世界最大の投資運用会社は?と聞かれると実は意外と難しいです。
なぜなら、投資運用会社の定義を曖昧にしているからです。
そんな中、私みるみる丸的に「こいつが世界最強でかつ世界首位なんじゃないか」と思っているのがゆうちょ銀行です。
理由は、「超低金利で207兆円を調達しながら様々なものに投資しているから」です。
ここで、様々な投資運用会社のAUMランキングについてまとめてみようと思います。
まず、投資信託やETFなどを取り扱う資産運用会社のAUMをみてみます。
1位 | BlackRock | 5.4兆ドル |
2位 | Vanguard | 4.2兆ドル |
3位 | UBS | 2.88兆ドル |
4位 | State Street | 2.56兆ドル |
5位 | Fidelity | 2.2兆ドル |
次に、世界のSWF(政府系投資ファンド)のAUMを見てみます。
1位 | ノルウェー政府年金基金 | 8250億ドル |
2位 | アブダブ投資庁 | 7730億ドル |
3位 | 中国投資有限責任公司 | 7470億ドル |
4位 | サウジアラビア通貨庁 | 6690億ドル |
5位 | クウェート投資庁 | 5920億ドル |
次に、世界のヘッジファンドのAUMをみてみます。
1位 | Bridgewater | 2120億ドル |
2位 | Millennium | 2080億ドル |
3位 | Citadel | 1490億ドル |
4位 | Pine River | 900億ドル |
5位 | Renaissance | 720億ドル |
次に、銀行の資産額をみてみます。
1位 | 中国工商銀行 | 3.89兆ドル |
2位 | 中国建設銀行 | 3.31兆ドル |
3位 | 中国農業銀行 | 3.19兆ドル |
4位 | 中国銀行 | 2.95兆ドル |
5位 | 三菱UFJFG | 2.75兆ドル |
中国ばかりですねw
年金基金のAUMランキングを見てみます。
1位 | Government Pension Investment | 日本 | 1.23兆ドル |
2位 | Federal Retirement Thrift | US | 4855億ドル |
3位 | National Pension | 韓国 | 4621億ドル |
4位 | ABP | オランダ | 4043億ドル |
5位 | National Social Security | 中国 | 3486億ドル |
ついでに、国の外貨準備高ランキングを見てみます。
1位 | 中国 | 3.09兆ドル |
2位 | 日本 | 1.21兆ドル |
3位 | スイス | 6789億ドル |
4位 | サウジアラビア | 5472億ドル |
5位 | アメリカ | 4059億ドル |
参考で、世界のGDPランキングを見てみます。
1位 | US | 18.56兆ドル |
2位 | 中国 | 11.19兆ドル |
3位 | 日本 | 4.93兆ドル |
4位 | ドイツ | 3.46兆ドル |
5位 | イギリス | 2.61兆ドル |
これまでみたことのない数値ばかりですが、これらの中でも日本から世界に存在感を出しているのがゆうちょ銀行です。
ゆうちょ銀行と聞くと、「民営化された国債で運用している銀行なんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが実はゆうちょ銀行、「銀行」とついているにもかかわらず、銀行としては致命的な「貸出」や損害保険の募集などが行えません。なぜゆうちょ銀行では貸出が行えないのでしょうか?
元々、ゆうちょ銀行が郵便貯金の受け入れという郵政省の業務を継承したもので、融資業務を行ってたことがありません。ただ、ゆうちょ銀行が新規に事業を行うには金融庁と総務省に認可を得ようければならず、2012年9月に認可申請を出したのですが、未だに認可される見通しが立っていません。
これは、全国銀行協会が「民業圧迫だ!」と言っているのと、金融庁が「郵便局に審査能力なんてあるという話は聞いたことがない。融資というのは簡単な話じゃない。」というので突っぱねているためです。(ただ、総務省は比較的前向きのようです。)
ですがゆうちょ銀行は、預金を預かっている以上鼻くそのような利子でも預金者に払わなければいけませんし、2015年に上場までしてしまったのでなんとかして収益をあげなければいけません。(逆にいうと超少ない利子でいいんですが。)
ここで、ゆうちょ銀行の収益の源泉であるポートフォリオを見てみます。
まず、決算短信がギリギリあった2008年を見てみましょう。193兆円という巨大なポートフォリオのうち、155兆円がなんと国債で占めており、他で一番大きかったのが地方債・社債です。(そのうち10兆円ほどが社債でした。)
日本株式にいたっては、9億円しかありませんw
次に、最新の2017年2Qを見てみましょう。すると、10年弱で207兆円に肥大化してしまいました。ですが、国債が半分以下の64.4兆円となり、外国証券等が54.6兆円、預け金等が52.7兆円、日本株式が2.1兆円となっています。
またクレジット投資については、現状パッシブが1~2割であるのを上げていく予定です。
預け金等とは、譲渡性預け金や買現先勘定、買入金銭債権、日銀預け金などのことです。
外国証券等とは、外国債券が21.1兆円、投資信託が33.4兆円となっています。
GPIFと日銀が国内株式を買っている一方で、外国債券や投資信託を買いあさっているのはとても興味深いなと思います。
また、オルタナティブ投資も積極的に行っており、すでに4965億円がヘッジファンドに投資されています。
投資先の格付けは、A以上が88.66%となっています。
ここまでポートフォリオを変えてきたのは、以下のチームです。
現在の役職 | 名前 | 元の役職 |
取締役兼代表執行役社長 | 池田 憲人 | 足利銀行頭取 |
取締役兼代表執行役副社長 | 田中 進 | 郵政省 |
佐護 勝紀 | ゴールドマンサックス取締役副会長 | |
取締役 | 長門 正貢 | シティバンク銀行取締役会長 |
中里 良一 | 日立ソリューションズ取締役 副社長執行役員 | |
執行役副社長 | 萩野 善教 | NTTデータ・ビジネス・システムズ代表取締役社長 |
専務執行役 | 村島 正浩 | 三井住友銀行大阪中央ブロック部長 |
松島 茂樹 | みずほ証券常務執行役員みずほインターナショナル会長米国みずほ証券会長 | |
志々見 寛一 | 三菱東京UFJ銀行コンプライアンス統括部長 | |
常務執行役 | 堀 康幸 | 郵政省 |
西森 正広 | 郵政省 | |
相田 雅哉 | 郵政省 | |
矢野 晴巳 | みずほ証券経営調査部長 | |
林 鈴憲 | 郵政省 | |
向井 理希 | 住友信託銀行市場金融部長 | |
執行役員 | 玉置 正人 | 三菱東京UFJ銀行執行役員市場企画部長 |
石井 正敏 | NTTデータ郵政システム事業本部長 | |
櫻井 重行 | 郵政省 | |
大野 利治 | 三井住友銀行本店上席調査役 | |
川﨑 ふじえ | 郵政省 | |
小藤田 実 | 三井住友銀行人材開発部部付部長 | |
尾形 哲 | 郵政省 | |
新村 真 | あずさ監査法人ディレクター | |
天羽 邦彦 | 損保ジャパン・アセットマネジメント株式会社運用部部長 | |
牧野 洋子 | 郵政省 |
郵政省出身者も多いものの、システムを作ってきた人や運用のプロなどを引っ張ってきています。
いかがでしたでしょうか?
ゆうちょ銀行と聞くと、「ただの国債で運用しているいけてなさそうな銀行」というイメージだったかもしれません。ですが実態は、207兆円という世界でも稀に見る規模のBSをもちかつ、そのBSの調達コストも預金なのでほぼゼロというとんでも無い運用会社という側面があることがわかりました。
今回は、ゆうちょ銀行のポジションとBSについて浅くまとめてみましたが、個人的に面白いと思ったので、今後はもっとゆうちょ銀行のポートフォリオについてがっつり深掘りしていき、気になったらまたまとめてみたいと思います。
(直のPE投資とかディストレス投資とかしないかなw)