ソフトバンクビジョンファンドの構造とキーパーソンのRajeev Misraについてまとめる

2号ファンドを作ることでも話題になっているソフトバンクビジョンファンドですが、通常のファンドと異なり、少しばかり複雑な構造になっているようです。

そこで今回は、ソフトバンクビジョンファンドの構造についてまとめてみたいと思います。


ソフトバンクビジョンファンド設立の背景

ソフトバンクはこれまで、IRR44%という驚異的なパフォーマンスを出してきました。これは孫正義の目利き力の高さと言えますが、一方で投資をするための資金調達も大切です。ですが、孫正義はファイナンスについてはとても弱かったのですが、それを支えたのが優秀なCFOでした。

そして、CFOが変わるたびに資金調達方法も変わっています。例えば、北尾吉孝の時は株式による調達、次の笠井和彦・後藤芳光の時はデットによる調達、次の藤原和彦の時は証券化による調達を行なってきましたが、2013年にSprintを買収して以降は、もう資金調達が困難な状況でした。

そんな時にHead of Strategic Financeとして参画したのがRajeev Misraであり、そのRajeev Misraがファンドによる資金調達を助言したのがきっかけとして出来上がったのがソフトバンクビジョンファンドと言われています。


Rajeev Misraとは

Rajeev Misraとは、インドで生まれ、IIT Delhiを卒業したのち、ペンシルベニア大学で機械工学の理学博士号とコンピューターサイエンスの理学修士号、MITスローン経営大学院でMBAを取得します。

1991年から1997年までMerrill Lynchでデリバティブの取引に携わります。そして、1997年からドイツ銀行にて、投資部門の立ち上げと、クレジット・新興国市場のGlobal Headとなっています。ドイツ銀行時代にMisraは、不動産ローンに関するCDOなどでショートポジションを2006年から取り続け、最終的に15億ドルの利益を出しています。(この時の話が、マネーショートのモデルとなっています。)

そして、2009年からUBS Groupにてクレジットのヘッドや債券・通貨・商品に関する共同責任者となりますが、2014年からFortress Investment Groupのパートナーとなります。しかし、Fotressのパートナーも半年でやめ、ソフトバンクに入社します。


孫正義とRajeev Misraは、日本テレコムを買収した2004年から繋がりがあり、2005年に孫正義がインドを1週間ほど訪れた時に、案内するほどの仲となっており、2006年のボーダフォンの日本法人買収にも携わっています。

そして、2014年にNikesh Aroraの結婚式で再会したことをきっかけとして、ソフトバンクに参画しています。


ソフトバンクに参画してからRajeev Misraは、ソフトバンクビジョンファンドの資金調達やSprintで通信ネットワーク資産を売却してリースバックで資金調達したりしています。

(ソフトバンクビジョンファンドでサウジアラビアのSaudi ArabiaのPublic Investment Fundから資金調達する際に、大きな役割を果たしたのが、Rajeev Misraのドイツ銀行時代の同僚だった二人です。)


ソフトバンクビジョンファンドの資本構成

まず、ソフトバンクビジョンファンドの資本構成から見ていきます。

通常のファンドの場合、エクイティによる出資がほとんどです。

ですが、ソフトバンクビジョンファンドの場合、エクイティだけでなくデットによる調達も行なっています。

出典:Financial Timesより


例えば、最大LPであるSaudi ArabiaのPublic Investment Fundは、450億ドルを投資していますが、170億ドルについてはEquityで280億ドルについてはDebtとなっています。

他にも、Abu DhabiのMubadalaは、150億ドルのうち93億ドルがDebtとなっています。

これらのDebtは、年間7%の金利を支払われています。

なので、ソフトバンク以外のLPについては、62%については7%の金利がついた上で優先的に返済されることで、ダウンサイドリスクを抑えることができます。そこでさらに38%についてはアップサイドを狙うことができます。


一方ソフトバンクは、280億ドルをフルでEquityで入れており、リスクをとても取っています。


ソフトバンクビジョンファンドの成功報酬

ソフトバンクビジョンファンドの成功報酬は、通常のファンドの場合、AUMの2%と成功報酬の20%ですが、ソフトバンクビジョンファンドについては、AUMの0.7~1.3%、成功報酬も20%受け取ります。


ソフトバンクにおけるソフトバンクビジョンファンドの決算

最後に、ソフトバンクの決算におけるソフトバンクビジョンファンドの決算上の扱いについて見て見ます。

ジャフコでは、ファンドについては連結化されていませんが、ソフトバンクの決算においてソフトバンクビジョンファンドは、全て連結対象となります。この違いについては、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」でわかります。

そのため、会計上でもソフトバンクは、1000億ドルを得たことになります。


まず、BSを見てみると、ソフトバンクビジョンファンドの外部投資家持分が非流動負債となっており、ソフトバンクビジョンファンドからの出資分も非流動資産となります。


次に、PLを見てみると、営業利益にソフトバンクビジョンファンドの売却による実現損益、未実現評価損益、利益配当収益が含まれています。

そして、営業費用として外部投資家持分の増減が含まれています。


次に、キャッシュフロー計算書を見てみると、ソフトバンクビジョンファンドに関する色々な数値が含まれています。


まとめると、以下のようになります。


いかがでしたでしょうか。

ソフトバンクビジョンファンドは、1000億ドルのファンドということで、その投資先に目がいきがちですが、そもそもの仕組みや裏でサポートしていた人もかなりの大物でした。

今後もRajeev Misraとソフトバンクビジョンファンドから目が離せません。