Nike 1Q21決算:デジタル販売83%増、販促費の効率化で増益を実現

Nike 1Q21決算:デジタル販売83%増、販促費の効率化で増益を実現

決算まとめ

ナイキが9月22日に発表した2020年6〜8月期決算は、最終損益が15億ドルの黒字だった。前年比15%の増益である。

売上高は106億ドルで同じく1%の減収、為替固定ベースでは前年比フラットだった。税引前利益は17.2億ドルで、前年比10%の増益だ。

前四半期では売上を大きく減少させたナイキだったが、2020年6〜8月期は一転して回復し、営業利益は前年のピークを上回った。

足元でナイキがどのような状況にあるのか、決算報告の内容を整理しよう。

中華圏や日本はすでに成長基調に

まずは地域ごとの売上高を確認すると、新興国地域(アジア太平洋&中南米)を除いたすべての地域がコロナ禍以前の売上水準に回復している。

北米地域は42.3億ドル(前年比1.6%減)、欧州・中東・アフリカ(EMEA)は29.1億ドル(同4.9%増)、中華圏は17.8億ドル(同6.0%増)と、足元の環境を考えれば極めて堅調だ。

アジア太平洋&中南米については売上11億ドルと、前年比18%もの減収だった。おもに中南米や東南アジアの一部を中心に、回復が遅れているという。

CEOのジョン・ドナフーは「中華圏、EMEA、日本、韓国はすでに成長基調に戻った」とコメント。ナイキのブランドとしての強さに自信をのぞかせた。

デジタル事業は前年比83%もの増収

今回のナイキの業績を見る上で、やはり重要なポイントになるのが「デジタル販売」の急拡大だ。

2020年6〜8月期、ナイキのデジタル事業は前年比83%もの増収となった。パートナー経由を含めると、デジタルによる売上は全体の30%を占めるほどだ。これは前年同期と比べて10ポイントの上昇である。

ナイキのコマースアプリは、前年比200%増に近い成長となっており、月間アクティブユーザー数は前年比2倍を超えるペースで推移している。

売上だけでなく、大きく進捗したのがナイキのアクティブメンバー数だ。足元では60%近い成長となり、特に購入メンバー数の拡大が著しい。「連絡可能」なメンバー数についても二桁成長と力強い。

自社販路によるデジタル販売マーケットシェアも米国やEMEAの主要地域で拡大した。こうしたモメンタムに加えて、リアル店舗での売上が戻りつつあることで、足元の業績が実現している。

この第一四半期、『Nike Training Club』アプリでは50%を超えるメンバーがワークアウトを開始した。『Nike Running Club』についても、ダウンロード数が4か月連続で100万を超えるなど、人気が続いている。

DXによる追い風は「構造的な変化」に

ナイキのDX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なる業績の底上げにとどまらない「構造的な変化」を引き起こしている。

その筆頭は、デジタルを通じたメンバーシップデータの活用だ。

オンラインとオフラインを高度に連携させることでパーソナライズされた提案が可能になるほか、より効率的な在庫管理も可能になる。中でも機会が大きいのが、女性向けやアパレル品だという。

二つ目、さらにダイレクトな影響が「デジタル販売の方が卸売に比べてグロスマージンが高い」という点だ。その差は10ポイントにものぼるという。

規模を拡大するために物流キャパシティに投資する必要性はあるが、それによって「予測モデリング」ツールを進化させることができれば、顧客へのパーソナライズや在庫管理はさらに効率化できる。

そして三つ目は、マーケティング上の利点である。デジタル上のエンゲージメントを拡大して購買頻度が高まれば、ナイキは顧客獲得コストをトータルでみて改善することができる。

広告効率もさらに向上でき、これまでとは全く異なるデマンド・クリエーション(需要創出)投資が可能になるのだ。

実際のところ、これらの影響はすでに顕在化した。今四半期、ナイキのデマンド・クリエーション支出は6億7,700万ドルで、前年同期(10億1,800万ドル)と比べて3億4,100万ドルも小さい。

ナイキCFOのマット・フレンドは、より少ないブランド広告で大きなインパクトを実現できたとアピールする。パフォーマンス広告のエンゲージメントも高まり、ソーシャルメディア上のインプレッション数は50億回近くという記録的な水準に達した。

株価は高騰、時価総額1,455億ドル

デジタル事業への期待が高まってか、ナイキの株価は高騰している。

現在の時価総額は1,455億ドル。3月に急減した株価は、その後倍増した。

バランスシートをみると、手元の現金同等物は81.5億ドル、短期投資が13.3億ドルにのぼる。借入金は94億ドルだ。

CFOのマット・フレンドは、ナイキが1Qをキャッシュフローポジティブ、ネットキャッシュ(= 現金 - 借入)プラスで着地できたとアピールした。手元流動性は合計で130億ドルを超える。

足元の堅調さをうけて、ナイキは通期の業績予想を更新した。

売上高については前年比で二桁台前半の成長率に回復する見込みだ。需要の高まりは、パンデミック下でナイキが進めていた供給の絞り込みによって短期的に商品不足を引き起こすとのこと。

グロスマージン、販管費についても前年比フラットに落ち着く見通しだ。売上が増えて粗利率が変わらず、販管費も一定なのだから、ナイキは大幅な増益になる見込みという計算になる。

CEOのジョン・ドナフーが言った通り、パンデミックは強いものをより強くしていくのかもしれない。eBayやペイパル、サービスナウといったテクノロジー企業トップを歴任した経営者がナイキをどのように変革していくか、引き続き注目したい。