1758年創業の「岡田屋」が発祥!業績拡大もFCFはマイナス、借入金を増やし続けるイオングループ

イオン

今回は、日本の小売業の中で最大手の地位に君臨する「イオングループ」についてまとめてみたいと思います。

参考

イオンの起源は340年前、1758年に岡田惣左衛門氏が三重で創業した日用品店「岡田屋」です。

1969年に「ジャスコ」となったのち、1989年に「イオングループ」にグループ名称を変更。


インターネット通販の普及や業態の変化により、日本国内でも明暗が大きく分かれている小売業界ですが、イオングループは業績拡大を続けています。

2018/2期の営業収益は8兆3900億1200万円(前年比+2.2%)、営業利益2102億7300万円(前年比+13.8%)。

安さを売りにする小売チェーンということで、利益率は決して高くはありませんが、20年間営業黒字を続けています。


今回のエントリでは、イオングループが辿ってきた歴史や、グループが展開する事業内容、直近の決算数値などについて整理していきたいと思います。



イオンの歴史 

岡田屋の創業とジャスコの設立

イオンの起源は340年前、1758年に岡田惣左衛門氏が三重で創業した日用品店「岡田屋」にあります。

岡田屋はその後も続き、1926年に岡田屋呉服店と名前を変え、株式会社になりました。

1969年、七代目の岡田卓也氏の時代に、岡田屋と兵庫のフタギ洋品店、大阪のシロが合併し、ジャスコ株式会社を設立。

「ジャスコ」という社名は「Japan United Stores Company」の頭文字をとったそうです。

1974年に株式上場、1976年に東証・大証・名証でそれぞれ一部に上場します。


創業当初から「大黒柱に車をつけよ」という岡田家の家訓のもとに、主力のスーパーマーケット事業にとどまらない事業の多角化を進めてきました。

1969年、車社会の到来を予期し、郊外にショッピングモールを開発すべく、三菱商事との共同出資で(株)ダイヤモンドシティを設立し、「ダイアモンドシティ(現・イオンモール)」の開発を始めました。

また、1980年よりコンビニエンスストアの「ミニストップ」を展開し、設立5年目で100店舗を達成。

「イオングループ」への名称変更と、業態の拡大

1989年9月、「ジャスコグループ」から「イオングループ」に、2001年8月には「ジャスコ(株)」から「イオン(株)」に名称変更。

公式の情報ではありませんが、名称の由来はラテン語で「永遠」をあらわす「アイオーン(イオン)=ÆON」だそうです(参考)。

1999年からはドラッグストア事業にも参入し、2000年から「ウエルシア薬局」を展開しています。

さらに、1981年には日本クレジットサービス(株)を設立して金融サービスにも参入。クレジットカードの「ジャスコカード」を発行。

2007年には(株)イオン銀行を設立して銀行業にも参入。同年には電子マネー「WAON」の発行も始めました。


スーパーマーケット事業では、1994年にプライベートブランド「トップバリュ」を販売開始。

業態としては「マックスバリュ」を全国で展開。2005年には小型スーパー「まいばすけっと」も展開を始めました。

2000年代には(株)いなげや(埼玉)や(株)ベルク(埼玉)や、業績不振に陥っていた(株)ダイエーとの業務提携に合意。

2013年にはダイエーを子会社化するなど、スーパーマーケット事業も拡大させました。


海外事業としては、1985年に現地企業との合弁でマレーシアに初進出。

その後も1990年に、韓国でミニストップの海外第1号店が開店1996年にジャスコが中国に初出店するなど海外進出が続き、2011年には中国本社とアセアン本社が設立されました。

2014年はベトナム・カンボジア、2015年インドネシア、2016年ミャンマーと、進出が積極的に行われています。


イオンの事業内容

イオングループの事業は多岐に渡ります。報告セグメントとされているのは次の9つ。

①GMS(総合スーパー)事業

大型スーパー「イオン」、ホームセンター「サンデー」(東北地方)を展開。

②SM(スーパー)・DS(ディスカウントストア)事業

「マックスバリュ」を展開するほか、「いなげや」「ベルク」「ダイエー」「マルエツ」等も傘下に。

③小型店事業

コンビニチェーン「ミニストップ」、小型スーパー「まいばすけっと」、弁当・惣菜販売「オリジン弁当」など。

④ドラッグ・ファーマシー事業

調剤併設型ドラッグストア「ウエルシア薬局」を展開。「ツルハドラッグ」等を展開する「ツルハホールディングス」も傘下に。

⑤総合金融事業

「イオンカード」「イオン銀行」「イオン保険」といったサービスを展開。また、電子マネー「WAON」の発行・管理。

⑥ディベロッパー事業

ショッピングモール「イオンモール」の開発・運営。

⑦サービス・専門店事業

施設管理・モール内アミューズメント施設・冠婚葬祭、アパレル販売などのサービス業。

⑧国際事業

中国及びアセアン諸国での「イオンモール」等の展開。

⑨その他事業


各事業の売上高は以下の通りです。

なお、小売店事業の営業収益にコンビニエンスストアの加盟店の売上高4377億円は含まれていません。

総合スーパー(GMS)事業が全体の約37%で最大ですが、業績規模としては横ばいです。

その一方で、スーパー・ディスカウントストア(SM、DS)事業も2兆8902億円と、収益の35%を占めています。2013年と比べるとおよそ2倍に増えています。

これらの変化要因の中で最も大きいのは、2013年8月の(株)ダイエーの子会社化です。ダイエー事業はGMS事業とSM事業の中に分類されています。


セグメント毎の損益も見てみましょう。

収益規模ては最も大きいGMS事業とSM・DS・小型店事業のセグメント利益はそれぞれ105億円と307億円。

イオングループ全体の規模から考えれば、ほとんど利益を生み出せていないと言えます。

利益として最大なのは「総合金融事業」で、698億円の利益をあげています。ディベロッパー事業も515億円と堅調。

逆に言えば、この二つのセグメントがなければ、イオングループは利益をほとんど生み出せていないことになります。


事業ごとの店舗数・店舗あたりの平均収益

各事業の状況について、もう少し詳しくみてみましょう。

まずはイオンの最大事業である「総合スーパー」事業の店舗数です。


全国で620店舗前後を展開しています。

店舗数はここ数年ほとんど横ばいで、新規出店と閉店数が均衡しています。

総合スーパー1店舗あたりの収益は、40億円から50億円の間で推移。店舗数が変わらないため、この値がGMS事業の営業収益を最も左右しています。


一方、小型店舗の状況です。

小型店は「ミニストップ(加盟店含む)」「まいばすけっと」のいずれも店舗数が増加しており、営業収益も伸びています。


財政状態

続いて、イオングループの財政状態はどうなっているのか、バランスシートを確認してみます。

資産の内訳

総資産は8兆7508億円で、現金はそのうち8427億円。

銀行業における貸出金が1兆4701億円と、金融業としての側面も多く見られます。

最も大きいのは有形固定資産で、2兆6597億円。


負債・純資産

バランスシートの反対側を見てみます。

借入金や社債など、有利子負債の合計は2兆2264億円と、非常に大きいですね。

そのほか、銀行業における預金が2兆4987億円もあります。

自己資本比率はここのところ低下傾向にあり、直近では21%に。

銀行業の預金が年々拡大しているのがこの大きな要因です。



キャッシュフロー

営業キャッシュフローには波があるようで、2016/2期は432億円だったのに対し、2018/2期には4639億円にまで増えています。

一方で、投資キャッシュフローは一貫して大きく、しばしば営業キャッシュフローを上回る投資が行われています。


営業キャッシュフローから設備投資の金額を引いたフリーキャッシュフローを計算してみます。

固定資産への純投資額(上グラフの青色部分)は、2000億円から4000億円と、毎年大きな金額を投資していることが分かります。

一方、営業キャッシュフローは年によって増減するため、フリーキャッシュフロー(紫部分)は大きくマイナスになる年も出ています。

過去5年のフリーキャッシュフローの平均値はマイナス156億円であり、事業で現金を稼ぎ出しているとは言えない状況です。

フリーキャッシュフローをプラスにできないということは、事業を運営すればするほど現金が減っていくということです。

このままでは、中長期的にみて借入金を減らしていくことは難しく、いずれ首が回らなくなってしまう可能性すらあります。


イオングループの中期経営計画

このような状況下で、イオングループは何を目指しているのでしょうか。最後に、同社の中期経営計画について見てみます。

大枠として、「既存事業における収益構造の改革」「新たな成長に向けたグループ構造改革」の二つを吸えています。

中でも、足を引っ張っているダイエーの黒字化と、最大事業である『イオン』の小売における収益性の改善が直近のテーマ。

グループ構造の改革では、赤字会社の整理と、物流・ITに関する戦略策定に時間をかけています。


具体的な数値目標があるというよりは、1年かけて方針を練るという悠長な計画と言えます。

その後もスライドを見ていきましたが、明確な数値目標は記載されていませんでした。

その後に出された「イオングループ 2020年に向けて」という資料では、もう少し具体的な数値目標が示されています。

まず、デジタル売上の比率を0.7%から12%に拡大するとのこと。マジかよ。。デジタルの定義がどうなっているのか分かりませんでしたが、かなり大きな目標に見えます。

アジアにおける売上比率も23%まで増やすとしています。これも難しそう。

ITや物流などに5000億円もの投資を行うとしています。この原資はおそらく借入などになることでしょう。

ITとデジタルは同じだと思いますが。。

全体の目標としては、営業収益10兆円、営業利益3400億円が目標。

「組織の圧倒的な若返り」も目標の一つに据えています。


さて、フリーキャッシュフローがマイナスにおちいる中、イオングループの有利子負債は増大を続けています。

抜本的な収益性改善ができなければ、このままいくと結構ヤバいんじゃないかなというのが正直な印象です。

小売業界の大変動が続く中でイオングループがどうなっていくのか、今後もチェックしていきたいと思います。