ピボットしたブラックベリー

ブラックベリー・リミテッド

ブラックベリー社はカナダオンタリオ州に本社を構え、Enterprise of Thingsとして企業向けにセキュリティーソフトなどを販売しています。かつて社名はResearch in Motionという社名でモバイルOSと通信機器メーカーで、企業向け及び個人向けに端末を販売していました。業界関係者はみんなRIM(リム!リム!)と言っていたのが記憶に新しいです。2007年頃になるとiPhone、AndroidOS端末、マイクロソフトのWindows Phoneなどが新しく出現し始め、当時のモバイルアプリエンジニアやサービス提供者は従来のガラケー向けサービスに付け加え、さらに台頭してくる端末それぞれにサービスを対応しなければならず、大変な次期でした。そのなかでもブラックベリーのアプリストアである、AppWordにはビジネスマンを対象にしたアプリが多かったようです。

ブラックベリー端末は米国の金融機関、政府関係者、ビジネスマンやハイエンドな人に沢山使われており、ブラックベリーを持っていることが一種のステータスでブラックベリーの端末を持っていることがとてもクールな時代でした。オバマ大統領も2008年の就任以来2016年までセキュリティー上の理由からアメリカ国家安全保障局にブラックベリーしか使用許可が降りておらず、またイギリスのキャメロン首相など他の国のトップもブラックベリー端末を利用するなど安全面には優れた端末でした。金融機関やハイエンドビジネスマンに普及した理由はこのセキュリティーにすぐれた点が理由の一つのようです。あまりの人気さに多くの人がブラックベリー端末に熱中する事をCrackという種類のコカインにもじって「CrackBarry」という造語が作られる程でした。


業績:

売上は2006年には20億ドル規模でしたがBlackBerry端末がヒットして2011年の199億ドルまで急成長しました、しかしiPhone, Androidなどの端末が主流となり急速に衰退し2016年に21億ドルまで減少しています。


(出所: 10K)


携帯端末のハードウェア事業からソフトウェア事業へのピボット。 

上の売上の推移からも見て分かるように、2011年のピーク後は2016年まで急激に売上は減少しています。従来のハードウェアの製造などはFoxconnなどにアウトソースしたり、BlackberryのブランドIPをインド、中国、インドネシアなどの新興国の製造業企業にライセンスしたりと、ハードウェアビジネスからExit(脱却)を図っています。2011年頃から急速に売上が下がる中、2015年にはハードウェアビジネスの売上はソフトウェアビジネス売上を下回っており、同社は元々得意分野であったソフトウェアを中心に「ソフトウェア企業」として再復活を図ろうとしています。

(出所: 10K)


Enterprise of Thingsとは。

ブラックベリー社のInvestor Presentationの中を見るとEnterprise of Thingsという言葉がでてきます。マッキンゼーのレポートによるとIoTの市場は2025年までに$4 trillion(約400兆円)規模になるとしており、そのうちの70%はB2B市場(ヘルスケア、物流、交通、エネルギー業など)が牽引するとしています。このセグメントを同社はEnterprise of Thingsとして捉えこの分野の情報セキュリティー分野に注力していくようです。


(出所: Investor Presentation)


端末事業からソフトウェア、情報セキュリティー事業へのシフト。

(出所: Investor Presentation)