ビル・ゲイツ氏も出資!完全植物性の人工肉を製造する「Beyond Meat」が新規上場

ビル・ゲイツ氏も出資!完全植物性の人工肉を製造する「Beyond Meat」が新規上場

完全植物性の人工肉を製造する「Beyond Meat」(ティッカーシンボル: BYND)のNASDAQ上場が承認されました。(上場申請資料

「Beyond Meat」はベンチャーキャピタル「KPCB」やビル・ゲイツ氏らが出資していることでも注目を集めた企業です。

「ビーガン」の創業者が環境問題に取り組むために設立。売上は3Q18累計で5,642万ドル

Beyond Meatの創業者はメリーランド州生まれのEthan Brown氏です。彼の父は農家で、幼少期は多くの時間を実家の農場で過ごしました。環境問題に関心のあったBrown氏は再生エネルギー企業「Ballard Power Systems」で社会人生活をスタート。10年以上勤務し、マネージャーを務めるなどキャリアを積み重ねていきます。

しかし、太陽光エネルギーやリチウムイオンバッテリーの開発に取り組む中でBrown氏は自分たちがある事実を見逃していることに気が付きます。それは「温室効果ガスの18%〜51%が畜産業(livestock industry)に由来している」ということ。

Brown氏はもともと卵や乳製品も含めて一切の動物食品を口にしない「ビーガン」でした。実家の農場に帰って物思いに耽っていたとき「ディナーにされてしまう動物とペットの間にどんな違いがあるんだろう?」という考えに至ります。環境問題と動物保護という2つの課題に取り組むため、2009年に人工肉を製造する「Beyond Meat」を創業しました。(上場申請資料"History"より)

創業の翌年には地元・メリーランドに工場を建設し、ミズーリ大学やメリーランド大学と共同研究を開始。ホールフーズやクローガーなど大手スーパーマーケットでの販売によって人気に火が付き、現在ではアメリカ国内での取扱店舗が2.8万店舗にまで増加しました。

2017年の売上は3,258万ドル、2018年3Qまでの累計では5,642万ドルまで業績が拡大しています。営業利益は出ておらず、2,000万ドルほどの損失を計上しています。

『Beyond Burger』発売で冷凍食品から生"肉"へ売上構成が大幅にシフト

Beyond Meatが製造するのは牛肉の主成分を植物で代替した"完全植物性"の人工肉です。

大学との共同研究によってBeyond Meatは、牛肉に含まれる「タンパク質」「脂肪」「水」そして「微量ミネラル(Trace Minerals)」の4要素が植物から得られることを発見しました。

えんどう豆を原材料とする「Pea Protein」を乾燥・ブレンドし、押出機(Extruder)を使って整形。製品サイズに切り分けた後に冷凍し、パッケージに包装して出荷します。

Beyond Meatの製品は主に4種類。

最初は冷凍食品である「鶏の切り身(風の製品)」や「牛挽き肉(風の製品)」の販売からスタート。2016年からは生肉である『Beyond Burger』を発売し、最近ではソーセージも人気となっています。

『Beyond Burger』の栄養素を動物肉と比較してみると、なんとタンパク質の含有量は上回っています。また、製造時に環境コストを大幅に削減していることもBeyond Meat製品の大きな特徴です。

Our Impact

通常のビーフバーガーと比較すると、『Beyond Burger』の製造に必要な水源や土地、温室効果ガスをそれぞれ90%以上削減できるとのこと。電気などのエネルギー量についても46%の削減が見込めるようです。

『Beyond Burger』の販売が急増したことにより「Fresh(生肉)」の売上が大幅に増加。2018年3Q時点で売上の9割以上を占めており、「Beyond Meat」の成長を牽引していることがわかります。

販売チャネルを拡大し、顧客レストラン数が1万以上に増加

Beyond Meatの製品は主にホールフーズやクローガー等の小売店で買うことができます。

生肉製品である『Beyond Burger』は肉ではない食べ物として初めて「肉売り場」に陳列された製品としても話題となりました。Beyond Meatは販売チャネル拡大に取り組んでおり、レストランをはじめとする数多くの飲食店を顧客に抱えています。

ハーバード大学やロサンゼルス・エンゼルス、ホテルや医療機関等も含め、顧客数は1万以上に。海外進出も開始しており、ヨーロッパや韓国、南アフリカなどで顧客を獲得しています。

収益の中核を担う小売店向けの売上は3,717万ドルほど。レストラン等の飲食サービス向け販売が加速しており、2018年3Q累計で1,925万ドルと売上全体の30%を占めるまでに増加しています。

植物性肉の市場規模は64.3億ドルに拡大。食肉産業全体1.4兆ドルの巨大市場も見据える

Beyond Meatは人工肉製造にかかる売上原価がコストの大半を占めており、現在は82.8%ほどとなっています。販促費率が41.0%、研究開発費が11.1%で、いずれも売上規模の拡大に伴って改善傾向にあります。

バランスシートもチェックしてみましょう。

総資産1.1億ドルに対して現金同等物は4,978万ドル、工場などの有形資産が2,800万ドルとなっています。調達原資のほとんどは転換優先株が占めており、1.7億ドルほど。銀行借入による調達も行なっています。

営業キャッシュフローは当然ながらマイナスで、資金調達を繰り返しながら積極的な営業活動を行なってきたことがわかります。

持株比率を見てみると、「KPCB」が16.1%を保有しており、割合が最も大きくなっています。このほか、ビル・ゲイツ氏やレオナルド・ディカプリオ氏も出資者に名を連ねています。

Meat Substitutes Market worth 6.43 Billion USD by 2023

植物性肉の市場規模は現在46.3億ドルで、2023年には64.3億ドルまで拡大することが見込まれています。Beyond Meatは食肉産業全体に成長ポテンシャルがあると捉えており、アメリカ国内では2,700億ドル、世界全体では1.4兆ドルという巨大市場。

ビーガン文化の浸透とともに彼らの成長がどこまで加速していくのか、今後の動向が楽しみです。

参考

Tokyo Vegan

日本エシカルヴィーガン協会