日本の「通信と放送の融合」の歴史(10年前に楽天・ライブドアでできなかったことをサイバーエージェントでできるようになるまで)

Time WarnerのM&Aの歴史をみていた時に出てきた、「通信と放送の融合」というのが懐かしいなと思い、日本の「通信と放送の融合」の歴史をまとめてみようと思います。(もしかしたら死語かもですね…)


そもそも「通信と放送の融合」とは何か。

「通信と放送の融合」とは、今でこそインターネットの普及により通信業界と放送業界の境目が曖昧になっていますが、盛んに言われていた2005年時点の法律では、通信を「特定者間の双方向型情報交換」、放送は「公衆向け一方向型情報発信」とされていて、要するに「通信」は「インターネット」で放送は「テレビ・ラジオ」を指しており、「インターネット」で「テレビ・ラジオ」を見れたり聞けたり、「テレビ・ラジオ」で直接インターネットサービスが使えるようにすることです。

具体的な内容については、当時の楽天とTBSの提携からもわかります。

(ワンセグ懐い…)


最後の写真から面白いなと思うことがあります。

それは、ワンセグによってテレビ広告は伸びる一方で、インターネット広告が伸びないという前提に立っていることです。

ただ実態は、テレビ広告は伸びるどころか低迷している一方で、インターネット広告は伸び続けています。


ここで、日本における通信と放送の融合の歴史をまとめてみようと思います。

時期 通信 放送 形態
2002年 楽天 USEN 「ShowTime」開始
2005年 ライブドア ニッポン放送 ライブドアによる敵対的買収(失敗)
2005年 楽天 TBS 楽天による買収(失敗)
2005年 フジテレビジョン 「FOD」開始
2005年 TBS 「TBSオンデマンド」開始
2005年 USEN 「Gyao」開始
2006年 ドワンゴ 「niconico」開始
2007年 USEN 「GyaO NEXT」開始
2008年 日本放送協会 「NHKオンデマンド」開始
2008年 CCC 「TSUTAYA TV」開始
2008年 NTTぷらら 「ひかりTV」開始
2009年 NTTドコモ
エイベックス・デジタル
「BeeTV」開始
2009年 テレビ朝日 「テレ朝動画」開始
2009年 楽天 「ShowTime」買収
2009年 ヤフー USEN 「Gyao」をJVに
2010年 日本テレビ放送網 「日テレオンデマンド」開始
2011年 ソニー 「PlayStation Video」開始
2013年 「テレビ東京ビジネスオンデマンド」
2014年 日本テレビ放送網 「hulu」買収
2014年 日本テレビ放送網 「日テレ無料TADA!」開始
2014年 TBS 「TBS FREE」開始
2015年 サイバーエージェント テレビ朝日 「AbemaTV」をJVで開始
2015年 Netflix 「Netflix」開始
2015年 日本テレビ
テレビ朝日
TBS
テレビ東京
フジテレビジョン
「TVer」開始
2015年 フジテレビジョン 「+7」開始


ソフトバンクによるテレビ朝日への敵対的買収も入れようかと思いましたが、とりあえず外しました。


「通信と放送の融合」が盛んに言われ始めた2005年当時は、通信による放送の買収が主で失敗しましたが、それ以降はそれぞれの企業がそれぞれで模索、最終的に両者が融合したのは、ライブドアや楽天の買収合戦から10年後の2015年にサイバーエージェントとテレビ朝日の合弁として開始した「AbemaTV」でした。

では、「AbemaTV」ができるまでの10年間、放送と通信会社の時価総額はどうなったのでしょうか。


放送では、日本テレビが3%増、TBSが36%減、フジテレビが39%減、テレビ朝日が31%減、テレビ東京が49%減になっている一方で、通信では、楽天が2倍、サイバーエージェントは3.2倍になっています。

また、合計の時価総額では、放送の時価総額は2.2兆円から1.6兆円になっている一方で、通信の時価総額は1兆円から2.2兆円にしています。(ってかそもそも放送全て足しても楽天以下ですね…)


歴史に「タラレバ」は厳禁ですが、もし仮に放送がどれかの通信に買われていたらどうなっていたのか。(現状は法律の改正によって難しそうですが…)

不動産屋と化している放送も多々あるようですが、もっと楽しい番組が見れたり、確度の高い広告を打てていたかもしれないし、はたまたAOL Time warnerのように分離していたかもしれません。

ただ、ライブドアや楽天が夢半ばで頓挫してから10年たった今、サイバーエージェントとテレビ朝日が「AbemaTV」というサービスによって、通信と放送が本当に融合できるのかどうなるかが実証されようとしています。

果たしてどうなるか。

とても楽しみです。