仮想通貨交換業の申請で株価13倍!Q&Aサービスへのブロックチェーン導入を目指す「オウケイウェイヴ」

オウケイウェイヴ

今回は、名古屋セントレックスに上場している「オウケイウェイヴ」についてまとめてみたいと思います。

オウケイウェイヴといえば、Q&Aサイト「OKWave」のイメージが強い会社です。

なんとなく、「ヤフー掲示板」「教えて!goo」の亜種のような印象を持っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、そのオウケイウェイヴの株価が今、大きく高騰しています。

ヤフーファイナンスより)

2017年12月29日時点での株価終値は581円でしたが、年明けから高騰。5月7日には年初来高値として8,060円もの株価に。時価総額は585億円ほどに拡大しています。

わずか4ヶ月ちょっとで13倍以上に株価が膨れ上がったわけですから、これはとんでもないことです。

今回のエントリでは、オウケイウェイヴとはそもそもどんな会社なのか、歴史や事業を整理した上で、どうしてこんなに投資家の期待を集めているのかについて考えてみたいと思います。


ホームレスからの一念発起で創業した「OKWAVE」

創業者・兼元謙任氏の生い立ち

創業者の兼元謙任(かねもと・かねとう)氏は、1966年、愛知県名古屋市生まれ。

在日韓国人3世(現在は帰化)としての生い立ちからいじめに遭ったり、神経性の難病「ギラン・バレー症候群」を発症し、入退院を繰り返すなど、子供の頃からかなり苦労されたようです。

1990年に愛知県立芸術大学美術学部を卒業したのち、デザイン会社や建設塗装会社などに勤めながら、大学時代に始めたデザイングループの活動に没頭。

1997年、デザイングループでの起業を企図して会社を退職するも、仲間が離れ、結局起業できずじまいに。

奥さんからも離縁を言い渡されるもなんとか積極し、東京で仕事を探すことに。

しかし仕事は見つからず、途方にくれた結果、兼元氏はホームレス生活を余儀なくされます。

数ヶ月、どん底の生活が続いたものの、一念発起して、公園を寝床にしながらも知人の社長に仕事をもらい、デザインやウェブの仕事を受注するように。

OKWaveの始まり

ある時、仕事で詰まったところをインターネット上で質問すると、無礼だと怒られてしまったとのこと。

「気軽に尋ね、教えてくれるサイトがあればいいのに」という着想から思いついたのがオウケイウェイヴのアイデアです。

兼元氏は、ホームレス生活をしながら稼いだお金の多くを奥さんの元に送っていました。

事業計画を奥さんに相談すると、「このお金を使っていいよ」と400万円もの貯金を受け取り、1999年7月にオウケイウェイヴを設立。

一般ユーザー向けにQ&Aサイト「OKWave」の運営を開始すると、ユーザーからウェブ上のQ&Aサービスを使いたいとリクエストされたことから、企業向けに顧客の問い合わせ情報を共有するシステムを販売するようになります。

ちなみに、「OKWave」というサービス名は「Oshiete」「Kotaeru」からきているそうです。


ここ9年間の業績推移を見てみましょう。

2012/6期までの売上は横ばいでしたが、2013/6期に売上がドカンと増え、2014/6期には30億円を超えています。

その後は緩やかに低下し、直近では売上24億円、経常利益1億8288万円となっています。


参考ページ

「元ホームレス社長」の強さの理由--兼元謙任(オウケイウェイヴ社長)

「元ホームレス社長」兼元氏なぜ上場企業をつくれたか(NIKKEI STYLE)

誰か一人、「スゲー」と思える人を真似てみる


前期までオウケイウェイヴが展開していた3つの事業

Q&Aサービス「OKWave」から事業を開始したオウケイウェイヴですが、現在はその他に大きく2種類の事業を展開しています。

(後に述べますが、今期は大きく様変わりしているので厳密には2017/6期までの事業です)

二つ目の事業は、前述したエンタープライズ向けの受託販売であり、主にFAQシステムを企業向けに提供しています。

三つ目は、グループ企業「ブリックス」で展開する多言語CRM事業。

具体的には、電話やテレビ通訳を行うことができる通訳センター、窓口での通訳請負業務、その他通訳者の派遣などを提供。

その他にも、外国語研修や外国語講師派遣、AI通訳なども展開しているようです。


三つの事業の売上高を見てみましょう。

「OKWAVE Premium」「OKWAVE Professional」などを展開していた「ナレッジマーケット」セグメントは、2016/6期より「ソーシャルメディア」セグメントに統合。

子会社ブリックスが展開していた営業アウトソーシング事業は、2015/6期を最後に終了しています。


セグメントごとの損益も見てみましょう。

セグメント利益が最も大きいのは「エンタープライズソリューション」で、6億8249万円の利益をあげています。

続いて、「多言語CRM」が1億6098万円。

創業事業である「ソーシャルメディア」事業は、2808万円の赤字となっています。

ナレッジマーケット事業(現在はソーシャルメディア事業に統合)の赤字を縮小し、エンタープライズソリューション事業が成長していることが、ここ数年の利益率改善につながっています。


エンタープライズソリューション事業

オウケイウェイヴの稼ぎ頭に成長した「エンタープライズソリューション」事業は、FAQの作成から編集、公開までの一連の流れを搭載し、特許技術も有する「OKBIZ.(オウケイビズ)」などを展開。

ビジネスモデルとしては、「OKBIZ」導入の際の初期構築費と月額利用料、利用量に応じた従量課金を徴収するという構造。


財政状態

続いて、オウケイウェイヴの財政状態についてチェックしてみます。

総資産は18.5億円あり、そのうち現預金は8億円ほど。

全体の規模に対して考えると、比較的キャッシュリッチであり、インターネット企業らしいバランスシートと言えます。

資産の源泉である負債と純資産の項目を見てみます。

資本金と資本剰余金の合計が19.4億円と、バランスシート全体のほとんどを占めています。というか、総資産よりも大きい。

利益剰余金は4億3860万円のマイナスと大きく、ここ4年で見ると減少しているものの、累計で利益を生み出すには至っていないようです。

キャッシュフローの推移を見ると、営業キャッシュフローは例年、1.5億円から2億円ほどの年が多くなっています。

しかし、投資キャッシュフローも大きく、全体としてはキャッシュフローがマイナスになる年が多いようです。

中でも2013/6期と2014/6期は無形固定資産の取得に大きな投資を行っており、フリーキャッシュフローもマイナスとなっています。


今期の状況と今後の展望

以上、オウケイウェイヴの決算数値を見てきましたが、フリーキャッシュフローは安定していないし、売上は減少しているしで、全体としてはとてもいい状況とは言えません。

過去3年のフリーキャッシュフローを平均すると8791万円ですから、時価総額585億円というのは、その665年分の値段が付いていることになります。

これでは永遠に元が取れません。


オウケイウェイヴに投資している人たち(投機家?)は、一体何に期待して株を購入しているのでしょうか。

まずはグループの概況ですが、エンタープライズソリューション事業は国内の銀行トップ5社が導入しているんですね。これは強い。

そして、スライドの下半分には「ABCテクノロジー」というワードが書いてあります。

「A」は、人工知能(AI)のこと。

3600万件を超えるQ&Aデータを学習し、意図・概念の把握から高度画像解析まで行い、AIエージェント「あい」を作っています。

ウェブサイトで質問できるようなので、実際に質問してみました。

普通にOKWAVEに誘導されてしまいました。。


ブロックチェーン・カンパニーへの転身?

さて、ABCテクノロジーの「B」は、ブロックチェーンです。

『YEBISU』は、ブロックチェーンをベースにした知識流通システムだそうです。

テックビューロ社(仮想通貨取引所『zaif』運営)が開発したプライベート・ブロックチェーン技術「mijin」を利用。

ブロックチェーン技術を基盤とした知識流通システム『OKWAVE YEBISU』を開発

「コンテンツホルダー間で共有可能なセミパブリックのコンソーシアム型のブロックチェーン」だそうで、強みとして以下を挙げています。

・ブロックチェーン上に権利データが記録されることによる、強固なセキュリティとゼロダウンタイムの実現

・コンテンツ管理システムを共通インフラとして活用可能

・権利データの管理・受け渡し、仮想通貨決済、ユーザー認証の一元化

・ライセンスの不正利用などに対する強固なセキュリティ


アメリカでは、ブロックチェーンに関するプレスリリースを出すと株価が上昇すると言われていますが、オウケイウェイヴもそうした企業の一つということでしょうか?

しかし、このプレスリリースは2016年9月ということでかなり前ですね。むしろ、昨年のブロックチェーンブームよりも前です。


2017年11月以降、次のようにブロックチェーン関連のプレスリリースを次々に出しています。

シンガポールのICO事業者Wowoo Pte.とICO実施に向けて検討を開始(2017年11月28日)

「感動の可視化」ICOソリューション「Wowoo」の評議会に 仮想通貨業界の第一人者ロジャー・バー氏を招聘(2017年12月4日)

「感動の可視化」ICOソリューション「Wowoo」の評議会に中国のパブリック・ブロックチェーン・プロジェクトNEOのCEOを招聘(2017年12月14日)

ホワイトペーパーなどの『ICO翻訳』サービスの提供を開始(2017年12月18日)

「世界は逆転する! 仮想通貨サービス・ICOで世界を変える」刊行(2017年12月22日)

仮想通貨交換業の登録申請に関するお知らせ(2018年1月11日)

『仮想通貨の確定申告の税理士紹介窓口』を開設(2018年1月15日)

当社子会社OKfinc LTD.とGFA Capital、ICOコンサルティングに関する業務提携に向けて基本合意契約を締結(2018年1月19日)

「仮想通貨・ブロックチェーン企業限定 合同企業説明会」に参加(2018年2月23日)

オウケイウェイヴとみんかぶ、情報サイト『仮想通貨投資の始め方』を開設(2018年4月18日)


中でも注目すべきは1月11日に仮想通貨交換業の登録申請を出している点でしょうか。

ヤフーファイナンスより)

株価の推移を見てみると、リリース翌日に18%、その次の日に16%と連日の高騰となっています。

やはり、このリリースが発端だったようです。


先ほどのプレスリリースをよく見てみると、仮想通貨をサービス上で取り扱うこと、ICO(Initial Coin Offering)の実施を検討していることが述べられています。

具体的には、Q&Aサイト「OKWave」に有料で専門家に質問できる機能をブロックチェーンで導入するのが目的。そのためのICOも。

ユーザーは回答に対してトークンを支払うことで、質問と回答の価値を評価することができ、ブロックチェーンによって認証を行うことが特徴。


また、このリリース以降も仮想通貨・ブロックチェーンに関するプレスリリースを連日のように後悔しています。

中でも、マレーシアの子会社がブロックチェーンに関する開発案件を受注したというニュースはすごいですね。

(2018/04/04)子会社による開発案件の受注に関するお知らせ

これにより、前期の連結売上の40%(10億円くらい)を超える売上になるとのこと。受注金額は公表できないとしていますが、そのくらいの金額だったんでしょうね。


その結果、業績予想は大幅な上方修正を発表しています。

(2018/04/04)業績予想の修正に関するお知らせ

なんかものすごいことになっていますね。

今後オウケイウェイヴがどのようになっていくのか、引き続きチェックしていく必要がありそうです。


ちなみに、ABCテクノロジーの「C」はチャットテクノロジーだそうです。