で、それまで知識階級の贅沢に過ぎなかった新聞が庶民の手に渡り始めた。