ベンチャー投資だけじゃない?莫大な含み益を抱える産業革新機構の投資先

産業革新機構とは、「INCJ(インクジェー)」や「産革」とも呼ばれることもありますが、2009年に政府と民間企業の共同出資でできたファンドで、最大で2兆円ものお金を動かすことができます。

これまでに、1兆円弱の資金を投資をしてきています。


そんな産業革新機構には大きく5つの種類の投資があります。

・ベンチャー企業への投資

ベンチャー企業に投資しています。領域は、IT企業だけでなく、大学発ベンチャーなどに1件当たり数十億円単位で投資しています。代表的な例が、Sansanやコイニーなどがあります。

・VCのLP投資

FoF(ファンドオブファンズ)として、複数のベンチャーキャピタルに投資しています。代表的な例が、WiLやグローバルブレインやインキュベイトファンドなどがあり、630億円弱を投資しています。

・スピンアウトへの投資

大企業の不採算事業を外に出すときに投資します。ただ、一部は自社で買い戻すこともあります。

代表的な例が、東芝とソニーと日立の中小型液晶事業を統合したジャパンディスプレイ、アルプス電気からのアルプス・グリーンデバイスなどがあります。

・企業再生への投資

倒産しそうな企業に投資することがあります。代表的な例が、ルネサスエレクトロニクスなどがあります。

・大企業との共同買収

大企業が海外企業を買収するときに、代表的な例が、東芝によるランディスギアの買収などがあります。


そんな産業革新機構の投資先ですが、以下です。

いくつか既にEXIT事例も出ています。

会社名 投資額(上限) 領域 EXIT
ダイナミックマップ基盤株式会社 13.4 IT
株式会社フロムスクラッチ 15 IT
株式会社シーディーアイ 8 ヘルスケア
株式会社ファームノートホールディングス 5 IT
オスカーテクノロジー株式会社 2 IT
株式会社スコヒアファーマ 70.5 バイオ
リンクウィズ株式会社 4 IT
Harmonic Drive AG 137.8 部品
edotco Group Sdn Bhd 440 通信
Chaucer Food Group 49.5 食品
Treasure Data Inc. 11 IT
株式会社キュラディムファーマ 10 バイオ
株式会社ABEJA 5 人工知能
アトナープ株式会社 8.25 産業機械
株式会社三次元メディア 8 IT
株式会社日本エンブレース 4 ヘルスケア
ステラファーマ株式会社 35 バイオ
住化積水フィルムホールディングス株式会社 16.5 素材
株式会社インキュベーション・アライアンス 7 素材
ASTROSCALE PTE. LTD. 30 宇宙
テックアクセル1号投資事業有限責任組合 35 LP
SOINN株式会社 2.5 人工知能
株式会社F.TRON 9 セキュリティ
ユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社 60.2 LP
株式会社ユニバーサルビュー 3 ヘルスケア
株式会社エルテス 3 セキュリティ IPO
レナセラピューティクス株式会社 9 バイオ
株式会社スマートドライブ 6.6 自動車
株式会社イノフィス 6.5 ロボット
ナノミストテクノロジーズ株式会社 5 産業機械
株式会社フローディア 8 半導体
EEIスマートエナジー投資事業有限責任組合 50 LP
株式会社GRAアグリプラットフォーム 3.5 農業
スペクトロニクス株式会社 7.5 産業機械
KBI Biopharma Inc. 48.4 バイオ JSRに売却
けいはんな学研都市ATRベンチャーNVCC投資事業有限責任組合 25 LP
クオンタムバイオシステムズ株式会社 33 バイオ
インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合 50 LP
株式会社ジャパンマルチメディア放送(BIC株式会社より名称変更) 10 放送
SCIVAX株式会社 6.6 産業機械
株式会社K-engine 20 建築 LIXILに売却
WHILL Inc. 9 電動車椅子
アグラ株式会社 6 IT 豆蔵HDに売却
オーマイグラス株式会社 9 メガネ
株式会社JOLED 液晶 ジャパンディスプレイに売却
株式会社NejiLaw 7 部品
QUADRAC株式会社 7 金融
Cloudian Holdings Inc. 16.5 IT
Administração e Gestão de Sistemas de Salubridade 水道
マイクロ波化学株式会社 8
株式会社クリエイトワクチン 2.83 バイオ
Sansan株式会社 7.5 IT
カスタマー・コミュニケーションズ株式会社 4 IT
Carter Holt Harvey Pulp & Paper Limitedグループ 369.2 製紙
株式会社マテリアル・コンセプト 6 素材
株式会社Trigence Semiconductor 10 半導体
株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 9 食品 IPO
株式会社シフトワン 9 IT
スキューズ株式会社 5 ロボット
NapaJen Pharma, Inc. 23.1 バイオ
リファインバース株式会社 5 産業廃棄物処理 IPO
WiL Fund I, L.P. 110 LP
カンボジア救命救急センター(Sunrise Healthcare Service) 16.8 ヘルスケア
グローバル・ブレイン5号投資事業有限責任組合 100 LP
MedVenture Partners株式会社 60 LP
コイニー株式会社 10 金融
UTEC3号投資事業有限責任組合 100 LP
株式会社ロイヤルゲート 10 金融 日ノ樹に売却
スマートインサイト株式会社 15 IT 内田洋行に売却
Zeptor Corporation 7.92 電池
ユニゼオ株式会社 6 素材
株式会社メガカリオン 30 バイオ
株式会社JTOWER 9 電力
アジアンベイシス株式会社 20 EC
株式会社アパレルウェブ 3
株式会社IP Bridge及び当該会社が組成・運営する知財ファンド 27.5 LP
株式会社エクスビジョン 1.8 半導体
株式会社PRISM Pharma 10 バイオ DBJキャピタルに売却
Mido Holdings Ltd. 22 IT MBO
株式会社アクアセラピューティクス 9.5 バイオ アクアに売却
Solar Holding S.R.L. 電力 Sonnedix Italiaに売却
株式会社日興テキスタイル 30 アパレル アイ.エス.テイ
Wireless Glue Networks Inc. 4.5 IT Synaptica Networksに売却
株式会社Orphan Disease Treatment Institute 20.1 バイオ
アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社 5 バイオ
ルネサスエレクトロニクス株式会社 1383.5 半導体
株式会社中山アモルファス 15 素材
Transphorm, Inc. 27.5 半導体
株式会社セレブレクス 8 半導体
株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン 100 電池 クレハに売却
リプレックス株式会社 7 IT カシオに売却
富士フイルムイメージシステムズに売却
Nistica, Inc.
株式会社グロザス 12 ニフティに売却
スフェラーパワー株式会社 11.5 電力 京セラに売却
株式会社出版デジタル機構 150 電子書籍 出版デジタル機構に売却
メディアドゥに売却
Seajacks International Ltd. 電力
音声検索技術のインキュベーション 0.6 IT
ユニキャリア株式会社 300 フォークリフト 三菱重工フォークリフト&エンジン・ターボホールディングスに売却
ニチユ三菱フォークリフトに売却
株式会社ファルマエイト 5.5 バイオ 破綻
株式会社ジャパンディスプレイ 2750 液晶 IPO
株式会社All Nippon Entertainment Works 60 エンタメ フューチャーベンチャーキャピタルに売却
ランディス・ギア 550 メーター IPO
Miselu Inc. 16 楽器 MBO
衆智達 30
Peach Aviation株式会社 42 ANAに売却
株式会社JEOL RESONANCE 15 日本電子に売却
JRIに売却
株式会社中村超硬 15 IPO
日本インター株式会社 40 半導体 京セラに売却
株式会社アネロファーマ・サイエンス 42 バイオ
Aguas Nuevas 水道
国際原子力開発株式会社 0.2 原発
エナックス株式会社 45 電池 積水化学工業に売却
知財ファンド「LSIP」(エルシップ) 10 LP
TRILITY 60 水道
株式会社GENUSION 26 半導体 破綻
ゼファー株式会社 17 風力発電 電気興業に売却
アルプス・グリーンデバイス株式会社 100 素材 アルプス電気に売却


EXIT事例の中でも注目すべき事例が4つあります。


・ランディス・ギア

東芝とともに買収しましたが、東芝の方針転換によりスイスに上場することになりました。

東芝と買収した時は、550億円を投資していましたが、今回のIPOに伴い527億円もの利益を得ています。


・Peach Aviation

3つあるLCCの中でも唯一成功し、黒字にもなっているPeach Aviation。

Peach Aviationは、ANAやファーストイースタン・インベストメントグループの3社によって2011年に設立された会社で、33.3%を42億円で投資していました。

2017年2月に保有していた株式の一部をANAが買い取ったことで、120億円もの利益を得ています。


・ルネサスエレクトロニクス

元々は、日立製作所と三菱電機の半導体事業を統合してできたルネサステクノロジとNECから分離したNECエレクトロニクスが統合したことによって設立されたのが、ルネサスエレクトロニクスでした。

しかし、リストラが進まなかったことや東日本大地震などによって膨大な赤字をだし倒産間際になったところで、産業革新機構と民間企業などから75%を1500億円で投資していました。

75%の中でも69.2%が産業革新機構で、1383.5億円を投資しましたが、2017年6月に一部を2600億円で売却し、2200億円の利益を得ています。ただ依然として50.1%を保有しており、含み益は7700億円近く抱えています。


・ユニキャリア

ユニキャリアは、日立建機と日産自動車のフォークリフト事業を統合して、2012年に設立された会社で、53%を300億円で投資していました。

2016年3月に三菱重工フォークリフト&エンジン・ターボホールディングスとニチユ三菱フォークリフトに売却することになり、283億円もの利益を得ています。


いかがでしたでしょうか。

確かにベンチャー投資では損失を出しているかもしれません。

しかし、スピンアウトと企業再生への投資で莫大な利益を既に確保している産業革新機構への評価は、もう少し高くてもいいのではないでしょうか。